【ライターコラムfrom千葉】進化を遂げたキム・ボムヨン、史上最高の“キレキレダンス”を披露するために

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 明治安田生命J2リーグ第40節・FC町田ゼルビアとの一戦を2−1で制し、2015年以来となる5連勝を達成。ジェフユナイテッド市原・千葉がJ1昇格プレーオフ進出に向けて望みをつないだ。

 試合終了後にメンバーは、ゴール裏のサポーターの下へ挨拶に行くのだが、そこでラインダンスをする際、チームのムードメーカーであるキム・ボムヨンが仲間から一歩、二歩、三歩と離れキレキレのオリジナルダンスを披露するのが勝利後の名物となっている。

「(ダンスは)実は苦手(笑)。とっさに考えています。サポーターに飽きられないようにしていてプレッシャーもあります。僕個人にとっては試合の延長戦です(大笑)。試合以外の部分で面白いと口伝えに広がり(千葉の試合を)見に行きたいと思う人が増えればいいと思っています」

 今季、清水エスパルスから期限付き移籍でチームに加入すると、今までの千葉にはなかったようなキャラクターでムードを明るくするなど、日ごろからチームメイトにジョークやちょっかいを出しては積極的にコミュニケーションを図り「どこでも仲良く出来るのが僕の能力」と早くからチームに溶け込む。

 ここまで34試合に出場しているキム・ボムヨンだが、「マルセロ(レアル・マドリード)のプレーが好き」と言うように元々は左サイドを主戦場として戦ってきた。今季はその大半をセンターバックという未経験のポジションでプレーしている。チームが『ハイライン』という戦術を採ることでラインの上げ下げに注力。経験が物を言うポジションとされる中で練習から必死に取り組み、フアン・エスナイデル監督からは熱く厳しい指導を受けながら経験を積み重ね成長を続けている。

「彼はスピードがあり、ビルドアップも出来る、アグレッシブに行ける、センターバックに必要な3要素が揃っている。しかも僕のスタイルに合っている。まだまだ成長できる。あとは90分間、集中することと判断が大事」(エスナイデル監督)

 荒削りでまだまだ軽いプレーも見られるが、“パスとクリアー”の状況判断を改善しつつ、最後尾からゲームの流れを読む力も備えると、ボール奪取のタイミング、DFとしての優先事項を身に付けてきた。

「監督が僕を信じて使ってくれているので、もっと質の高いセンターバックになれるように頑張りたいです。1試合終わると、いろいろと考えなければいけないことが生まれるので、そこをもうちょっと修正しながら練習したいです」

 それまでの縦への勢いに乗ったドリブルでボールを運ぶイメージを払拭した。Jリーグにきて、選手として一番変わったシーズンだった。「シンプルなプレーを心掛けている」と、言うように、守備でチームの勝利に貢献できる選手に変貌を遂げ、常にベストを選択し、バタバタせずに落ち着いてプレーをする安定感が加わった。

 特にホームでの第28節・湘南ベルマーレ戦では、CKから失点し0−1で千葉が敗れたものの、相手をシュート2本に抑えたことで大きな自信を手に入れた。「リーグ優勝をした相手にいい試合ができたと思っています。DFとしてセットプレーからの失点はもったいなかったのですが、個人としてはベストを出せて頑張れた試合。ミスもなく、ジネイ選手やムルジャ選手を相手にドゥ(近藤直也)さんと上手く抑えることが出来たと思っています」と言葉に力を込めた。

 責任のあるポジションだからこそ、コツコツと結果を積み重ね信頼を勝ち取るしかない。

 ピッチでキム・ボムヨンの成長を見守ってきた近藤は言う。

「ボムはボールを持つ時間が短くなりましたし、シンプルなプレーが増えました。(ボールを)持って考えて、結局、中を狙って取られるイメージでしたが変わってきました。セカンドボールへの対応でもしっかりと動けています」

 6位・徳島ヴォルティスとの勝ち点差は『2』。9位の千葉にとって他チームの勝敗状況で道を断たれることもあるが、残り2試合での逆転は決して不可能ではない。

 置かれている状況は非常に厳しいことに変わりはないだろう。ただ、はっきりしているのは“勝つだけ”だ。試合の内容も重要だが、最後は気持ちの強さが大事になる。

「僕がセンターバックでプレーをすることで試合に出られない選手がいます。その分までやらなければいけない。何でもないプレーでも集中することを大切にしたい。そして攻撃陣を信じて頑張って守っていれば得点は生まれると思います。それを信じて後ろは責任のあるプレーをしたいです」と、やんちゃな笑顔の奥に強い意志が宿っているのが見えた。

 進境著しいセンターバックが確固たる覚悟と多くの人の想いを抱えながらピッチに立つ。

 今節、敵地での名古屋グランパス戦に勝利し、リーグ最終節となる19日のホーム・横浜FC戦では、勝ち点3とプレーオフ進出を祝う“史上最高のキレキレダンス”が披露されることに期待したい。

文=石田達也