深々と礼をして会見場を後にする神戸製鋼の川崎博也会長兼社長(撮影:風間仁一郎)

“生煮えの中間報告”――そんな印象の調査報告書だった。品質検査データ改ざん問題に揺れる神戸製鋼所は11月10日午後、「原因究明と再発防止策に関する報告書」を経済産業省に提出。同日、川崎博也会長兼社長らは都内で会見を開き、その内容を説明した。

8月末にアルミ・銅事業部門における自主点検でデータ改ざんが発覚、経営陣に報告されたことを受けて、同社は川崎氏を委員長とする「品質問題調査委員会」を社内に設置し、事実関係の調査を行ってきた。

今回の報告書は、10月26日に新設された第三者のみによる「外部調査委員会」へ調査が継承されるまでの社内調査の結果をまとめたものだ。会見で川崎氏は「最終的な外部調査委の調査を待ちたい」として記者の質問をかわす場面が多かった。

行き過ぎた「収益重視」

報告書では改ざんに関し、以下の5項目が原因であると結論づけた。
(1)収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土
(2)バランスを欠いた工場運営
(3)不適切行為を招く不十分な品質管理手続き
(4)契約に定められた仕様の順守に対する意識の低下
(5)不十分な組織体制

原因の第一に挙げたのが、神戸製鋼所の特徴である「事業部制」からくる問題だ。同社は主力の鉄鋼部門を始め、溶接から建設機械、電力まで主に7事業に分かれる。そうした多角経営を可能にしたのが、事業部制だった。

だが、厳しい経営環境の中で、本社の事業部門への統制は「収益評価に偏っていた」。権限は各事業部に委譲され、組織の規律は各事業部の「自己統制力に依存する状況」となった。

結果的に品質責任も現場任せで、経営自らが責任を持って工場の諸問題を把握しようとする姿勢が不十分だったという。この経営管理構造が「工場で起きている問題について現場が声を上げられない、声を上げても仕方がないという閉鎖的な組織風土を生んだ」としている。

工場運営については、改ざんが最も多く発生しているアルミ・銅部門で顕著なように、「全社への十分な収益貢献を果たすことができず苦しんできた歴史的背景がうかがえる」。その結果、無理に受注したり、生産や納期を優先する風土が生まれたりした。そして、顧客のクレームがない限り、改ざんを許容する動機が醸成されたとする。


川崎氏は自らの経営責任は「最終的な対策をまとめた後に判断したい」とだけ述べた(撮影:風間仁一郎)

ほかに検査値の書き換えが可能な検査プロセスの問題や、「ものづくりに対する誤った自信、クレームを受けていないので数値を書き換えても問題はないという意識」があったとする。本社による品質監査が行われていなかったことなど、品質ガバナンス機能の弱さも指摘されている。

あくまで中間報告的な位置づけ

こうした問題を踏まえ、再発防止策として「品質はコストや納期に優先する」という価値観を「品質憲章」として定めるほか、「品質ガバナンス再構築検討委員会」を新設する。これまで事業部間での人事異動はほとんどなく、それが組織の硬直化につながっていたが、今後は人事ローテーションも積極的に進める。さらに、試験検査データの記録に関する自動化や、本社における品質監査の専門部も設置する。

ただ、今回の報告書はあくまで中間報告的な位置づけだ。年内をメドにまとめられる外部調査委の報告を踏まえて、最終的な再発防止策に反映していく方針。それらの諸施策の検討については、新設した品質ガバナンス再構築検討委員会が行うが、川崎氏自らが委員長となり「リーダーシップをとっていく」(川崎氏)。経営責任や改ざんに関与した社員の処分については、「最終的な対策をまとめた後に判断したい」(同)という。

今回の報告書はどこまで実効性があるのか。そもそも外部調査委が新設されたのは、10月20日にアルミ・銅部門の長府製作所で自主点検の妨害行為が内部通告で発覚し、社内による自主点検の適正性、妥当性に大きな疑義が生じたためだ。今回の報告書はそうした疑念の強い社内調査を基にしており、客観的な信頼性に疑問が残る。

報告書ではアルミ・銅部門ばかりが”悪者”にされている。確かに、改ざんが圧倒的に多いのは同部門だ。しかし、主力の鉄鋼部門や機械部門でも同様の問題が発覚している。今回の不適正行為は、本当に全社的な問題ではなかったのか。

アルミ・銅部門で改ざんが多かった要因の一つとして、同部門が低収益でグループの足を引っ張ってきたことが挙げられる。だが、1998年度以降の部門別利益を見ると、アルミ・銅部門が赤字なのは2008年度だけ。むしろ、鉄鋼部門や建設機械部門のほうが赤字は多い。アルミ・銅部門が低収益に悩んだ挙げ句に暴走した、ととれるような記述は説得力に欠ける。

本当に現場だけの責任なのか

最大の疑問は、川崎氏を始めとした経営責任だ。今のところ川崎氏をはじめ取締役会は改ざんを横行させた管理責任は認めているものの、改ざんを指示したり、改ざんを黙認したりしたことについては認めていない。


会見は約2時間に及んだが、信頼回復につながったとは到底言えない(撮影:風間仁一郎)

今回の会見でも、川崎氏がアルミ・銅部門の不正を知ったのはあくまで今年の8月末であると繰り返した。報告に来た担当副社長も「寝耳に水と言っていた」(川崎氏)。

ただ、本当に工場の現場だけに改ざんの責任を押し付けられるものなのか。改ざんは少なくともおよそ10年前から存在したことを同社は認めている。現役の役員や役員OBの多くが工場で働き、幹部を務めた経験がある。彼らが改ざんにまったく関与しなかったのには、どうしても疑問がつきまとう。「現役役員や元役員にもヒアリングをしたが、まだ調査途中だった。あとは外部調査委が調査を継続する」(川崎氏)というが、外部調査委がどこまで厳格に追及できるかは定かではない。

川崎氏は「神戸製鋼の信頼はゼロに落ちた」と述べる。しかし信頼を回復する第一条件は、真実を明らかにし、ウミを出し切ったうえで、真に有効な再発防止策を講じることだ。まだまだ先は長いと考えざるを得ない。