千葉に完敗してプレーオフへ。今季ワーストゲームから名古屋は何を得たのか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 完膚なきまでに叩きのめされた千葉戦の結果によってライバルを取り逃がした名古屋は、クラブ史上初の昇格プレーオフを戦うことが決まった。ノーガードの打ち合いも予想されたホーム最終戦は、自分たちだけがノーガードで立ち向かうような厳しい試合内容を伴っての敗戦だったが、この負けにしっかりとフォーカスしなければ、せっかくホームで戦うことができるプレーオフにも不安が残ってしまう。千葉戦はともすれば、彼らの弱点を広く知らしめる試合でもあったからだ。
 
 ボールを保持し、パスをつなぎ倒すようなスタイルを標榜し、空中戦やサイド攻撃に頼らない文字通りの“崩し”の美学を貫いてきた名古屋だが、その戦い方ゆえに危うさも同居する試合もこれまでには多数あった。
 
 例えば、金沢のように中央突破への防御とカウンターに勝機を見出したチームとの対戦であったりもしたが、今回の千葉戦で見えた様相は、まさしく“力負け”というものだ。相手を踏み潰すようなフィジカルコンタクトの強さとカウンターの速さ、パスを前へとつながせない強烈なプレッシングに、名古屋は手も足も出なかった。
 
 ピッチコンディションの難しさや復帰したばかりのG・シャビエルの不調などいくつかのマイナス要因もあったが、守備でも攻めてくる千葉のパワーに圧倒された点が何よりも大きい。そうした部分で失点にも絡んだ和泉竜司は「ファウル気味でしたけど、すごく球際には来ていた」と語り、大きな敗因のひとつだと唇を噛む。自分たちの株を奪われるようなハーフコートでのゲーム展開は90分を通してほぼ変わらず、良い部分を探すのが難しいほどに押し込まれた。
 
 翌々週から始まる昇格プレーオフに向けても、この敗戦が名古屋に警鐘を鳴らす部分は多い。今季、名古屋が苦手としてきたのは、千葉のようなアグレッシブかつフィジカルな相手だった。41試合で喫した13敗の対戦相手は湘南、千葉、山口、京都、金沢、大分、東京V、福岡、徳島、横浜FCの9チームで、うち千葉と金沢、大分には2敗を喫している。
 
 金沢は前述の通りのスタイルだが、大分には千葉ほどではないが非常に積極的な守備とカウンターでしてやられた。また和泉は今季やりにくかった相手として徳島の名前を挙げており、やはりフィジカルと積極性に優れたチームには自分たちらしさを出しにくい傾向があるようだ。
 徳島や千葉とはプレーオフで対戦する可能性が大いにあり、これは何とも悩ましいところ。ここから約2週間でしっかりとメンタルと戦術の準備をしていく必要があることは言わずもがなである。
 
 対策ははっきりとしてもいる。ここから選手のフィジカル能力が劇的に上がるわけはなく、違う戦い方を模索するのはそれこそ愚策の極みだ。“器”を変える必要はなく、その中身を質の高いものにすれば良い。激しいプレッシングに負けじと縦パスを送り、勇気と自信を持ってパスをつなぎ、ボールを保持する。本来は相手のプレスを餌食にできるスタイルなのだから、技術への確信を武器につなぎ倒してやればいい。
 
 注意すべきはパスの方向とスピードで、とりわけバックパスの選択には決まり事が必要だろう。「ひとつ、ふたつ続くと相手のプレスの矢印が大きくなって次のサポートまでの距離もできてしまう。バックパスの次には前へのパスという意識が少し足りなかった」と、佐藤寿人は千葉戦でのチーム全体に蔓延した判断ミスを悔やんだ。
 
 加えて言うなら、縦パスのなかに、相手最終ラインの裏を突くものを混ぜるべきだろう。プレスがはまれば縦パスもインターセプトはされやすい。そのDFの動きの逆を取り、牽制にもなる裏へのパスを効果的に使うことで、フィジカルなチームを空回りさせることはできるはずだ。
 
 千葉戦ではややブレーキになったG・シャビエルも、90分間を戦いコンディションと試合勘に刺激を入れられたと思えば、プレーオフへの布石は打てている。一発勝負では彼のセットプレーは勝利への大きな担保となるもので、あと2週間で注意深くコンディション管理をしていけば、この敗戦の価値も少しは上がる。
 
 特別な舞台だからと一張羅を着る必要はなく、普段着でリラックスして戦うほうが名古屋は強い。実は千葉戦にプレッシャーを感じていた若手もいたようだが、それもこの悔しい惨敗で心が鍛えられただろう。自分たちの哲学を貫いて成長してきたチームに襲い掛かった今季ワーストゲームは、もしかするとプレーオフを勝ち抜くための最後の教訓が詰まっていたのかもしれない。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)