燃え殻小説の魅力とは?

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燃え殻による『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)がベストセラーとなっています。この小説の魅力とは何なのでしょうか。

ネットを通じて出会う

この小説は、テレビ局で美術制作の仕事についている僕が、インターネットのSNSサイトで昔の恋人と再会するところからはじまります。次に、横浜のエクレア工場でアルバイトをしている若き日の本人の風景が登場します。これらの場面が、短い章立てで次々と記されてゆきます。いわば、現在と過去を行き来するような構成がとられているのですが、それが読みやすさを作り出しているとともに、読者を飽きさせない構成になっているといえるでしょう。

振り返ることはいつもある?

誰もが過去を振り返ることはあるでしょう。これは良いことなのか悪いことなのか、どちらともつきません。ただ確かなのは、過去は起こってしまったことであり、それを変えることは絶対にできないということです。さらに本書では、幼少期の記憶にまでさかのぼって記されています。小説は、ウソをつくことができる表現ですが、本書においてはそうしたウソくささを感じさせないところも人気の理由なのかもしれません。

サブカルチャーのフレーズ

もうひとつ本書で特記すべきなのはサブカルチャーのフレーズ、ファッションブランドの名前であったり、その時の流行りの音楽や映画の固有名詞が散りばめられているというところです。自分だけの個性的な表現のように見えても、実は誰もが食いついているだけの凡庸なものでしかない、そうしたあっけない結論とともに、あの時代を懐古的に共有できること、そこに切なさが合わさっているところが『ボクたちはみんな大人になれなかった』の魅力なのでしょう。