決勝ゴールが決まり、武田義臣のもとに駆け寄る実践学園イレブン。苦難を乗り越えての選手権だ。写真:山賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 これぞ高校サッカーと呼ぶに相応しい、劇的な幕切れだった。
 
 11月11日に行なわれた東京B決勝。国学院久我山と対峙した東京都1部リーグ覇者・実践学園は、スコアレスで迎えた後半31分にアクシデントに見舞われる。チームの心臓を担うボランチの浦寛人(3年)が一発退場を宣告されてしまったのだ。
 
 しかし、今夏の総体出場校は、ここから10人で驚異的な戦いを見せた。「彼のために1.1人分の力を出してくれて、10人で浦の分まで走ってくれた」と深町公一監督が称賛するほどの奮闘ぶりで、10分ハーフの延長戦に勝負を持ち込んだ。

 そして、迎えた延長後半のアディショナルタイム。残された時間はラストワンプレーほどしかなかった。立て続けにCKを得た実践学園は、山内稔之(2年)が渾身の一球を左足で蹴り込む。これが最後のチャンス。何とかゴールをこじ開けようと総攻撃を仕掛けると、人見隼斗(3年)がヘディングシュートを放つ。これは惜しくもバーを直撃するが、こぼれ球に10番を背負う武田義臣(3年)が反応。頭で押し込んで劇的なサヨナラゴールが生まれ、実践学園が5年ぶり2度目の全国行きのチケットを手にした。
 
 試合の行方を左右しかねないアクシデントをはねのけ、選手権出場を勝ち取った実践学園。序盤から試合の主導権を握っていたとはいえ、数的不利な状況に陥れば劣勢になるのは想像に容易い。それでも、勝利を掴めたのは、“浦のため”にという想いがあったからだ。
 
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 試合後、当事者である浦は試合をこう振り返った。
「自分が一発レッドカードとなり、チームに迷惑をかけてしまった。自分は退場してから試合を見られなくて、ロッカールームでずっと祈るような形だった。一応、バックアップメンバー3人が自分についてくれていて、気分は楽になったけど…」
 
 大一番でのレッドカード。当然、心の整理などはつかず、涙を流しながらピッチを後にした男に試合を見る勇気などはなかった。浦は仲間から戦況を教えてもらいながら、祈るような気持ちで吉報を待った。
 そのころ、ピッチで戦う仲間たちは浦のために結束を深めていた。退場処分が下された直後にはダブルボランチを組んでいた北條滉太(3年)が涙ながらに「浦のために頑張ろう」とチームメイトを鼓舞。1人少ない状況でも勝利を掴み取ることを誓った。その結果、運動量は退場前よりも増加。延長に入ると足を攣る選手が続出するほどの状態となり、攻撃の軸・前原龍磨(3年)は2度痙攣するほどの奮闘を見せた。延長後半のアディショナルタイムにPK戦を考慮されてエースはピッチを後にしたが、魂のプレーを各選手が披露。この想いが結実し、チームは勝利を手にした。
 
 浦はこの退場により、選手権の初戦を欠場することが決定。この日のメンバーで戦うためには、本大会で1勝しなければならない。だが、浦は仲間が結果を出すことを信じている。

「ただでさえ80分はきついのに1人少なくなり、延長戦になってしまった。そこに関しては本当に申し訳ないのですが、延長に入って持てる力を出してチームメイトが全国行きを決めてくれた。本当に感謝しかない。できれば、みんなと全国でサッカーがしたい。なので、仲間を信じて、結果を待ちたいと思います」。
 
 浦と一緒にプレーするために――
 結束を深めた実践学園は仲間との絆を胸に全国大会へ臨む。

取材・文 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB編集部)