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XE-Sのオーナーがキアと過ごしたなら

どんなスペックを並べ立てようとも、率直に言えばジャガーXE-Sの感触はキアに似ている。つまり、レスポンスの鋭い380psスーパーチャージャー付きV6エンジンにも関わらず、こういった道ではそのグリップ能力がアドバンテージになる。

そのパワーは265サイズのピレリ・Pゼロに伝達されるが、サスペンションは制御不能になる前にボディの動きをコントロールする。

テスト車両はサーキット向きのホイールにまるでゴムバンドのような薄いタイヤを装着していたが、英国のB級路での乗り心地はキアに似て安定し、そのたくましい見た目から想像されるような感触を感じさせることは無かった。

直線ではわからなかったが、ジャガーの総アルミニウム製プラットフォームはコーナーに侵入する際には美しく姿勢を整え、そのフロントは他のライバル達よりもはるかに多くの情報をもたらしてくれる。

若干弾性を感じさせる重めのステアリングからのフィードバックは十分とは言えないが、路面をがっちりと掴んでより多くの満足が得られる。このクルマはアクセルをさらに踏み込むように求め、極端なほころびを感じさせることなどないだろう。

最初のテストとしてはスティンガーGT-Sにとって厳しいが、このクルマはわずかだがXE-Sよりも乗り心地で劣り、敏捷性も及ばない。

つまりこういう事だ。この2台には似通った部分は多いが、もしXE-Sのオーナーが週末をスティンガーと共に過ごすように強いられれば、月曜の朝には後悔することになる。

両モデルともGTとしての役割を果たすとともに見かけよりも俊足だ。ジャガーの3.0ℓエンジンはより強力で、より高回転を許容するが、ニュルブルクリンクで鍛えられたシンプルな韓国製モデルの方が、より楽しみを実感させてくれる時もある。

BMWについても同様だ。

440iの優先順位、他2台とは異なる

当初4ドアのグラン・クーペモデルをこのテストに参加させるつもりだったが、60kg軽量なクーペモデルしか準備できなかった。

驚くべきことに、この難しい道でより固めた脚を持つMスポーツ仕様の440iよりも速かったのはスティンガーだったが、素晴らしい柔軟性を示す一方で、ステアリング操作には一定の力を必要とした。さらにその太めの握りをもつステアリングのグリップが手の中でよじれる傾向もあった。

M4に入るまえにBMWに乗り換えてみると、このクルマはスポーツ・サルーンとしてキアとは対極の存在であることがわかった。路面がありのままにより近く感じられる。その対価はクルマとの繋がりだ。

2017年、BMWはサスペンション・ジオメトリー、ダンパー減衰率、アンチ・ロール・バーとステアリングの見直しを行ったが、すべてはより鋭いダイナミクスとフィードバック向上のためだった。

440iの優先順位は他の2台とは完全に異なる。

特にスティンガーとは対照的に、常にフラットな姿勢を求めるものだ。ステアリングが伝える路面感覚は控えめだが、コーナーでは素晴らしい重みが加わり、フロントがしっかり路面をつかむと、ジャガーでしか太刀打ちできない自信がわき上がる。

この2台は新たな挑戦者よりも高いレベルに到達している。BMWの327psツインターボ・ストレート6も素晴らしいエンジンであり、しかも速い。なめらかな出力特性は小気味良い変速の8速ATとほとんど感じることのないターボ・ラグによってより強調される。

このライトブルーのクルマの魅力に惹きつけられれば、キアを選択するのが難しいことに気付くだろう。同様に、潜在的なスティンガーの顧客は、乗り心地に劣り、柔軟性に欠けるライバルに大金など払わないだろう。

となれば、勝者はおのずと見えてくる。

時代はもう少しで変わるかもしれない

つまり、XE-Sが両者の希望を満たすベストな選択として浮上してくる。

結局のところ、キアの切り札はその控えめな価格にある。これはキアがまだ現段階ではGT-Sは顧客にとって真剣に検討される対象ではないと暗に認めていることの証しであり、事実この3台の中で、最も欠点が少なかったのはこのクルマだった。

BMWはその長きにわたる洗練に自ら傷をつけ、ジャガーの掲げるプライス・タグは購入を躊躇させる理由となる。例えインテリアの品質がその価値を下げているとしても、価格、速さ、快適さとパフォーマンスはスティンガーのパッケージに入っている。

われわれが証明したように、GT-Sは動力性能でもライバル達のあとを追っているが、そのせいで重量は極端に増えてしまった。

しかしものごとは一朝一夕には進まないものだ。

もしキアが重量を削減する方法を見つけ、そのV6エンジンにバランスと、積極的なシャシーに見合ったサウンドを与え、ところどころ動きが重いギアボックスをより洗練させることができれば、間違いなく、このクルマはより多くの人を惹きつけることになるだろう。

この新しいモデルでキアはドライバーに本物を提案しただけでなく、将来このクラスのリーダーに挑戦できる可能性をも見せた。そこを評価しておきたい。

番外編 グランド・ツアラーの名にふさわしく

GTの名はこれまで度々汚されてきた。それはなにもキアだけではない。キア・プロシードGTはフェラーリ575マラネロのように大陸横断旅行向きとされたが実際には新聞配達用だった。しかし、スティンガーは違う。このクルマは折り紙付きだ。

バルセロナから自宅へ向けてこのクルマを走らせていると、自信をもってそう言える。英国のB級路ではBMWに対する弱点となったキアの車重、車幅とよりリラックスできるサスペンション・セッティングは、このクルマをスピードに対する安心感を伴った快適な長距離クルーザーに変える。

キャビンのつくりも、しっかりとしたコシのあるシートに快適に低く座ることができるものだ。そして前方視界を諦める必要もない。スポーツ+モードでも十分心地よく、680kmを1日で走破したあとでも、中世のオーベルジュが軒を連ねるエリアの枯れ葉が積もる道でスティンガーを自由に走らせることができる。

もちろん、スティンガーのGTとしての能力を裏打ちするのはフロント・アクスルの直ぐ後ろに置かれる3342cc V6エンジンである。低回転から最大トルクを発生するため、変速の速さを誇る必要もなく、8段ATの高めのギアで安楽に進む事ができる。

エンジンの音も抑えられている。時には残念に感じることもあるが、外側車線を走行している場合には周囲を気遣う必要がない。

小さな不満もある。アダプティブ・クルーズ・コントロールの感度が敏感過ぎて、大型車両を通過しようとしたときに、突然速度が50km/hにまで落ちるような事がある。

そして速度を上げたときのツイン・ターボ・エンジンの燃費も褒められたものではない。フランスのオートルートでは何とか9km/ℓ台に達する程度であり、60ℓのタンク容量を考えれば、その航続距離は550kmほどに留まる。

その他については、スティンガーはグランド・ツアラーとしておおむね満足できる仕上がりであり、このカテゴリーの多くのライバルたちを凌ぐ。