物流システム世界首位のダイフクや同4位の村田機械、オークラ輸送機など、日本には大手企業が多い。業界・地域を問わず、工場の工程間搬送や物流センターの自動化・効率化では、自動倉庫などの保管設備、ソーターやピッキングシステムなどの仕分け機、コンベヤー、AGVなどがすでに活躍している。

 物流の付加価値向上が企業競争力を左右する時代となり、これら企業への注目度がかつてないほど高まっている。物流システム世界5位の蘭ファンダランデを豊田自動織機が5月に買収したことなども、その表れと言えそうだ。昨今の人手不足や、ネット通販拡大による宅配物流量増加などを背景に、商品のピースピッキング作業などへのロボット本格導入も進みつつある。

 ロボット技術を融合した物流システムなどの提案では、物流システム大手とロボットベンチャーらが協業する動きも目立つ。物流システム大手企業はシステムインテグレーターとして、ロボットやAI(人工知能)などの次世代技術を重視。大規模や中規模クラスの物流センターでは自動倉庫、物流管理システム、ロボットなどの組み合わせで生産性を向上し、省人化、出荷精度を高める取り組みが加速している。

 もちろんロボットは万能選手では無い。物流現場では大量に流れる物品がある一方で、1週間に数個しか流れないようなものもある。一定時間に定量を流す工場と異なり、ネット通販などの物流センターは直前のオーダーに迅速対応が必要。形状、材質、個数などで多種多様な製品バリエーションがあるため、ロボットの得意・不得意を踏まえた最適な物流システムの構築が今後ますます求められる。

ラストワンマイルにもロボット
 最近よく耳にする「ラストワンマイル」。物流業界では、エリアごとの配送センターから配達先までの最後の行程のことを指す。このラストワンマイルもトラック運転手の不足で既存の仕組みの維持が危ぶまれる。当然、ロボット技術による解決への期待は大きい。

 欧米を中心に実用段階へ進みつつあるのが車輪を備えた出前ロボットだ。エストニアのスターシップ・テクノロジーズの「スターシップロボット」は高さ60センチメートル。6輪で人間の歩く速度で移動する。

 無人で配送でき、受け取る人は家にやってきたロボットのフタを開けて受け取れば良い。車道を走るのではなく、歩道をゆっくり走行する点が技術や制度、安全性のハードルを下げた。

 一度行った場所は記憶でき、オペレーターは最初だけ操作してやれば、次回からリピーターの配達先に向かうときは監視するだけになる。一人が複数台を管理できるようになり生産性も高まる。米ドミノ・ピザが採用している。アメリカのマーブルも同様のロボットを開発、フードデリバリー企業と提携してサービスを始めた。

 日本では、自動運転技術を持つZMP(同文京区)が出前ロボット「キャリロデリバリー」のプロトタイプを開発した。寿司(すし)の宅配事業を展開するライドオン・エクスプレス(同港区)と実証実験を行った。同ロボットは最大積載量が100キログラムと大型なことが特徴だ。日本で歩道の自動走行を可能にする環境整備を呼びかけていく。

ドローンが配達
 飛行ロボット(ドローン)によるラストワンマイルも実証実験が進む。ドローン研究の第一人者である野波健蔵千葉大学特別教授(自律制御システム研究所社長)によると「離島や山間部などはドローンで配送した方がトラックより効率的」と利点を挙げる。ただ、自律飛行や目視外飛行などの実用化には安全性や法制度の整備が不可欠で、かつドローンは墜落の危険性があるため他の新技術より厳しく見られる。