基本技術を重視する興梠は、強豪国相手に勝利するには「勇気を持って、前から行かないと」と話す。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大

 ブラジル戦翌日のトレーニングでは、スタメン組はランニング中心の軽めのメニューで調整し、その他の選手たちは6対6のミニゲームなどで汗を流した。
 
「ものすごく、疲れました」
 
 ブラジル戦で出場のなかった興梠慎三は、芝のついたスパイクを手に持ちながら取材に応じる。疲れたとはいえ、「1対1で負けない、攻撃では相手を剥がす、そういうのを意識してやってほしいと言われていて、すごく良いトレーニングができました」と充実の表情を浮かべる。
 
 完敗を喫したブラジル戦をピッチの外から眺めながら、「いろいろと勉強になりました」という。
 
「相手の個の能力は凄いものがあった。日本はチームで戦わなければいけない。ひとりの選手に対して、ふたりで挟み込むようなプレーがもっとできれば、もっと良い試合ができたはず。まだまだ差はあるのかなという気がしますね」
 
 具体的に興梠が感じた「差」とは?
 
「これを言ってはお終いかもしれないですけど、やっぱり能力ですよね。“止める・蹴る”。些細なことかもしれないですが、そこが違っていた」
 
 だが、その「差」を埋めていかなければ、ワールドカップで日本は勝つことができない。
 
「そう簡単にはできない。だからこそ、こういうトレーニングで激しさをもってやることが大切。削る、という意味ではありません。ファウルしないで激しく行くようなプレーを増やしていかないと」
 
 球際の勝負、デュエルでこれまで以上にアグレッシブさを表現し、そのなかで基本技術を正確にこなしていく。そうした地道な作業が、世界との差を埋めると興梠は考えているようだ。
 
 強豪国から勝利をもぎ取るためには、さらに積極的な姿勢を示す必要がある。
 
「高い位置でボールを取らないと、ブラジルのようなチームに対しては決定機が作れないと思う。そこで剥がされるとピンチになりますが、勇気を持って、前から行かないと」
 
 ジレンマはある。「やられないためには、後ろに引くべきだとは思いますが」。それでも、「勝利を目指すなら、前から行かないといけない」。もちろん、「時間帯によって、いかに(前から行くか、後ろに引くかを)使い分けるかが大事」になってくる。
 
 世界のトップレベルとの差を改めて痛感しているが、興梠の言うことは一貫している。ブラジル戦の前にも、J屈指のストライカーは「前で取れるところは行かないと、本当に何もできずに終わってしまう。前から取れる時は、みんなで連動していけたらいい」と語っていた。
 
 11月14日のベルギー戦に向けては、「やりがいのある相手。ブラジルとは違った強さがあるはず。楽しみにしています」と意気込みを口にした。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

【日本代表PHOTO】前半だけで3失点...後半に槙野が1点を返すもブラジルに完敗