なにがあっても動じない、叩き上げの指揮官だ。高木監督は見事な手綱さばきで、V・ファーレンを一枚岩の闘う集団に鍛え上げた。(C)SOCCER DIGEST

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 初のJ1昇格を掴み、歓喜が弾けたトランスコスモススタジアム長崎。J2リーグ41節、V・ファーレン長崎は本拠地でカマタマーレ讃岐を3-1で下し、見事に自動昇格枠の2位の座を確保した。12戦負けなし、3連勝を飾っての悲願成就だ。
 
 高木琢也監督は、試合後のフラッシュインタビューで安堵の表情を浮かべた。ちょうど2週間前に話を聞いたとき、「本当にぎりぎりの戦いですよ。でも充実感があって、チーム一丸となって目標に迎えている。手応えはね、ありますよ」と語っていた。
 
 そして、シーズンのひとつの大きな分岐点を明かしてくれた。
 
「味スタでヴェルディに負けた(29節)。スコア上は僅差(1-2)だったかもしれないけど、本当に完敗に近い内容で危機感があったんです。これまでシーズンでやってきたことを一回見つめ直して、もう一度引き締めなければいけないと。選手たちはよく付いてきてくれましたよ」
 
 長崎に戻って来てすぐさま、チーム全員で島原半島に向かった。シーズン中では異例中の異例。1泊2日のミニキャンプを張ったのだ。なにか特別なハードメニューをこなしたわけではない。ただ寝食を共にさせ、互いに会話をかわす機会を増やすことで、個々の考える力を喚起した。そこかしこで積極的な意見交換がなされたという。指揮官の狙いはまさにそこにあった。ともすれば不平不満が出てもおかしくないシチュエーションで、チームは一枚岩になれた。監督と選手たちの間に、分厚い信頼関係があったればこそだ。
 
 寝る間も惜しんで、毎日毎日、対戦相手のスカウティングに勤しむ。選手たちに見せるイメージビデオもみずからの手で作成している。そんな高木監督の熱意を意気に感じない選手はひとりもいない。指揮官は「あの合宿が本当に大きかった。同じ方向に向くことができましたからね。あれがなかったらここまで勝ち残れていなかったと思う」と語り、頬を緩ませる。V・ファーレンはそこから12戦負けなしで突っ走った。ちなみに讃岐戦の前にも、プチキャンプを敢行したという。
 
 昇格セレモニーで指揮官は、大観衆を前にしてこんなスピーチをしている。
 
「前身の有明サッカークラブから数えて、今日は499試合目でした。長崎の地元クラブが、ついにJ1昇格を果たすことができたんです。長崎県民を代表してみなさんより先に僕が、選手たちにお礼を言いたいと思います。ありがとう!」
 
 いつもポーカーフェイスの“アジアの大砲”は顔をくしゃくしゃにして、苦楽を共にしてきた選手・スタッフと喜びを分かち合った。
 
文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)