前半のブラジルは高い集中力で日本のプレスをかわし3点をもぎ取った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本代表は、ブラジルに1-3で完敗。僕も翌日、同スコアで敗戦。鹿児島ユナイテッドの敗戦は、力の差を考えればすべて僕の責任である。が、ブラジル戦の敗戦となると……。それは誰の責任でもない。力の差は当然、歴然としているのである。
 
 ブラジルを舐めてはいけない。
 日本がどんな戦術を用意しようがどんな手を使おうが、「ネイマール」という10番が存在し、チームにまとまりとモチベーションがあれば、日本はボールを奪うことも簡単ではない。ラインをどこに設定したとしても、一人ひとりが勇気を出して奪いに行ったとしても、メンバーに本田、香川、岡崎がいたとしても、本田がツイッターでコメントしたように3-1という結果は変わっていないであろう。
 
 僕は80年代前半にブラジルへ留学して2年後に帰国。ブラジルのサッカーの恐ろしさを肌で感じた人間のひとりだ。
 
 そう簡単には埋まらないこの差。解説者は「なんで行かない」と連呼するのではなく「なぜ行けない」のか、を解説するべきだ。
 
 前半の立ち上がり、ブラジルの集中力は見事だった。フロー状態(物事に没頭している状態)からゾーン(極限の集中状態)に入ったブラジルの選手たちからすれば、日本の動きは止まって見えていたであろう。
 
 ただブラジルも日本のボール保持時での対応には甘さを出していた。だから、日本が修正すべきブラジル戦での問題点を挙げるなら、自分たちがボールを奪った時にある。
 
 ブラジルボール時はやはり全員で引いてコンパクトにした上で、スペースを与えないことを前提にアプローチをかけ勝負するべきだ。
 
 後半、アグレッシブに行って良くなったのは、あくまでも3-0という試合が決まったという状況からであり、残念ながら選手交代によってチームとしてのモチベーションも抑え気味の状態になっていた。
 でも僕から言わせれば、そういうブラジルであっても追加点を与えずにコーナーキックから得点を取り、フリーキックからわずかにオフサイドではあったが、ネットを揺らしたという事実は評価に値する。
 
 ブラジル代表もロシア本番へのメンバー選考を考えれば、選手個人にモチベーションはあるはず。そんな相手に崩れないで後半を戦い抜いたのは「成長」である。試合が壊れなかったのだから……。
 
 井手口、山口、長谷部という中盤の選手の闘う姿勢や吉田、槙野の踏ん張りは、チームを作っていくなかでのポジティブな部分であり、そういった良さも一つ見ることができた。
 
 もちろんミスもあったし、局面ごとの対人の差は明確にあったが、やはり「ブラジル人」は本当に上手い。チッチ監督就任後の南米予選の成績を見れば分かる。勝てるとしたら、この練習試合なのだろうけれど、実際はそんなに甘くはなかった。
 
 逆にそんなブラジル代表は、“この状態ではワールドカップは厳しい”と批評される内容なのかもしれない。日本代表に得点を許し、1点差に追いつかれそうになった。選手が代わったとはいえ、相手に隙を見せては手厳しいメディアの餌食にされてしまう。
 
 ペナルティエリア内の侵入も許し、サイドを攻略された。浅野がチャンスの場面でもう少し冷静で周りが見えていたら、乾が得点していたであろう。そうなればブラジル国民もざわついてくる。それがブラジルのサッカー文化なのだ。
 
 前半の久保が胸トラップで態勢を崩し、ボールを失ってしまったシーンも粘り強さと執着心、コーディネーション能力とちょっとした感覚があれば、ビックチャンスとなっていたであろう。
 
 さらにブラジルの攻撃を受けながら、よく攻め込んだと思うシーンも何度かあった。そうしたシーンは、この試合をネガティブに捉え過ぎてもいけないと思わせるものだった。「甘い」と言われるかもしれないが、僕はそう思う。