吉田由美の眼☆東京モーターショー展示車のボディカラーに込められた“思い”とは?

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クルマは時代を映す鏡のようなもの。そしてクルマの色にも、時代を映す要素が潜んでいます。

例えば、クルマのトレンドカラーを見ると景気が分かります。クルマとそのボディカラー双方を楽しめる各国のモーターショーでクルマの色を見ると、その国の景気や状況がうかがえるのです。

今回は東京モーターショー2017展示車両のボディカラーを振り返ってみました。

東京モーターショーは、2年に一度行われる日本の自動車業界のお祭りです。今回は、371台のクルマが展示されていましたが、日本メーカーが展示したEV(電気自動車)のコンセプトカーは、ほとんどがホワイト。そのほか今回のショーでは、オレンジやイエローといった柑橘系のビタミンカラーが目立ち、対照的に、暗めのシルバー系も多かったのが印象的。実はこうした展示車両の色には、きちんとした名称が付けられているものが多いのです。

ホンダのステージ上に展示されていた2台のEVは、同じホワイトのカラーで統一されていましたが、その名称は“ハーモニックホワイトミスト”。少しベタっとした印象の白です。自動運転機能を備えたEVということもあって、ちょっと懐かしさを感じる親しみやすいデザインにしてきたせいか、あえてこういう色を選んだのかも。

レトロ系といえば、スズキの軽トラック「キャリイ 軽トラいちコンセプト」のボディカラーは“シフォン・アイボリー”。ちょっと懐かしい、ぼんやりした優しいアイボリーです。

レトロといえば、ダイハツ「DN コンパーノ」のオレンジは、往年の名車「コンパーノ」のオマージュ。色に名前は付いていないものの、デザインとともに色もオマージュしたのだとか。

スバル「BRZ STIスポーツ クールグレーカーキエディション」の“クールグレーカーキ”も、レトロ風な白みがかった水色。でもこの色、グレーでもカーキでもないような気がするのは私だけでしょうか…(笑)。ちなみにこちらは、100台限定です。

逆に「こんなクルマのボディカラーにも名前が付いてるの!?」と思ったのが、スズキ「e-サバイバー」の“スペースシップ・パールホワイト”。確かに、月面着陸しそうなデザインのクルマなので、ボディカラーの名称も納得の“宇宙的”ネーミングです。

アウディ「Q8 スポーツコンセプト」のボディカラー“クリプトンオレンジ”も印象的な色で、クルマの雰囲気にもピッタリ。

同じくオレンジ系としては、DSの「DS7 クロスバック」がまとっていた“ビサンチン・ゴールド”もインパクトがありました。フランス語では“オル・ビサンチン”というネーミング。おそらくはっきりとした発音ではなく、フランス語ならではの独特なイントネーションなのかもしれませんが、それにしてもパンチの効いた色です。

BMW「コンセプト 8シリーズ」に塗られていたブルーグレーメタリックの名は“バルセロナ・グレイリキッド”。BMWはもう1台の「コンセプト Z4」でも、個性的な“エナジェティック オレンジ フローズン”と呼ばれる茶色がかったオレンジで、大人のスポーツを演出していました。

対照的に、黒一色のカラーリングなのに、圧倒的な存在感を醸し出していたのがトヨタ「センチュリー コンセプト」。20年ぶりのフルモデルチェンジを予定している「センチュリー」ですが、この色の名前はなんと“神威(かむい)”! 名称は現行モデルのそれを継承したもので、これまでと同様、7回重ね塗りをして仕上げているのだとか。でも、塗料自体は最新なものに進化し、さらに、現代の日本の匠の技を加えたとのことで、懐の深い輝きに。ショー会場でも、このクルマの周りには黒山の人だかりができていました。もしかしたら、人間は細胞レベルで、良いモノを見極める能力を持っているのかもしれませんね。

そういえば、今回のショーで大人気だったマツダのコンセプトカー「魁(カイ)コンセプト」と「ヴィジョンクーペ」のカラーは、それぞれ“ソウルレッドの進化版”、“マシングレーの進化版”とのことで、きちんとした名称はないそうです。

マツダの“ソウルレッド”といえば、名称や色合いの認知度が高いボディカラーの代表選手。もちろんその背景には“カープ人気”などの効果もありますが、かつてこれほどまでに認知度の高いボディカラーはありませんでした。今後、ソウルレッドくらい名称や色合いが認知された色が出てくれば、クルマを違う角度で愛でることができるかもしれませんね。

(文/吉田由美 写真/吉田由美、田中一矢、アウディ ジャパン)