トップ下で先発した井手口。ブラジルのアンカー、カゼミーロに対し、アグレッシブな守備を披露した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[親善試合]日本1-3ブラジル/11月10日/リール(フランス)
 
 メンバー表を見た時に、中盤3人の編成は「アンカー+インサイドハーフ」と確信した。長谷部誠、山口蛍、そして井手口陽介。最終予選のホーム・オーストラリア戦と同じ顔ぶれで、当時はアンカーに長谷部を据え、インサイドハーフには山口と井手口が並んだ。
 
 しかし、ふたを開けてみれば、「2ボランチ+トップ下」だった。香川真司や清武弘嗣、原口元気など、これまでは攻撃的なタイプが務めてきたポジションに収まったのは、その守備力に定評のある井手口だった。
 
 託されたタスクは、ブラジルのアンカー、カゼミーロを抑えること。井手口は序盤からアグレッシブに奪いにかかり、まずまずのパフォーマンスを見せていた。
 
 ただ、本人は納得していない。
 
「個人として、組織的にも、レベルの差をすごく感じました」
 
 カゼミーロだけでなく、ネイマールに対してもタイトな守備を披露。個人的には、日本のなかで誰よりもデュエルで対抗できていたと思う。球際の勝負で激しさを見せたが、手応えを聞かれれば、「あんまりないですね。簡単に抜かれたり、ファウルで止めているところもあったので、“止めている”という印象は全然なかった」と反省を口にする。
 
 2失点目は、自らのクリアをマルセロに拾われて、豪快なミドルをぶちこまれた。
 
「そこは自分のミス。世界ではああいうのは仕留められる。自分の甘さが出た」
 
 世界との差を痛感し、ミスで失点を浴びた。本人からすれば悔しさのほうが勝っているのかもしれないが、そこまで悪い内容ではなかった。むしろ、“トップ下・井手口”には大きな可能性を見出せた。
 
 ワールドカップを見据えれば、ブラジルほどの実力国ではないにせよ、対戦国は日本より格上になるだろう。まずは守備から入る戦略をベースとするうえで、井手口の非凡なボール奪取力やデュエルの強さ、豊富な運動量を生かした機動力は、前から奪いに行く際には効果を発揮するのではないだろうか。

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 攻撃面については、トップ下でのプレーはほぼ初めてに近いだけに、「分からないなりにやっていた」という。とはいえ、自分より後ろの選手がボールを足もとに収めた際、敵陣の空いたスペースに即座に走り込む動き出しにはセンスが感じられた。
 
 実際、井手口自身はどう考えているのか。ストレートに“トップ下・井手口”について聞くと、次のように応じる。
 
「どんなポジションでもできれば、それは悪いことではない。どのポジションでもこなしていけるようにしていきたい」
 
 特定のポジションにはこだわっていないようだが、パンチ力のあるミドルシュートも武器のひとつであるだけに、トップ下の適正はあるはず。繰り返しになるが、2列目の位置であれだけ相手にガツガツと行けるのは魅力で、スペースへの果敢な飛び出しも考えれば、攻守両面で“スイッチ”を入れられる存在になる。
 
 自分がトップ下に入った時の中盤の関係性については、ポジティブな感想を述べる。
 
「3人の形がそこまで崩れることはなかった。やりづらくもなかったし、もっともっと話しながらできれば、さらにうまくいくと思います」
 
 ブラジル戦は、完敗以外の何物でもなかった。そのなかで唯一とも言える収穫が、井手口の起用法で選択肢が増えたことだろう。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)