希望の党の共同代表に選出された玉木雄一郎衆院議員 (右)、敗れた大串博志衆院議員(左)と手をつなぐ(写真:共同)

GDP1・2・3位の米国、中国、日本の3カ国首脳が主役となる計10日間のアジア首脳外交が世界の注目を集める中、永田町では10日、衆院選で敗北した希望の党の共同代表選挙がひっそりと実施され、玉木雄一郎元民進党幹事長代理(48)が初代共同代表に選出された。玉木氏は「素晴らしい仲間と、本物の国民政党を作り上げたい」と決意表明し、一騎打ちの相手の大串博志元民進党政調会長(52)と結束の握手を交わした。

ただ、共同代表選では憲法改正、安保法制から野党共闘の在り方まで政党としての基本理念や政策での路線対立も際立ち、なお党分裂の危機も続く。「国政はお任せ」と丸投げしたかにみえる創業者の小池百合子都知事(党代表)も、“親小池(親子池)”とされる保守派の玉木氏の勝利に笑顔を隠さず、玉木氏も「代表との意思疎通を欠かさない」と応じるが、今後の党運営では“小池の傀儡”か“小池離れ”かで悩む日々が待ちうけている。

安倍晋三首相の首脳外交のため事実上の国会休会に合わせた今回共同代表選は、8日告示・10日投開票という短期間の選挙戦となり、衆参国会議員53人が投票で「国政の党首」を決定した。8人以上の推薦人を確保して立候補したのは玉木、大串両氏だけで、それぞれの立ち位置から「親小池VS反小池」の一騎打ちと評された。

トリプルスコアで「民進再結集派」を圧倒

決戦の場となった10日昼前の両院議員総会には1人の事前投票者を除く52人の所属国会議員が出席、玉木、大串両氏の「最後の訴え」を経て投開票が行われ、玉木氏39票、大串氏14票というほぼトリプルスコアで玉木氏が当選した。いわゆる結党メンバーの細野豪志元環境相や長島昭久元防衛副大臣という保守派だけでなく中間派も取り込んだ玉木氏が、立憲民主党や民進党との再結集に意欲をみせる大串氏を圧倒した。

国会議員の投票ということで小池代表は姿を見せず、希望の党結党で小池氏とタッグを組んだ前原誠司前民進党代表は入党手続きが済んでいないため投票できなかった。玉木氏の任期は小池代表と同様に2020年9月までとなる。

今回の共同代表選びの最大の焦点は、党としての立ち位置だった。いわゆる「小池新党」という結党の経緯から「寛容な保守政党」が基本理念だったが、衆院選での安倍1強政権打倒という旗印から、「第2保守党」か革新勢力とも連携する「強力な野党」かが争点となった。具体的には結党直後のいわゆる「排除の論理」の踏み絵となった憲法9条見直しや集団的自衛権行使も含む安保法制の容認・支持をそのまま党の理念とするかどうかが問われ、玉木氏の当選で「第2保守党」として自民党に代わる政権政党を目指すことが決まった形だ。

ただ、投票直前の最後の訴えでも路線対立は鮮明だった。玉木氏は「安保法制の白紙化は現実的でない」「9条見直しも含め、国民合意を優先した真っ当な憲法改正論議をリードしたい」「単なる野党再結集では時計の針を逆に回すだけ」などと力説。これに対し、大串氏は「憲法改正の議論は必要だが、9条の見直しは不要だ」「1強打倒のためには志を同じくする民進、無所属さらには立憲民主との統一会派を目指す」と主張した。

開票結果は玉木氏の圧勝だったが、「中間派の多くが勝馬に乗った」(若手)との見方も多く、各国会議員の色分けどおりの結果とはいえそうもない。選挙後、小池、前原両氏の責任を厳しく追及して大串氏に投票したとみられる議員の中には「離党して民進党系会派の無所属の会(衆院)に移りたい」との声も出た。これに呼応するように民進党の大塚耕平代表は「次期衆院選で政権選択可能な状況を創造することを目指す友党として、国会対応などで連携、協力しあえることを期待する」とのコメントを発表した。

"二足の草鞋仲間"に「大変なのよね」と小池氏

もちろん、1000万票近い希望の党への比例投票で復活当選した議員達の離党は「投票した有権者への裏切り行為」ともなるだけに、「口では不満を言っても、すぐ離党はありえない」との見方が多い。だが、年末恒例の政党助成金目当ての「離合集散」に合わせて離党組が出る可能性は小さくない。衆院選で希望の党と連携した日本維新の会の松井一郎代表は、知事と党代表の「二足の草鞋仲間」として小池氏に電話で「不満分子は切り捨てた方がいい」などと忠告したが、小池氏は「大変なのよね」とつぶやいただけだったという。

選挙結果を踏まえての政党助成金は再計算され、希望の党には新たに5億円余が支給される。ただ、当面は50人を超える野党第2党としての党本部経費や党職員給与もあり、所属政治家への活動資金支給などは困難で、党幹部が資金を持ち寄っての「貧乏暮らし」を余儀なくされる。だからこそ、大串氏は70億円の「貯金」をキープする民進党との連携に意欲を示すのだ。同氏は2019年夏の参院選選挙態勢づくりに絡んで、拠り所を失った地方議員や組織との連携・協力の必要性からも、組織面での“小池私党”からの脱却を訴え、多くの議員がうなづいた。

