【ライターコラムfrom名古屋】「相手の心を折った方が勝ち」…急成長中の青木亮太、日に日に増す“頼もしさ”

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 進境著しいのは今に始まったことではないが、このところの青木亮太はまた一つステップを上った感が出てきた。変幻自在のボールタッチに鮮やかなフィニッシュワークはもとよりの特徴だったが、それを武器として使える土台がしっかりしてきたのが今季の彼の活躍を支える大きな理由である。苦手なシュートに関しては、外した決定機はここまで挙げてきた11得点の倍以上はあり、まだまだ改善の余地ありの分野。それでも彼は着実に階段を上っていると感じられるのにはワケがある。ボールを持ってナンボの選手の、ボールを持っていない時の動きが良くなってきたのである。

 それを非常に強く感じられたのが、前節のファジアーノ岡山戦だった。序盤から「3バックの相手はボランチの横が空くので、中よりのポジションを取るようにしていました」と、守備の持ち場である右サイドを離れること多数。先制点にして決勝点となった37分のゴールにしても、中央より左サイド側のペナルティエリア内で決めたものだ。だが青木は相手ボランチの存在がそこまで感じられない自陣内から既に左サイドに頻繁に顔を出し、ボールがうまく布陣を循環する手助けを繰り返していた。「ポジションとは守備の時に戻る場所」と定義する風間八宏監督の教えをこれ以上なく体現する動きではあるのだが、それにしてもこの日の青木の位置取りは奔放に過ぎた。

 しかし、ここに彼の成長の跡が見えるのである。印象的だったのは開始3分頃の守備のワンプレーだ。相手の右サイド、つまり自分の逆サイドからの速攻に対し、サイドチェンジなどの可能性を見つつも一直線に左サイドバックの位置までカバーに走り、見事インターセプトを決めてみせた。「だいぶ早めに動きましたね、ヤバいなと思ったんです。たぶんあれ、行かれるわと思って。パスが入って前を向かれるかなと思ったぐらいで戻ってました」。守備意識というよりも、ゲームの流れを読む力の成長という方が正しいか。「そこまで全力で戻っていたわけではないので、逆に行っても戻れるくらいでしたよ」とこともなげに語るのだから頼もしい。

「ポジショニングについては、自然にああなっています。あまり考えていないです。結構みんなも流動的に動きますし。ただ、自分は守備では特に味方のいないところに行くようにしたりもしています。攻撃でも人数が増えた方がパスは動きますし、相手もつかみにくくなりますから。(田口)泰士くんや(小林)裕紀くんがそういう動きをしているのを見て、それは助かりますし、危ないなと思ったところで止められるように、守備のところは岡山戦で意識してやっていました。みんなが助かったな、と思うようなプレーはやっていきたいと思いますね」

 こうした動きについては風間監督も「それは表裏一体。自分たちがどのぐらい攻められるか、サッカーができるかによって、守備というのは形ができてくる」とし、「より正確になってきているから、今度は相手が動いてきていると思うんだよね。そういうところを選手たちが自覚してきている」と、選手の成長による産物と捉えている。件のプレーで助けられた左サイドバックの和泉竜司は「憶えてます。ポジションに関係なく自由に攻撃していますし、そこで奪われたらすぐに切り替えて守備をする中で、良いカバーリングをしてくれました」と語るが、彼もまた「深く考えてなかったけど、確かにあまりないプレーですよね」と、特別なプレーとは思っていなかった。攻撃だけでなく、守備においても流動性が出てきたチームは、対応力の高い集団へと変貌を遂げてきている。青木もその一人として、顕著な動きを見せているというわけだ。

 その上で青木は自分がすべきことを「決めるところを決めること」と、得点に定めている。「決めておけば試合が楽になるし、相手の心を折った方が勝ち。1点、2点ではまだ危ないので、早めに大量得点できれば一番良い」とは何とも豪胆なコメントだが、攻撃に軸足を置くチームの哲学からすればそれは正論だ。次節の相手ジェフユナイテッド市原・千葉とはともすれば打ち合いにもなりかねないが、青木が決めるべき決定機を決めれば名古屋は優位に立てる。それだけのチャンスは作れるチームであるうえに、青木はそのチャンスに顔を出すセンスを持ち合わせているからだ。神出鬼没のMFは守備でも、何より攻撃で、チームの力になりたいと考えている。

文=今井雄一朗