中国地方のローカル線で利用者が急増。混雑で列車が遅れ、乗り切れない可能性もあるほどといいます。そのローカル線は、廃止まで半年を切ったJR西日本の三江線。個人、そして団体での利用も増えているそうです。

混雑で40分の遅延も

 中国地方の山間部を走るローカル線で、利用者が急増しているようです。


「中国太郎」の異名を持つ江の川へ沿うように走る、三江線の列車(画像:photolibrary)。

 島根県の日本海側にある江津駅と、広島県内陸部の三次駅を結ぶ、全長108.1kmのJR西日本・三江線(さんこうせん)。2017年11月10日(金)現在、JR西日本はウェブサイトでこの三江線について、「多くのお客様にご利用いただいており、列車によってはご乗車いただけないこともございます」と掲載しています。いったい何が起きているのでしょうか。JR西日本 米子支社に聞きました。

――三江線の利用者数は、どのような状況なのでしょうか?

 利用者数の具体的な数値は把握していませんが、きょう(11月10日)もお客様混雑のため、20分から40分の遅延が発生しています。

――いつごろから、なぜ増えたのでしょうか?

 紅葉シーズンだからです。三江線の沿線には著名なスポットこそないものの、全体的に紅葉が見られることもあり、毎年この時期にはご利用が増えるようです。さらに、廃止が近づくにつれ個人のお客さまが増えていることに加え、団体のご利用も増えているため、例年以上に混雑しています。

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 三江線の利用者は、1987(昭和62)年のJR発足当時から約9分の1に減少。2014年度の輸送密度(1日1kmあたりの輸送量)は50人という非常に少ない数字で、2018年3月末をもって廃止されることが決まっています。

「三江線乗車ツアー」ほぼ満席の大人気 列車増発は?

 廃止が近いこともあり、三江線の乗車を盛り込んだツアーが多く計画されているようです。大手旅行代理店の阪急交通社は、2017年11月中旬に広島からの日帰りツアー「さよならJR三江線乗車体験と『帝釈峡』紅葉クルーズ」を企画。「毎年、紅葉で有名な鉄道の乗車を盛り込んだツアーを行っていますが、廃止が間近ということもあり、今年、三江線の乗車を含めたものを企画しました」と話します。

 このツアーは、広島県北東部の著名な紅葉スポット「帝釈峡」の観光と三江線の乗車体験(三次〜口羽間)を組み合わせたもので、阪急交通社によると「ほぼ満席の大人気」とのこと。同社はこのほかにも、三江線の乗車体験と、その沿線以外の観光を組み合わせたツアーを企画しています。

 三江線の列車本数は少なく、下り(三次方面)が1日8本、上り(江津方面)が1日9本の運転。そのうち、江津〜三次間の全線を走破する列車は下り2本、上り1本しかありません。所要時間はおよそ3時間半です。JR西日本 米子支社によると「廃止が近づくにつれ、お客さまはさらに増えていくことが予想されますが、車両の数に限りがあるため、増発は難しい」そうです。

【地図】JR三江線の走行区間


江津〜三次間、108.1kmを結ぶJR西日本の三江線。ディーゼルカーで運行される(国土地理院の地図を加工)。