ダニエル・ジェイコブス、ゲンナジー・ゴロフキン、村田涼太、カネロ・アルバレス【写真:Getty Images】

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“ミラクルマン”が戦線復帰 元WBA世界王者の帰還でミドル級の争いはさらに激化

「“ミラクルマン”がミドル級戦線に復帰」---。11月12日(現地時間11日)、ニューヨークのロングアイランドにあるナッソー・ベテランズ・メモリアル・コロシアムにて、元WBA世界ミドル級王者ダニエル・ジェイコブス(米国)の復帰戦が行われた。

 現在は村田諒太(帝拳)が持つタイトルを今春まで保持していたジェイコブス。かつて脊髄の骨肉腫を克服したことから、“ミラクルマン”(奇跡の男)の異名を取る30歳は、18戦全勝(9KO)と無敗街道を歩んできたルイス・アリアス(米国)に3-0で大差の判定勝ちを飾った。元王者として、依然その実力がハイレベルにあることを証明した格好だ。

 今年3月、WBA、WBC、IBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との統一戦に僅差の判定負けを喫したが、通称“GGG”の連続KO防衛記録を17でストップする大善戦で逆に存在感を高めた。もともとアメリカでは「タイトルを持っているかどうか」よりも、「対戦相手の質」、「試合内容」で評価される。30歳の実力派のカムバックで、層の厚いミドル級戦線はさらに面白くなるはずだ。

 2017年、ミドル級戦線は大きく動いた。9月にWBA、WBC、IBFタイトルマッチとして、ゴロフキンと元WBC王者サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)のスーパーファイトが実現したのをはじめ、10月22日には村田がWBA正規王座のタイトルを奪取し、日本でも一つのハイライトが生まれた。しかし、これでストーリーが完結したわけではない。

英プロモーターの見解は…「カネロ、ゴロフキン、ジェイコブスが“ビッグ3”だ」

 9月の対決でドローに終わったゴロフキンとカネロは再戦に向けて動いているという。ここでジェイコブスもリングに戻り、12月16日にはカナダでWBO世界王者ビリー・ジョー・サンダース(英国)対元IBF王者デビッド・レミュー(カナダ)という楽しみなタイトルマッチが行われる。

 その他にも、元IBF世界スーパーウェルター級王者ジャモール・チャーロ(米国)、元WBA、WBO世界スーパーウェルター級王者デメトリアス・アンドレード(米国)、元トップアマでプロでも全勝でIBF指名挑戦者になったセルゲイ・デレビャンチェンコ(ロシア)などの強豪がズラリ。大げさではなく、今のミドル級は全階級を通じて最も層の厚いクラスの一つだ。そして2018年、これらの強豪たちの“潰し合い”が、一斉に始まりそうな気配が漂っている。村田が足を踏み入れたのはそういった世界なのだ。

「ダニエル・ジェイコブスは世界のほとんどのミドル級選手よりも一段上にいる。カネロ、ゴロフキン、ジェイコブスが“ビッグ3”だ」

 11日の興行時、新たにジェイコブスと契約したばかりの英国人プロモーター、エディ・ハーン氏はミドル級戦線をこう表現した。この3人のうち、ゴロフキンとカネロが2018年の5月か9月に再戦するとすれば、ジェイコブスは他の対戦相手を探さねばならない。アリアス戦後の記者会見では、サンダース対レミューの勝者、チャーロ、アンドレード、元WBA世界ミドル級暫定王者マーティン・マレー(英国)など多くの候補が挙がったが、その中に村田の名前は含まれていなかった。

エンダム戦勝利で大舞台へのチケット入手、防衛戦を重ねて“大物”との対戦を狙う

 今のアメリカでタイトルは名刺代わり。WBAタイトルを獲ったとはいえ、現時点での村田の本場での知名度、商品価値は決して高いとは言えない。“名刺不要”なスターたちとの対戦を考える前に、まずはある程度ネームバリューのある選手と1、2度の防衛戦を行わねばならないだろう。もっとも、そんな状況を悲観的に捉える必要はない。

 むしろこれだけのメンバーが揃っているならば、“ダンスパートナー”は常に必要になる。2018年中に世界レベルの実績を重ねれば、村田もいずれかの猛者の対戦相手として浮上する可能性は十分だ。そんな大舞台へのチケットを手に入れたという意味で、10月のアッサン・エンダム(フランス)戦での勝利には計り知れない価値があった。

 2018年、正真正銘の「ミドル級スーパー・スターウォーズ」が始まろうとしている。カザフスタン、メキシコ、アメリカ、イギリス、カナダなどに加え、日本のスターも含まれる。世界中のボクシングファンが熱狂する季節はもう間近に迫っている。