パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている長澤ゆかりさん(仮名・24歳)にお話を伺いました。とろみ素材の白シャツを、ハイウエストの薄ピンク色のフレアスカートにウエストインした着こなしは、清楚系OLという雰囲気。メイクも、流行を追うような奇抜な色づかいではなく、シンプルなナチュラルメイクに、縁のあるコンタクトで黒目を強調した目元からは、愛らしい印象を受けます。理想のイメージは、女性誌などで見かける「愛されOL」だと言います。

「本当は、モバイルアプリを開発している企業やwebコンテンツサービスの会社に入社したかったんです」

現在は、派遣でインターネットを中心とした広告代理店で事務の仕事をしています。

「すごくいい職場なんですけど、期間限定なので来年の4月までなんですよ。また仕事を探さなきゃならないのが面倒くさくて」

会話の途中でも、ずっとスマホの画面が気になってチラ見をしたり、触ったりと落ち着かない様子が見受けられます。

「最近、ちょっと炎上しちゃったんです。ネットで見つけた画像を勝手に使って、自分が買った物のように紹介しちゃったんです。そうしたら、画像のアップ主の友人に見つかっちゃって、謝りました」

見た目はどこにでもいそうなごく普通の20代の女性という雰囲気ですが、会話の途中で別の話をしだすところや、鞄から取り出したメイクポーチなどを、ガサツにテーブルに置くしぐさなど、好感度の高いOLというよりは、思い付きでなんでも行動しているような印象を受けました。

彼女は埼玉県上尾市出身。会社員の父と、飲食店勤務の母、4歳年下の弟の4人家族で育ちました。

「両親がともに埼玉出身なのですが、私が生まれた頃に家を買っちゃったんですよ。それで、もうどこにも引っ越せなくて。本当は、東京暮らしがよかったです」

派遣社員として働いているので、勤務先はある程度選べますが、遠くても都内にある企業を希望しています。

「お父さんは、今も都内まで1時間半かけて通勤しています。私も実家暮らしなので、1時間以上かけて職場まで通勤しています。派遣は交通費が出ないので、定期代が痛いんですよ」

“東京への憧れが強い”というゆかりさん。中学では特に塾通いなどもせず、そのままの学力で進学ができる地元の高校を希望します。

「高校は、中学でも普通に勉強していれば入れるくらいのレベルのところです。倍率も1.2倍くらいだったし、同じ中学から進学する人が多い高校に入学したので、中学の延長っぽかったです」

就活のストレスから、SNSで嘘をつくように…

大学進学の理由は、“なんとなく”だったと言います。

「普通は高2くらいで進路って決めるものかもしれないですが、将来なりたいものとかも特になくて。動物が好きだったから、トリマーがいいかなって思ったり。結局、大学に進学したので、トリマーにはならなかったです」

彼女が通っていた高校は、大学進学率は2割程度でした。

「急に親が“高校出たらどうするの?”って言いだして。今から勉強しても間に合わないから、無理だよって言ったら、“推薦で行けるところにいけば”って勧められて」

特に受験対策はせず、推薦で受けられるところに絞りました。

「成績は、推薦に応募できる3.5ぎりぎりくらい。内申書も特に、部活も課外活動も頑張っていないから、“頑張ります”みたいなことしか書いていなかったので、落ちるかもって心配だったのですが、なんとか推薦で受かりました」

彼女は都内にある4年制大学の文学部に進学します。

「大学は思っていた以上に、忙しかったですね。出席もきちんととるし、試験もあるし。学力が足りなくて、補講も受けました」

高校時代とは違い、就活は早い時期から始めましたが、4年生になっても内定が貰えませんでした。

「親が、大卒だと就職に有利だと思っていたみたいでしたが、周りもフリーターになる子とか、派遣とか非正規雇用が多かったです」

“このまま無職になるのでは”という不安から、この頃からSNSに嘘を書くようになってしまいます。

「先に就職をしている友人と会うと、“大学生って暇でしょ”とか言われて悔しくて。その頃から、実際に行っていないカフェとかの画像をSNSにあげたりしていましたね」

実際に彼女からは“どんな仕事がやりたいか”という明確な意思は、感じられませんでした。

「働くって、よくイメージがわかなくて。普段自分が使っているようなスマホのゲームとか、アプリの会社にエントリーしたんですけど、全然書類すら通らなくて。先輩社員とかの写真を見たら、チャラい人いっぱいいるから誰でも入れると思ったのに」

失業保険目当てで退職。IT企業に派遣されるのが目標……その2に続きます。

ゆかりさんは、SNSの投稿にいいね!がつくと通知が届く設定にしている。