トランプ大統領の来日とそれにともなう日米首脳会談ののち、安倍首相は米国製兵器の購入を発表しました。トランプ大統領の外交成果と広く報道されましたが、実情は少し異なるという見方もあります。

トランプ大統領来日、巨額の「ビジネス」成約

 2017年11月7日(火)、3日間にわたり来日していたトランプ米大統領は安倍首相との首脳会談において、日米間で数千億円(数十億ドル)規模の米国製兵器輸出入について合意があったことを明らかにしました。詳細については不明ですが、ミサイル防衛システム「イージス・アショア(陸上配備型イージス)」や、現在航空自衛隊向けに42機の導入が決定している最新鋭ステルス戦闘機、F-35A「ライトニングII」の追加発注ではないかと推測されます。


航空自衛隊仕様のF-35A(画像:ロッキード・マーチン)。

 これについてはアメリカ側への行き過ぎた「手土産」ではないかという批判も強いようですが、実のところトランプ大統領のセールスの結果ではありません。というのはいずれも、もともと内定していたものをあえて日米首脳会談において持ち出しただけにすぎないからです。

 特にF-35Aについては、2013年に閣議決定された中期防衛力整備計画(平成26年度〜平成30年度)において、現在保有する約200機のF-15J「イーグル」主力戦闘機のうち、近代化改修「F-15MJ」仕様としなかった残る半数の「F-15SJ」について能力の高い戦闘機に代替するための検討を行い、必要な措置を講ずることを明らかにしていました。

来日のお土産は予定通りの「発注書」だけ?

 このF-15SJの後継機については、F-15SJ自体を近代化したF-15 2040C仕様への性能向上といった候補もあったものの、事実上F-35A以外に現実的な選択肢がなく、またRF-4E/EJ「ファントムII」偵察機を運用する偵察航空隊を廃止し、戦闘機飛行隊1個(約20機)を増勢することも決まっており、これもまたF-35以外に候補がありません。したがって、すでに4年も前からF-35Aをさらに100機〜120機前後、追加発注することはほぼ規定路線でした。

 なお先進技術実証機X-2「心神」によって得られた技術をもとに開発される、いわゆる「F-3」という仮称で呼ばれる次世代戦闘機は、2040年頃の実用化を目指しており、今回は時期的にまったくの無関係です。

 イージス・アショアについても同様、今年の夏にはすでに決定されたという報道がされており、安倍首相とトランプ大統領による日米首脳会談の結果、数千億円規模の米国製兵器購入について合意があったという発表が事実ではあったとしても、これはあえていま合意したことにすることで、安倍首相はトランプ大統領に手柄を譲り「先輩」として花を持たせただけであると言えます。

ヒラリーさんでも同じだった?

 トランプ政権においてこのような例は初めてではなく、大統領就任直前の2016年12月12日には「F-35計画は制御不能に陥っている。1月20日の大統領就任後は防衛予算を数千億円(数十億ドル)削減する」と発言し、F-35の調達について見直しを行うことを示唆しました。


ニューヨーク市5番街にある超高層ビル、トランプ・タワーのエントランス前にて。2008年当時、62歳のトランプ大統領(画像:Paul Hakimata/123RF)。

 これを受けて、F-35を生産するロッキード・マーチンは同機の値下げを発表しましたが、それはほとんどポーズだけと言ってよいものでした。というのも、現在F-35はLRIP(低率初期生産)中ですが、2018年度からはいよいよ全規模量産が開始され、F-35Aの単価は2011(平成23)年度時点における1億5000万ドルから、最終的には7900万ドルにまで低下することが何年も前から計画されていたからです。

 すなわち、トランプ現大統領ではなくヒラリー・クリントン候補が大統領選で勝利していたとしても、F-35は量産が進むにつれ安価となっていたし、安倍首相とヒラリー・クリントン大統領による日米首脳会談では、航空自衛隊向けF-35Aの買い増しやイージス・アショアの導入について合意があったことに疑いの余地はないでしょう。

 実際のところトランプ大統領の「手柄」とされるものごとは顔を立ててもらっただけであり、本人の功績と呼べるものは何ひとつありません。

【写真】F-35Aのコックピット、こうなっている!


F-35Aモックアップのコックピット(関 賢太郎撮影)。