“王国”ブラジルと日本代表 過去11戦未勝利の歴史と「世界最強」に挑む意義

写真拡大 (全3枚)

ブラジルが90分間フルパワーで戦った試合は、一つもない

 11月10日にリールで行われるブラジル戦は、日本にとって11度目の対戦となる。

 1989年7月にリオデジャネイロで実現した初対戦を除く10試合は、すべて現場で取材をしてきた。

 過去の対戦結果は以下の通りだ。

[1]89年7月23日/親善試合

ブラジル 1-0 日本

[2]95年6月6日/親善試合

ブラジル 3-0 日本

[3]95年8月9日/親善試合

日本 1-5 ブラジル

[4]97年8月13日/親善試合

日本 0-3 ブラジル

[5]99年3月31日/親善試合

日本 0-2 ブラジル

[6]01年6月4日/コンフェデ杯

ブラジル 0-0 日本

[7]05年6月22日/コンフェデ杯

日本 2-2 ブラジル

[8]06年6月22日/W杯

日本 1-4 ブラジル

[9]12年10月16日/親善試合

日本 0-4 ブラジル

[10]13年6月15日/コンフェデ杯

ブラジル 3-0 日本

[11]14年10月14日/親善試合

日本 0-4 ブラジル

[日本から見た通算対戦成績]

0勝2分9敗/4得点31失点

 95年6月の対戦は、大げさでなく度肝を抜かれた。若きロベルト・カルロスのパワーは凄まじく、すでにJリーグでプレーしていたジーニョはセレソンでは別人で、背番号10を着けたジュニーニョは異次元の領域にあると感じられた。GK小島伸幸の活躍が印象的だったのは、それだけ押し込まれたからに他ならない。ブラジルが漏れなく決定機を生かしていれば、悲劇的なスコアになっていただろう。日本もゴールチャンスを作り出したものの、その状況に慌ててしまう選手のメンタルが透けて見えたものである。

日本が追いすがった05年コンフェデ杯

 その後の対戦も、日本にとっては世界のトップ・オブ・トップを体感できる貴重な機会だが、ブラジルが90分にわたってフルパワーで戦った試合は、率直に言って一つもない。

 初めて敗戦を逃れた01年のコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)は、ブラジルが1.5軍の陣容だった。両チームともに引き分けで準決勝へ進出できるため、ゲームの熱量も高くなかった。

 様子が違ったのは、05年のコンフェデ杯である。日本、ブラジルともに1勝1敗で迎えたグループリーグ最終戦は、勝者がグループ2位を確保する。ブラジルは引き分けでも得失点差で上回るが、彼らにとって「負ければ失うもののある戦い」が、7度目の対戦でついに実現した。

 果たして、スリリングな攻防が繰り広げられていく。前半10分、ロナウジーニョのドリブル突破からロビーニョが先制点を奪う。同27分、中村俊輔がペナルティーエリア外から左足シュートを突き刺す。同39分、至近距離からロナウジーニョの放ったシュートが、GK川口能活の右手を弾いてネットに吸い込まれる。

ドイツW杯以降は90年代の構図に逆戻り

 後半は決定機の応酬となる。日本は川口の好守で3点目を許さず、最後までブラジルに追いすがる。そして後半43分だった。中村の直接FKが右ポストを叩き、跳ね返りを大黒将志が蹴り込む。さらにアディショナルタイム、右サイドからのクロスを大黒が至近距離から狙うが──終了のホイッスルが鳴ると、日本の選手たちは天を仰いだ。2-2のドローに終わり、ブラジル撃破とはならなかった。

 ジーコ率いる日本は、この一戦で翌年のワールドカップ(W杯)への手ごたえをつかんだ。一方のブラジルは、気持ちを引き締めた。その結果が、ドイツW杯での完敗だった。

 ここから先は、90年代の対戦の構図に逆戻りする。日本にとっては自分たちの現在地をはかる機会でも、ブラジルのスタンスは紛れもない“親善試合”だ。それでも、12年10月には中立地ポーランドで敗れた。力の差は明らかだった。

 だからだろうか、翌年のコンフェデ杯で実現した真剣勝負に、日本は怯んでしまった。直接的な原因は、開始3分にネイマールに許した先制弾だった。エースのゴールにスタジアムは沸き上がり、日本はアウェーの雰囲気に呑まれていく。

 0-3の完敗である。キャプテンの長谷部誠は、「自分たちがトライできなかった。トライしなかった」と、消極的な姿勢を悔やんだ。

4-3-3は世界基準の一戦で通用するのか

 “プレW杯”の意味を持つコンフェデ杯を除けば、W杯前年のこの時期に対戦するのは今回が初めてだ。日本は14日にベルギーと、ブラジルは同日にイングランドとのテストマッチを控えるが、この試合を含めた強化の位置づけだろう。次の活動が来年3月になることを考えれば、どちらも無駄な時間を過ごすことはできない。

 勝敗を予想すれば、誰もがブラジルを推すだろう。だからこそ、日本にはトライをしてほしいし、しなければならない。

 アジア最終予選突破を後押しした4-3-3のシステムは、世界基準でも機能するのか。ブラジルの攻撃に耐え、ブラジルの守備を打ち破れるのか。現時点での力を出し切ることで、ロシアW杯の可能性をはかることができる。

【了】

戸塚 啓●文 text by Kei Totsuka

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images