ただのホラー映画じゃない! 話題作『IT/イット “それ” が見えたら、終わり。』はトラウマを抱えた子供達の青春物語です【本音レビュー】

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【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回の本音レビューは、大ヒット中のホラー映画『IT/イット “それ” が見えたら、終わり。』(2017年11月3日から公開中)です。あの目つきの悪い風貌のピエロと赤い風船のイメージが強烈過ぎて、どんなに怖いのだろうと思わせますが、意外にもこれが感動ホラーなのですよ。

そこで、なぜ『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は泣けるのか……というところに着目し、本音レビューしていきたいと思います。

【物語】

子供の失踪事件が多発している田舎町。ビル(ジェイデン・リーバハー)の弟は、大雨の日に紙の船を持って遊びに出かけたまま、帰って来ません。行方不明の弟を思い、悲しみが癒えないビル。

そんな彼の前に「それ(IT)」は突然現れました。邪悪な目をギラつかせたピエロのペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)は、町の子供たちの前に現れては襲い掛かり、誘拐を繰り返していたのです。

ビルと数人の仲間たちは、危機を脱することができましたが、強烈なトラウマにおびえます。しかしビルは、弟を連れ去ったのはペニーワイズだ。アイツから弟を取り戻したいと、ペニーワイズと対決する決心をかため、仲間たちと「それ(IT)」が潜む下水道へ降りていくのです。

【ホラー映画の中で輝く切ない青春】

大ヒット中の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、予告編のときから超話題。なんと予告編解禁後、24時間で1億9700万回再生されました。この予告編を見て本作を見に行こうと思った人は「お化け屋敷に行く」的な気持ちだったのではないでしょうか。

しかし実際に見てみたらビックリしたと思います。だって怖いけど、ジーンとする青春ホラーなのですから。

なぜこのホラー映画が胸を打つ作品かというと、ペニーワイズに立ち向かっていく少年少女が、みんな心に傷を抱えていたり、家庭に問題があったりする弱者であり、そんな彼らが、ペニーワイズに抱く恐怖心に打ち勝とうと立ち上がるからです。

【みんなの勇気が恐怖心を叩きのめす!】

ビルは自分が作ってあげた紙の船のせいで弟が行方不明になったという罪の意識があり、両親との関係もギクシャクしています。

仲間のベバリー(ソフィア・リリス)は、父親のDVを恐れていますし、小柄なエディ(ジャック・ディラン・グレイザー)は毒母に苦しみ、チョーズン(マイク・ハンロン)は人種差別を受けています。彼らは学校では不良たちに暴力を振るわれ、家にも学校にも居場所がないのです。

ペニーワイズは、そんな彼らの弱みにつけこみます。時には姿を変えて子供たちに近づき、自分の世界に引き込もうとするのです、ビルの弟のように……。

しかし、心に傷を抱えた彼らが集まり、ひとつになったとき、少年少女の気持ちは前へと動き始めます。臆病な自分を払拭したいと、彼らは勇気を振り絞るんですよ。

ひとりではどうしようもない状況でも、みんなで力を合わせれば、特別な力が働くのかもしれません。実はこの “勇気” が、無敵に見えるペニーワイズへの強力な武器になります。彼は “怖がられてナンボ” の化け物だから「お前なんか怖くない!」と思う気持ちが重要なのです。

【ペニーワイズより恐ろしい存在は?】

不気味なピエロ、ペニーワイズが実はイケメン俳優だったというのはポーチでも紹介されていましたが、27歳のスウェーデン人俳優、ビル・スカルスガルドが原型をとどめないメークで怪演しています。

あの目つきのまま、顔と体をカタカタと左右に揺らして子供たちを凄いスピードで襲うシーンなど映画館で何度も「ギャア」と言いそうになりましたよ。

しかし、恐ろしいのはペニーワイズのヴィジュアルだけでなく、この田舎町も怖いです。何しろ頼りになる大人がひとりもいないのですから。そもそも子供を守るべき家族が子供の恐怖やストレスの対象になっているという状況で、子供たちが親の暴力に毎日ビクビクして生きるなんて辛すぎます。

ペニーワイズが好き勝手できるのも、この町には子供を守る大人がいないからです。だから、映画を見ながら彼らに感情移入しちゃうんですよ。ビルたちを応援できるのは、私たち観客だけなのですから。

【 “それ” が27年後の世界にまた現れる?】

世界中で大ヒットした『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、続編の製作が決定しています。もともと1000ページ以上ある小説ですから、1本の映画にするために、本作は少年時代に絞って映画化したのです。

劇中、ペニーワイズは27年に1度の周期で現れることが明らかになるため、おそらく後編は27年後が舞台? またヒロイン的なポジションだったべバリー役を、ジェシカ・チャステインが熱望しているという噂もあり、期待が高まります。続編は2019年9月全米公開予定で、アンディ・ムスキエティ監督続投だそうです。

一人で見るのは怖すぎるという人は、友達と一緒に見るのをオススメ。ペニーワイズに「ヒイイ〜」とのけぞりつつ、ビルたちを応援してあげてくださいね。


執筆=斎藤 香 (C) Pouch

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
(2017年11月3日より、新宿バルト9ほか、全国ロードショー)
監督:アンディ・ムスキエティ
出演:ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、ジェレミー・レイ・テイラー、ソフィア・リリス、フィン・ウォルフハード、ワイアット・オレフ、チョーズン・ジェイコブズ、ジャック・ディラン・グレイザー、ニコラス・ハミルトン、ジャクソン・ロバート・スコットほか
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