玉木雄一郎氏が希望の党の共同代表に選出された(筆者撮影)

希望の党は11月10日午前、国会議員の共同代表として玉木雄一郎衆議院議員を選出した。

希望の党の53名の国会議員のうち、39名が玉木氏に投票。14名が大串博志衆院議員に入れた。小池百合子代表に近いチャーターメンバー(発足メンバー)たちが応援していたため、当初から玉木氏の勝利は確実視されていた。玉木陣営は「53票からチャーターメンバーを除いた過半数」という目標ラインを設定していたが、いちおうはそれを達したことになる。しかしあるチャーターメンバーは代表選の前に「4対1以上で勝たなくてはいけない」と述べていた。

その理由は、共同代表選で党内に路線の対立があることが判明したことだ。争点となったのは、「憲法改正と安保法制」、そして「野党共闘の可能性」だ。

大串氏は「9条改正は必要ない」と断言

これについて大串氏は「憲法改正の議論はあっていいが、9条改正は必要ない」と断言。安保法制についても、「日本の立憲主義を守るという立場から、集団的自衛権を含む安保法制は容認しないという立場を明らかにする」と述べ、他党との連携についても、民進党や無所属の会、立憲民主党との連携及び統一会派を組む可能性にも言及した。

しかしながら希望の党は、保守政党を標ぼうし、安全保障政策について現実視するのではなかったか。そのために政策協定書が作られ、民進党からの参加希望者は振り分けられたのではなかったか。上記のチャーターメンバーは、「安保法制も憲法改正問題も、希望の党に入る時に確認済みの事項だ。それに反するならば、同じ政党としてやっていられない。出て行ってほしい」と述べている。

これについて大串氏は、「当初の政策協定書には『安保法制を容認しない』と書かれていたが、後で修正してその文言は消えた」として、持論が希望の党の基本方針と矛盾しないことを強調。実際に当初作られた「8項目政策協定書」にはその第2項で「限定的な集団的自衛権の行使を含め、安全保障法制を基本的に容認し、現実的な安全保障政策を支援すること」と記載されていたが、後に「現実的な安全保障政策を支持する」に修正されてはいる。

よって「安保法制を容認しない」と主張しても、政策協定書に矛盾するわけではないという論理が成立するというのが大串氏の言い分だ。

玉木氏は「憲法改正議論は必要」

一方で玉木氏は「憲法改正議論は必要」として9条を議論の対象から除外することを否定しつつも、「地方自治や解散権の縛りの問題など、優先すべきものがある」と、9条改正を否定する大串氏に一定の配慮を払った。また安保法制についても、「現実な外交安保」を提唱しながら、「(現行の)安保法制といっても、10本以上の法律で構成されている」「問題のある箇所は見直していくべきだ」と柔軟な姿勢を見せた。

代表選に勝つばかりではなく、その後で選挙で分断された各陣営をどのように懐柔するのかが共同代表の大きな責任になる。分裂していてはかえってマイナスだ。よって玉木氏の言葉には、小池百合子代表やその側近の思惑に反発する勢力をなだめ、とりこんでいこうという努力が伺えた。

そのためだろうか、午後に開かれた玉木陣営の代表選勝利の報告会では、玉木氏の口からは明るい言葉が発せられている。

「さわやかにスポーティにいきたいと思うので、みなさん頑張りましょう」

しかしその思惑通りに進むのか。玉木氏が53票中の39票を獲得したということは、全体の7割強を占めることになる。だが前述した通り、チャーターメンバーのひとりは「4対1以上で勝たなくては意味がない」とまで言っている。玉木氏の得票数では、全体の8割に満たないのだ。

そもそも代表選が終わった後、「ノーサイド」との言葉はよく聞かれた。2011年8月29日の民主党代表選で選任された野田佳彦氏が「みなさん、お疲れ様でした。ノーサイドにしましょう、これで」が最初の使用例だと言われている。前原誠司氏を選任した2017年9月1日の民進党代表選でも、その言葉はたびたび使われた。

しかしその実態は、果たしてノーサイドだったのかどうか。野田氏が最後を飾った民主党政権は国民からの評価は散々で、党内の不満も噴出。2012年12月の衆院選で230議席から57議席と大きく減らして惨敗した。

政治的キャリアに大きな傷を付ける危険性も

前原民進党代表に至っては民進党を分断し、やがては希望の党へ合流するという“禁じ手”を使った。その分裂劇では、排除する側と排除される側に分かれ、たとえば東京16区で元民進党の初鹿明博氏(立憲民主党)と田村謙治氏(希望の党)が立ったように、選挙区によってはかつての仲間同士が争うという事態も生じている。

果たして玉木氏が述べたような、綺麗な言葉ですむ問題なのか。勝利の報告会を覗いた記者は、その言葉に違和感を覚えたという。

「だいたい意味がわからない。あまりに現実からかけ離れている。バカじゃないかと思った」

さらに政党として視野の狭さも致命的だ。建て前は「政権交代を目指す」としながらも、今回の代表選は国会議員の間での投票という面にこだわり、街頭演説など国民にアピールすることは一切なかった。

また小池代表の息のかかる玉木代表では、党規約の改正を含めて希望の党が近代政党に脱皮できるのかどうなのかはわからない。現行の党規約では、代表は自ら辞任するか重病にならない限り、職を辞すことはない。さらに小池代表が他の役員2名のみで都民ファーストの会の代表を野田数氏から荒木千陽都議にすげ替えた事例があることから、創業者としての立場を強調する小池代表の権限を縛る必要も出てくるだろう。

玉木代表に課せられた問題は数多い。そのいずれも難題で、失敗すれば政治的キャリアに大きな傷を付ける危険性もある。

それを承知の上で共同代表に就任した玉木氏だが、その実行力はいかほどなのか。