1970年代にカンボジアで起きた大虐殺。ポルポト政権になってから、わずか4年間で人口が3分の1に減少したとも言われている。死傷者数については様々な推計があるが、有力なのはおよそ170万人とのこと。

現在、Netflixで公開中のアンジェリーナ・ジョリー最新作『最初に父が殺された』は、カンボジアの作家であるルオン・ウンによる手記『最初に父が殺された(原題:First They Killed My Father)』をベースにしている。

オリジナルの映像作品と言えども、実話に基づきながら制作された本作は、当時の惨劇を徹底したリアリズムで再現している。

アンジーとカンボジアの接点

Netflixオリジナル映画『最初に父が殺された』より

今やハリウッドを代表する女優であるアンジーとカンボジアの接点は、2001年にさかのぼる。

彼女の主演作『トゥームレイダー』の撮影でカンボジアを訪れた際、その歴史を学んだことがきっかけとなったようだ。その後、アンジーはカンボジア出身の長男のマドックスくんを養子に迎えている。さらに、環境基金を設立した彼女は、その功績が認められ国王からカンボジアの市民権を付与されたりしている。

本作品の脚本は、ルオンとアンジーの共同で書き上げられた。原作に感銘を受けて、長い時間をかけて温めていた構想が満を持して映像化にいたったようだ。

生き地獄の中で揺れ動く
少女の運命

Netflixオリジナル映画『最初に父が殺された』より

物語の主人公は、首都プノンペンで裕福に暮らしている5歳の女の子。ある日、突然、家を追われることになる。間も無く、父親は殺されて、兄弟姉妹はバラバラとなってしまう。その後、幼いながらもサバイバルして、強制労働のキャンプ場で恐怖に怯えながら生活をすることにー。

そんな生き地獄のような状況が、全編に渡って、女の子の視点を通して描かれているのだ。とてつもない緊張感と恐怖の中で、揺れ動く少女の運命に片時も目を離すことができない。

想像を絶する惨劇

さて、僕がプノンペンを訪れたのは随分と前になるのだが、当時受けた大きな衝撃は、いまも心の中に残ったまま。

大量虐殺が行われた場所として知られるプノンペン郊外にあるキリング・フィールド。慰霊塔の中には、当時、虐殺された人々の頭蓋骨が数え切れないほどに積み上げられていた。

異様な光景を見た後に向かったのが、トゥール・スレン虐殺犯罪博物館。ポル・ポト率いるクメール・ルージュは、学校であったこの場所を収容所にした。そして、反革命分子の疑いをかけられた人々の拷問を続けたのだ。思わず息を飲んだのが、おびただしくも機械的に並べられた人々の顔写真。処刑される前に撮影された表情からは、「諦め」しか感じられなかった。

さらに尋問が行われた部屋には、ベッドに血のりがべったりと残り、重たい空気に支配されていた。拷問の道具は、身近なワンタッチ傘も使われたという話を聞いてゾッとした。なぜなら、この狂った大虐殺は、遠くない過去だと僕に実感させたから。

怒りの感情を抱いたのは、当時の様子を描いた1枚の絵。生まれたばかりの赤ん坊を放り投げて、それをゲーム感覚で射殺していた絵だった。その絵の前では言葉を失い、しばらく、動けなかったことを昨日のことのように覚えている。

Netflixオリジナル映画『最初に父が殺された』より

アンジーは、本作において次のように語っている。

「この映画は、私のカンボジアへの感謝を表したものです。この国に来ることがなければ、母親になることもなかった。この国のこと、息子であるマドックスの両親が経験したかもしれないことを理解したかった。この映画の目的は、戦争という状況で子どもたちが直面する恐怖を語って、彼らを守る手助けをしようと伝えること」

彼女が渾身の力を込めた最新作から、何かを感じて欲しいと願っている。

Netflixオリジナル映画『最初に父が殺された』独占配信中

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