こうした課題に対し初代共同代表となった玉木氏は「寛容な改革保守政党として党の立ち位置やカラーを明確にしないと国民の支持は得られない」と力説。当選挨拶では、新たな保守党として、「野党全体をリードしていける党に育てたい」と各議員の協力を呼びかけ、壇上に勢ぞろいした所属議員の真ん中で自ら「ガンバロー」とこぶしを突き上げた。

一騎打ちを演じた玉木、大串両氏はともに東大法学部卒の大蔵省(現財務省)キャリア官僚出身のエリート議員。入省は大串氏が4年先輩で衆院議員としても当選5回で、同4回の玉木氏より一期先輩だ。どちらも政策通で鳴らし、民主党時代から国会での政府追及の花形という共通点がある。10日の服装もどちらもダークスーツに赤系のネクタイで、政治路線以外は似た者同士ともみえる。

大平元首相が遠縁の「八方美人の目立ちたがり屋」

ただ、ただ首相をトップとする現在の自民党のリーダー達をみると、玉木、大串両氏のような「東大・大蔵省」という典型的なエリートは1人もいない。東大・大蔵省の自民党首相は四半世紀前の故宮沢喜一元首相まで遡る。岸田文雄政調会長や石破茂元地方創生相のポスト安倍有力候補だけでなく、「次の次」の呼び声も高い小泉進次郎党筆頭幹事長も東大卒ではない。

いわば、希望の党は学歴からみたリーダー選びでは「3周遅れ」(自民幹部)とみえる。玉木新体制での幹事長候補に取りざたされる古川元久元国家戦略担当相(51)も同じ東大・大蔵省出身で、「ひ弱い受験エリートばかりでは、猛者ぞろいの自民党にはとても対抗できない」(民進党長老)との声も広がる。

そもそも、今回の共同代表選では投票権もなかった前原氏だけでなく、細野、長島両氏ら「本来のリーダー候補」の出番がなかった。希望の党結党とその後の失速・衆院選敗北の責任を取る形で前面に出られなかったためで、48歳と若い玉木氏にとって、人事も含めた今後の党運営は「大舅、小舅に手足を抑えられた傀儡執行部」にもなりかねない。

イケメンでスマートな玉木氏は選挙区でも女性票に支えられて小選挙区で勝ち上がってきたとされる。地元香川県出身の故大平正芳元首相の遠縁とされ、2009年の初当選時には、同元首相の孫娘が秘書として支えた経緯もあり、自民党の「保守本流」の系譜につながる政治家でもある。民進党初代代表の岡田克也元外相の辞任に伴う昨年9月の代表選に立候補し、民進党の若手の顔としてテレビ出演の回数も群を抜いていた玉木氏だが、永田町では「八方美人の目立ちたがり屋」(立憲民主党幹部)と揶揄する向きも少なくない。

その民進党代表選での蓮舫氏、前原氏との三つ巴の戦いの際、3候補揃い踏みの地方演説会で感極まって落涙し、蓮舫氏から「男なら泣くな」とたしなめられた過去もある。政策や政治理念では「自民党そのもの」とみえる小池代表との共通項も多く、共同代表選後の記者会見でも「できるだけ早く(小池氏と)会って、コミュニケーションを深めていきたい」と語り、都政に専念する小池氏も「若い48歳の玉木氏が代表に決まってよかった。みんなでしっかりフォローしてもらいたい」と息子を見守るような笑顔でコメントした。

ただ、「さわやかさが売り物の玉木氏では、女勝負師と呼ばれるしたたかな小池氏にとても対抗できない」(希望幹部)との声も多く、国政の指揮官となる共同代表として「いかに"小池離れ"をアピールできるか」(同)が当面の課題であることは間違いない。

今後の特別国会での与野党論戦の目玉ともなる「加計学園疑惑」に絡む愛媛県今治市の同学園獣医学部新設問題で文科省の大学設置審議会が9日付けで、「認可が適当」とする答申を林芳正文科相に提出した。来週早々にも政府としての正式認可が決まり、国会での文部科学委員会の集中審議も実施される。隣県の香川を選挙区とする玉木氏は獣医師連盟から献金を受けていたこともあるだけに、首相攻撃も含めて、さっそく国会運営での手腕や力量も問われることになる。

「アウフヘーベン」で結束を保てるのか?

9日に発表された今年の流行語大賞候補(30)の中に政治絡みでは「忖度」「ち〜が〜う〜だ〜ろ〜」と並んで「アウフヘーベン」がリストアップされたが、なぜか今回衆院選の最大のキーワードだった「排除」は外された。どちらも小池氏の発した言葉で、「アウフヘーベン」は希望の党の結党会見で飛び出し、永田町に「???」の渦を広げた経緯もある。本来の意味は「あるものを否定しつつも、より高次の統一の段階で生かし、保存すること」とされる。

識者が「コッペパンと焼きそばの合体が、すっかり定番となった焼きそばパン」と例えるように、小池氏の「勘と度胸」と玉木氏の「理論と弁舌」を「アウフヘーベン」すれば政権交代も夢ではないということにもなるが、その前に「排除」で亀裂が生じた希望の党の「結束を保てるかどうか」が小池・玉木新体制の直面する難題となりそうだ。