アップル公式動画より

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 米アップルが発売した新型スマートフォン「iPhone(アイフォーン)X(テン)」の売れ行きは、電子部品メーカー各社も大きな関心を寄せる。有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーや顔認証モジュールの採用により、高機能部品の需要が増加しており、各社の収益に好影響を与えている。一方で足元では市場全体の成長が鈍化しており、先行きに不透明感が漂う。アイフォーンXなど新型スマホの需要次第では各社の業績が大きく変動するだけに、固唾(かたず)を飲んで見守っている。

 電子部品各社はスマホ市場の成長とともに主力のスマホ向けビジネスを拡大してきた。特にアップルとは歩調を合わせて技術革新を進め、その期待に応えてきた。近年はアップルに依存した体質からの脱却を進めているが、現在でも新型機種の売れ行きは各社のビジネスに多大な影響を及ぼしている。

 実際、電子部品主要6社の2017年4―9月期連結決算は4社が増収、営業増益となった。特に、カメラアクチュエーターのシェアで8割を持つアルプス電気は、カメラ搭載数の増加で好調を維持。下期に向けて業績が上振れる可能性もある。すでに生産の平準化に向け、第2四半期に生産の前倒しを実施した。TDKも二次電池や受動部品などが好調に推移する。

 ただ今後については、不安視する声もある。一部の部品の供給が遅れたことで、他の部品の納入時期も後ろ倒しになっており「部品の出荷数に影響する恐れがある」(電子部品メーカー幹部)と警戒する。

 好業績ながら、各社が新型機種の販売・生産動向に敏感になるのは、過去の苦い経験があるためだ。15年は9月までスマホ需要が旺盛だったものの、当時の新型機種の販売が想定よりも下回り、アップルが10月ごろから在庫調整を実施。この影響を受けて大幅な減収を余儀なくされた。「電子部品各社は、当時の悪夢が脳裏に焼き付いているのかもしれない」(外資系アナリスト)と指摘する。

 市場が伸び悩んでいるのも懸念材料だ。中国市場ではスマホの販売が鈍化し、本格的な回復に至っていない。村田製作所の村田恒夫会長兼社長は「中国の回復が鈍い」と不安を漏らす。4月からの在庫調整は収まっているものの、年末・旧正月商戦に向けた需要は「過剰に期待できない」(石黒成直TDK社長)という。

 技術的な課題もある。村田製作所は、柔軟に折り曲げられる樹脂多層基板「メトロサーク」を供給するが、難易度が高いため、不良品比率の改善が遅れているという。

 村田会長兼社長は「(ロットの)サイズを大きくして生産性を上げようとしたが、そこでつまずいた」と打ち明ける。富山村田製作所(富山市)で工場を新設するなど、多額の生産設備を投入したが、期待通りの稼働率に及ばなかった。アップルからの要求レベルが高いだけに、こうした技術的なリスクは各社に共通する。

 アイフォーンXの発売により、ディスプレーやセキュリティーに関する技術的なロードマップは示された。こうした新たなテクノロジーに対し多くの消費者が受け入れるようになると、中国スマホメーカーなども追随するとみられ、日本の電子部品各社にとっても商機が広がる。

(文=渡辺光太、京都・園尾雅之)