練習で負傷しNHK杯を棄権した羽生結弦【写真:Getty Images】

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NHK杯前日練習転倒で右足負傷…スポーツトレーナーが見た故障の内容と今後の見通しは…

 男子フィギュアスケート羽生結弦(ANA)が10日、グランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯を棄権した。前日練習でジャンプを着氷した際に右足を負傷。「右足関節外側靱帯損傷」と診断されたことが報じられているが、一般的にどんな故障で、復帰までにどれほど時間を要するのか。トップアスリートのトレーナーを務める新浦安しんもり整骨院入船院・新盛淳司院長に話を聞いた。

「転倒シーンの映像を確認すると、足首の靭帯損傷と膝の靭帯損傷のリスクのある転倒の仕方と率直に感じました。足首外側の靭帯損傷という報道ですが、足首内側の靭帯、前脛腓靭帯という腓骨(すねの外の骨)と脛骨(すねの骨)を繋ぐ靭帯の損傷がないか、心配になります。前脛腓靭帯の損傷だった場合、長引くリスクが高まります」

 サッカーJ1磐田の元日本代表MF中村俊輔の専属トレーナーも務める新盛院長はこう語った。一概に足首の靭帯損傷とはいえ、箇所や損傷の程度に応じ、全治やリハビリのプロセスも変わってくるという。

「足首の外側の靭帯は、前距腓靭帯という靭帯を損傷するケースが多くみられます。足首を前方に出過ぎないようにする働きを持つ箇所で、体操の内村航平選手も10月の世界選手権で左足首の前距腓靭帯を痛めています。一般的に前距腓靭帯単独の損傷の場合、軽度なら全治3週間と診断されることが一般的には多く見受けられます。しかし、重度の場合、そして前脛腓靭帯を損傷していたら、復帰は4〜8週と診断されるケースもあります」

 一般的には最短で全治3週間、箇所や重さによって8週間程度まで長引く恐れもあると分析。今後、注意しなければならないのは、今回の故障により、足首の関節が緩くなってしまう後遺症という。

ジャンプで負担かかる足首、ひざ…今後も無理は禁物「まずは炎症を引かせること」

「足首の緩さが見られた場合は、治療方法としてある程度の期間固定した方がいいケースもあります。その場合は、可動域や筋力が低下し、パフォーマンスを上げるまでに時間がかかることもあります。スケートという競技は足首と膝に最大限の負荷がかかる。ブレードというかなり不安定な箇所が、さらに不安定な氷の上に着地するわけです。

 普通の場所でジャンプするだけでも、足首、ひざの不安は大きいものです。特にジャンプの踏み込み、着地は足首への負担が高いので、競技への影響を慎重にみていく必要があります。足首の捻挫を完治させずに、復帰を急いでしまえば、足首の不安定さが残ったり、軟骨を損傷したりと後遺症のリスクも懸念されます。今後の競技人生に影響を及ぼす可能性もあるのです」

 最大の目標は平昌五輪だ。だからこそ、今回は勇気ある決断といえる。ただし、時期尚早の復帰は輝けるキャリアを過ごす羽生の将来にとって禁物と新盛院長は指摘した上で、今後のリハビリの道筋を分析。完全復活を心待ちにした。

「まずは炎症を引かせること。その後で、足の指という靭帯に負担がかからない場所は早く動かすこと。足首が固まり、可動域が狭くなることを防ぐことができます。なるべく筋力の減少を抑えたいところです。今は羽生選手の怪我が軽症であることを祈るばかりです」