後半は立て直して攻撃に出たが、ブラジルの守備陣に抑え込まれ、セットプレーの1点に止まった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[親善試合]日本1-3ブラジル/11月10日/リール(フランス)
 
 改めて言うまでもないが、強豪国との試合は先制点が重要になる。勝つためには、絶対に先に失点しないことが鉄則だ。
 
 ブラジル戦は、ビデオ判定によるPKでの失点というややアンラッキーな面もあったが、それがなかったともしても17分にマルセロに豪快なミドルを決められるなど、ギアを上げたブラジルを止めることはできなかっただろう。スコアは1-3だったが、ブラジルが3得点後、特に後半は流しており、あのまま攻撃の手を緩めなかったら、もっと失点を重ねていたかもしれない。
 
 なぜ、先に失点してはいけないのか。
 
 失点してしまうと、自分たちのペースを失い、流れをつかめなくなり、チームバランスを崩してしまう。特に強豪国相手の場合、粘って守り、1点奪って勝つという日本にとって唯一無二のゲームプランが早々に吹っ飛ぶことになる。
 
 チームバランスを崩し、相手の流れになってしまうと、そこから盛り返すのは簡単ではない。特に強豪国が相手だと個々の力の差もあり、相当難しくなる。ゲームチェンジャーとなれるような選手がいれば投入して流れを変えることもできるが、日本にはそれだけ圧倒的に個に優れた選手はいない。
 
 また、失点すると心理面に大きく影響する。
 
 先制点を取れば気持ちが盛り上がり、気持ちよく、良い集中力でプレーできるし、守備面でも積極性を増す。もうひとつ身体を寄せたり、もう1歩前に詰めることができるのだ。
 
 しかし、失点するともう1点もやれないと、より失点したくない思考になりがちだ。気持ちに余裕がなくなり、思い切りプレーができなくなる。たとえば守備では自分のことで精一杯になって他人任せになり、連動した守備ができにくくなる。
 
 プランが崩れれば修正をしなければならず、選手起用で後手に回らざる終えない。
 
 そもそも点を取り返して、逆転するには相当のエネルギーを要する。そのためにリスクを負って攻めに出る必要があり、それはイコールさらなる失点の可能性を高めることになる。ブラジル・ワールドカップのコロンビア戦は、まさにそんな試合だった。
 過去、ワールドカップで日本が先制点を奪われて勝てた試合は1度(17試合7試合で先制されている)もない。日韓ワールドカップのベルギー戦で、鈴木隆行のゴールで追いついて最終的に引き分け試合が1試合あるだけだ。つまり、先制されるとワールドカップで日本は、ほぼ勝てないことになる。ロシア・ワールドカップでも先に失点しないことが勝つためにはもちろん、グループリーグ突破のためには必須だと言える。
 
 ちなみに先制して勝った試合は7試合中、4試合ある。
 
 ワールドカップ初勝利となった日韓ワールドカップのロシア戦、南アフリカ・ワールドカップのカメルーン戦などだ。この勝利がキッカケになり、日本のこの2大会でグループリーグを突破している。もっとも先制してもひっくり返された試合が3試合ある。ドイツ・ワールドカップのオーストラリア戦、ブラジル・ワールドカップのコートジボワール戦など、ワールドカップ初戦の試合を失ない、致命的な試合になった。
 
 この日のブラジル戦に限って言えば、ネイマールに失点を許してからバランスを失った。攻撃の選手は点を取りたいと思うだろうし、後ろの選手はこれ以上失点をしたくないと慎重になる。その意識のズレが“中途半端さ”を生み出していた。
 
 後半は気持ちを切り替え、球際に激しくいけていたが、逆に相手がスローダウンしていたことを考えると、この後半だけを切り取って良かったとは言えない。むしろ、日本の戦い方として、このくらいの守備を前半からやらなければ、自分たちの流れにもっていくことはできない。無失点の時間を1分1秒長くしていけば、守備の集中力が増し、自分たちの戦いに自信を持てるようになる。
 
 次の相手、ベルギーもロシア・ワールドカップで対戦するだろう強豪国のひとつ。
 
 まずは失点しないことを優先し、守備の集中力を高め、自分たちの戦い方に相手を引きずり込む。本番でやれればいいやという感覚では、ブラジル大会に続いて痛い目にあうことになる。
 
取材・文:佐藤俊(スポーツライター)