「ジャパネットたかた」を日本有数の大企業に育て上げたように、眦勅卍垢歪杭蠅ら新たなJクラブの形を提示する。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 Jクラブには、親会社とのしがらみに苦しむ社長がいれば、天下りのような形で無難に任期をやり過ごすトップもいる。そんななか、ビジネスの世界で辣腕をふるってきた叩き上げは異色で、日本のプロサッカー界に新風を吹き込んでくれるかもしれない。
 
 郄田明社長自身は、どんなところにポイントを見出しているのだろうか。
 
「時代は変わりました。ネット社会、グローバル化が進んで、秒単位で情報が世界中を駆け回る時代です。そのなかで、スポーツでもビジネスでも、求められているのはサプライズでしょう。昔は1年に1回で良かったものが、いまは随時お客さんに提供していく時代になりました。私は“能”の創始者である世阿弥が好きなんです。600年近く前に彼は、その後の能を発展させるために、『秘すれば花』という言葉を残した。一度世に出したものは、秘ではないから花にはなれない。新しい秘密の花を出しいかなければいけないんです。いろんな方の意見を聞きながら、私も新たなスタイルやサプライズを提供していきたいです」
 
 とはいえ、クラブ経営は一朝一夕で軌道に乗せられるほど生半可なものではない。当然、厳しさも理解している。
 
「長崎県内でのサッカーに対する注目度は正直、高いとはいえません。まずはV・ファーレンをちゃんと知ってもらわないといけないんです。そこについては投資をします。テレビの1時間番組を作ってもらうなど、メディアにも協力してもらいながら、大々的に進めていますよ。V・ファーレンは長崎のチームなんだと思ってもらわないと。県にひとつですからね。県全体で応援してもらいたいというのはあります」
 
 現在はジャパネットホールディングスが100%出資しており、屋台骨となっている。だがそれに頼るばかりなら未来はない、と考えている。
 
「倒産会社に近かったわけで、現在も貧乏所帯ですから、ぜんぜんお金はないですよ。とはいっても、ジャパネットに助けてもらっているのが常態化してはいけない。経営が安定化しても、ジャパネットのクラブであり続ければ、県の一体感は生まれません。ほかのスポンサーや後援会を巻き込んで一体になれるからこそ、県のクラブだという意識も強くなっていく。どういう資本を投入して安定するかはクラブによって違うと思いますが、私はそうした考えの下でやっています。役割はまさしく、トップセールスですよ」
 
 改革は急ピッチで進められている。
 
 クラブスタッフは幅広く一般公募して新規採用し、旧体制からの人材を含めて陣容の変化も施した。同時にアカデミーやスクールの強化に着手し、環境改善への投資もスタート。それまで資金を投下できなかったスポーツドクターやメンタルトレーナーの招聘、エアウィーブ社(寝具による疲労回復)と睡眠サポーター契約、さらには元陸上の五輪メダリストである為末大さんとのフィジカルアドバイザー契約など、多岐に渡る。
 
「前の体制から、すべてを変えたわけではありません。すべてがダメなわけじゃなかったですからね。残すべきものは残します。残す、捨てる、加える。この3つ。経営の立て直しはその感覚でやっています。正直、人間関係をどうのこうの言っていてもなにもはじまらない。社員はいま、25〜6名のメンバーでやっていますが、1日1日強くなっていると実感していますし、気持ちのなかで一枚岩になれてきたかなと思います。こう見えて、けっこう厳しい社長なんです。求めることも多い。よく言っているのは、一流のひとになろうと。一流のクラブを作るには、一流のひとにならなければならない。クラブの合言葉ですね。なにを変えれば一流になれるのかを考えようということ。少しは優しいところもありますけどね(笑)」