毎年1000万人が発症し、引き金になったものを含めると1万人が死亡していると言われるインフルエンザ。流行は12月頃に始まり、1〜2月頃ピークを迎える。
 厚労省の発表によると、9月上旬には早くも東京都や大阪府でインフルによる学級閉鎖や休校が報告され、すでに広がりを見せ始めている。例年は12月中旬に流行の高い波が押し寄せるが、今年はそれより早まりそうだという。

 では今年、どんな流行が予想されるのか。感染症疫学センター国立感染研究所に聞いてみた。
 「WHO(世界保健機関)によれば、今年8月〜9月は、オーストラリアや南アフリカでA型のH3N2(A香港型)が流行し、南米ではB型が流行した模様です。日本では昨シーズン、H3N2が流行しましたが、今年はまだ、どれが流行るかまだ分かりません」
 同研究所によると、H3N2が流行ると高齢者が重症化する傾向があるという。

 また、同じA型であるH1N1が流行する際には、相対的に小学校低学年程度の小児が重症化した例もある。
 東京労災病院外来診療(心臓系)担当医の話。
 「いずれにせよ、インフルを軽く見てはいけません。体力や免疫力がある健康な人が感染した場合、安静にしていれば時間とともに回復していきます。しかし、心臓疾患などを抱えている人にとっては、時に命に関わるような危険な病気に移行するのです」

 心臓に疾患がある場合、インフルに感染すると肺炎などを併発し、重症化するリスクが高いとされる。また、心臓発作の誘発率を倍増させるというデータもあるという。
 インフルのようなウイルス性疾患は、血圧や心泊数を上げるため、心臓に大きな負担がかかる。加えて、感染によって起こる炎症が心臓疾患の発症に関わっていると考えられ、ウイルスが心臓の筋肉に感染して炎症を起こす心筋症を起こすケースもある。
 「ここで言う心筋症は、『拡張型』『肥大型』『拘束型』に分けられます。拡張型は、心臓全体が膨れ上がって壁が薄くなり、血液を送り出す力が弱くなる。肥大型は心臓の壁が厚くなって内部が狭くなり、送り出す血液量が少なくなってしまいます。拘束型は、心筋が硬くなって収縮がうまくいかず、血液を送り出しにくくなるのです」(同)

 これらの状態に陥った場合、いずれも発熱、咳、頭痛、倦怠感、喉の痛みといった風邪症状に加え、動悸、息切れ、全身のむくみなどの症状が出るという。
 「それまで心臓のトラブルがない人でも、急に心不全や心房細動を起こし、最悪の場合は死亡に至るケースもあります。ただの風邪だと軽く考えていると、実は心筋症で、そのまま放置していたために心不全を起こし、心筋の細胞の破壊が進んで亡くなったという患者もいるのです」(内科医)

 そんな油断できないインフルを予防するには、ワクチン接種が最も効果的と言われている。
 「予防接種をした後、その効果が表れるのは2週間前後。そのため、年内に接種しておくことが望ましい。そもそもワクチンの効果は、打った人の罹患リスクを下げるだけではありません。例としては、83%のワクチン接種率を達成した集団では、接種していない人も罹りにくくなるというデータもあるのです」

 しかし、そのワクチンが、今年は接種を希望しても効果的な時期に打てない可能性が指摘されている。
 都内総合内科医院の青木信彦院長は、こう説明する。
 「厚労省の試算では、今年のワクチンの製造量は2528万本。これは昨シーズンよりも256万本少なく、医療機関での昨年の使用量より114万本も少ないのです。理由は、ワクチンの製造に使用する株の選定の遅れによるものです」

 ワクチンのもととなるウイルス(ワクチン株)は、例年5月頃に決定する。WHO発表の推奨株に加え、国内外の流行分析を参考に国立感染症研究所などが決める。ところが今年は、その選定が遅れ、しかもワクチンに含まれる4つの株のうち新たに入れ替えた株の1つが増産しづらいことが判明。7月半ばに急きょ、昨年と同じ株に改めたという。