【トヨタ ハイラックス試乗】悪路も難なく走破!遊びグルマにも最適なプロ仕様の本格派

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「…週末のたびに渋谷に集まる不良中年。夜のセンター街を革ジャンを着て闊歩し、時に改造トラックで周辺を回ることも…」

トヨタのピックアップトラック「ハイラックス」が再び販売されると聞いて、4半世紀以上前の渋谷の様子を思い出し、そんなニュースを妄想してしまうのは、ワタシだけでしょうか!? はい、ワタシだけですね…。

13年ぶりに6世代目となるハイラックスを国内市場へ投入するトヨタの狙いは、チーマーの復活!…ではむろんなく、まずは9000台ほど残っていると考えられる“業務に使われているハイラックス”の代替え需要の掘り起こし。農業や漁業、道路や電気関係のメンテナンス業務に携わる人々の間で、キャビンと荷台をハッキリ分けられるハイラックスは、依然として便利に使われています。例えば、漁船から移された漁獲物を荷室に載せて運んだり、猟師さんの場合では駆除した鹿などを積んだり、メンテ業では大型の機械類を後ろに搭載して現場に向かったり…といった例が挙げられます。

ニッポンのワークホースといえば“軽トラ”こと軽自動車のトラックですが、業務上の要件として、ある程度のボディサイズがあって、頼りになる4輪駆動システムを持つことが必要となると、軽トラではカバーしきれない。ハイラックスを便利に使っているオーナーの方々が、いざ次のクルマを購入しようとしても、なかなか候補車が見当たらないのです。

そんな社会的な要請に応えるカタチで国内に投入された新型ハイラックスは、前後にドアを持つダブルキャブボディ。乗車定員は5名です。

パワーパックは、2.4リッター直4ディーゼルターボ(150馬力/40.8kg-m)に、6速ATを組み合わせます。駆動方式は、スパルタンなパートタイム4WD。通常は、2駆(FR)で走行し、必要に応じて、室内のダイヤルでH4(ハイギヤードな4WD)またはL4(ローギヤ4WD)を選び、駆動力を前輪にも流すことができます。

価格は“鉄チン”ホイールを履くシンプルな「X」が326万7000円。17インチのアルミホイール、LEDヘッドランプ、プリクラッシュセーフティシステムなどを装備する豪華版「Z」が374万2200円。うーん、かつてのハイラックスより、ひと声100万円ほどはお高い感じですが、ある種スペシャルなニッチモデルなので、当初は仕方ないのかもしれません。ちなみに、最新ハイラックスは、トヨタ・モーター・タイランドが生産し、同国から輸入される“ガイシャ”でもあります。

強固な高剛性フレームに載せられるキャビンと荷台のサイズは、全長5335mm、全幅1855mm、全高1800mm。トヨタ「ランドクルーザー」級の大きさです。前後車軸間の長さは3085mmと、3mオーバー! 長いホイールベースを活かし、路面の凹凸をものともせず、荒野を疾走するピックアップトラックの姿が目に浮かびます!?

公道試乗の前に、この手のクルマのイベントでは“お約束”になっている特設コースにトライ! 丸太を使って、左右の高さが極端に異なるシチュエーションがつくられています。ダイヤル式トランスファースイッチを「L4」にした後、ギヤを「D」または「1速」に入れ、トルコンオートマならではのクリープ現象を使い、ジリジリと前進します。

ハイラックスのフロントサスペンションは、ダブルウイッシュボーン/コイルスプリングの独立懸架ですが、リアはリーフスプリングに左右をつないだ車軸を吊るリジッド式。大きなサスペンションストロークが左右の高低差を吸収し、可能な限り接地し続けます。それでも空転が生じると、該当するタイヤに自動でブレーキをかけ、接地しているタイヤに駆動力を渡し、前へ進みます。

ハイラックスの4WDシステムは、センターデフを持たない、いわゆる直結ヨンク。今どき珍しいシンプル&ハードな仕様です。その上、最後の手段(!?)として、後輪左右を結び付けるリアデフロックを装備しているのも(Zグレードに標準装備)頼もしい限り。普通のハイラックスオーナーは、一度も使う機会がないかもしれませんが、そんな潜在能力が、またうれしかったりします。

上記の、タイヤを個別にコントロールすることで差動制限をする=機械式のLSDに代える仕組みは、乱れた挙動を正す“VSC”(ビークル・スタビリティ・コントロール)の応用技術といえ、さらに“DAC”(ダウンヒル・アシスト・コントロール)としても活用されます。これは、自動でブレーキをかけることで、急坂を、ゆっくり安定して下りられるようにする仕組み。付いててうれしい機能ですが、これもまた、一度も使う機会はないかもしれません!?

ハードな見かけと高い走破性。業務用としてはもとより、趣味のクルマとしても強い誘因力を発生するハイラックスですが、オンロードでの乗り心地は少々スパルタン寄り。乗用車ベースのSUVに乗り慣れている、そうしたクルマの快適性を予想すると、ちょっと驚かされます。

セパレートシャーシとリジッドリアサスペンションが特徴付けるドライブフィールは、総じて硬めで、時に上屋が揺れ、路面からの突き上げを感じさせることがある。特に、背もたれのリクライニング機能がない…のはいいとして、走行中のリアシートでの乗り心地は、厳しいものがあります。路面によっては、上下に揺すられ、安眠をむさぼることはできません。良くも悪くも、ハイラックスはプロ向けの、本格派なのです(加えて、ピックアップトラックたる同車は、毎年の車検が義務づけられる“1ナンバー登録車”となります)。

では、新型ハイラックスを趣味の対象と見なすことはできないのか、というと、もちろん、そんなことはありません。何しろ1968年に初代が登場して以来、世界中で約1730万台がデリバリーされたクルマです。ハイラックスを対象としたアクセサリー、チューニングパーツ類も豊富。試乗会場には、トヨタ系のワークスチューナー、TRDが手掛けたサポートカーやスペシャルパッケージのデモカーが展示されていて、思わず興味を引かれました。

つまり、手に入れたハイラックスの乗り心地が「少々ハードに過ぎる」と感じたなら、街乗り重視のサスペンションキットを探し、取り替える“楽しみ”があるわけです。姿カタチ、ドライブフィールを含め、“つるし”のクルマを少しずつ自分色に染めていく…。究極のクルマ趣味のひとつかもしれませんね!

<SPECIFICATIONS>
☆Z
ボディサイズ:L5335×W1855×H1800mm
車重:2080kg
駆動方式:FR/パートタイム4WD
エンジン:2393cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:150馬力/3400回転
最大トルク:40.8kg-m/1600〜2000回転
価格:374万2200円

(文&写真/ダン・アオキ)