ハリルホジッチも「スーパーな試合」と称賛した準決勝の浦和レッズ。決勝ではアル・ヒラル(サウジアラビア)と対戦

写真拡大

浦和ファン、サッカーファンならずともスカッとする勝利だった。アジアクラブ王者を決めるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝、桁違いの資金力を誇る中国の上海上港を、浦和レッズが撃破! 

ここ数年、中国、韓国勢の前に苦杯をなめ続けてきたJリーグ勢にとって、いよいよ悲願の優勝が見えてきた。応援すべし!

■個人技頼みの相手を組織の力でねじ伏せた

浦和レッズが、ACL準決勝で上海上港を相手に会心の勝利を収めた。

上海上港は、“爆買い”で知られる中国勢の中でも1、2を争う資金力を誇るクラブ。いずれも元ブラジル代表アタッカーのエウケソンを約25億円で、フッキを約64億円で、オスカルを約74億円で獲得しただけでなく、監督にはチェルシーやトッテナムなどで指揮を執ったビラス・ボアスを招聘。中国人選手にしても、代表クラスがズラリとそろう。

そんな金満クラブを相手に、浦和はアウェーの第1戦(9月27日)を1−1のドローに持ち込むと、迎えた10月18日、埼玉スタジアムで天下分け目の第2戦に臨んだ。

彼らはいかに戦ったのか? 日刊スポーツのサッカー担当、鎌田直秀記者が言う。

「浦和の選手は全員、守備面での意識が統一されていました。プレスをかけられるときは前から積極的にチャージし、自軍FWが敵陣深くまで攻めた後や、相手が前がかりになって迫ってきたときは、後ろでブロックをつくってがっちりとはね返す。その切り替えが的確で絶妙でしたね」

それだけではない。個の戦いでも凌駕(りょうが)したのだ。これまで日本選手は、身体能力で勝る相手にドリブルで仕掛けられたり、ヨーイドンの速さ競争になったり、体のぶつけ合いになったりすると太刀打ちできないというのが相場だった。しかし、上海上港戦での浦和は、元セレソンたちを向こうに回しても1対1でまず負けなかったのである。

「フッキなどは最初、しきりに中央突破を試みましたが守りが堅くてこじ開けられず、途中から右へ流れるようになりました。しかし、そこにはDF槙野智章が立ちはだかり、体を張って侵入を許さなかったのです」(鎌田氏)

浦和は前半11分にコーナーキックからラファエル・シルバがヘディングシュートを決めると、90分を通じて上海上港ゴールを脅かし続けた。逆に相手にはほぼ決定機をつくらせず、そのまま1−0で完封。2戦合計で2−1として、クラブとしては10年ぶり、日本勢としては9年ぶりの決勝進出を決めた。

「観戦していた日本代表のハリルホジッチ監督は試合終了後、『浦和は守備のハードワークが素晴らしかった。槙野も阿部(勇樹)も遠藤(航)もデュエルでほぼ勝っていたし、興梠慎三と武藤雄樹の守備の貢献もスゴかった』と大絶賛でした」(鎌田氏)

今回の浦和の勝利の意義は、ただ単に日本チームが久々にACL決勝までたどり着いたというだけではない。それは日本サッカーの“今”の、鮮やかな象徴でもあったのだ。サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が語る。

「上海上港はビラス・ボアス監督の手腕で、中国勢としては選手の動きに規律がありました。しかし基本的には、圧倒的な能力を持つ3人のブラジル人に頼り切りの、個の力で戦っている集団。だからキーマンさえ抑えたら、何もできなくなってしまいます。

一方、浦和は選手個々も非常に頑張りましたが、上海上港をはるかに上回る組織力をベースに戦い、相手をねじ伏せました。やはり、サッカーで一番大事なのは組織。戦力的な差がある相手でも、自分たちがチームとして戦えれば対抗できるんですよ」

もちろん日本サッカーは、個の育成をないがしろにして組織戦術に逃げているわけではない。

「トップクラスの選手が欧州へ流出している日本に対し、中国勢は代表組のほとんどが国内にとどまっている。にも関わらず、浦和をはじめACLに出ているJリーグチームの日本人選手と、中国勢の中国人選手の能力を比べると、明らかに日本人選手のほうが上回っています。

それはつまり、日本では若い選手が次々に育っているということ。選手の育成に大事なのは、長期的なプランに基づいたサッカー協会やクラブなどの地道な努力であって、世界的な大物とされる外国人選手や指揮官をかき集めれば自国の選手が勝手に育つというものではないのです」(後藤氏)

■アル・ヒラル戦でカギを握る選手

そんな組織と個が融合した浦和がACL決勝(11月18日、25日)で激突するのは、サウジアラビアのアル・ヒラルだ。準決勝ではペルセポリス(イラン)を2戦合計6−2で下した攻撃力が売り物で、元アルゼンチン代表のエースFWであり、Jリーグの初代得点王にもなったラモン・ディアスが監督を務める。

そんな難敵との試合でカギを握りそうな浦和の選手は、ズバリ誰か?

「私は興梠慎三とみます。現在Jリーグ得点ランクでトップを走っていて、しかもACLにおける日本人通算最多得点者。その彼がどれほど通用するかで、今の浦和とJリーグのアジアでの立ち位置が計れるのでは?」(鎌田氏)

「攻撃では柏木陽介。彼が繰り出す変化のあるパスは、中東のチームに対して非常に有効でしょうね。守備ではマウリシオでしょうか(警告累積で第1戦は出場停止)。とにかく安定感が抜群。彼と阿部が上海上港戦のように最終ラインの中央で頑張れば、そう点は取られないはずです。そして攻守にわたって献身的にアップダウンを繰り返す武藤雄樹も、忘れてはならない存在。

もし高い組織力を誇る浦和が優勝できれば、カウンターやデュエルが必要以上に評価されつつある昨今の日本のサッカーメディアやファンの間の風潮にくぎを刺し、やはり日本人は集団で戦うプレーに磨きをかけるべきだというメッセージになるでしょう。楽しみですね」(後藤氏)

クラブの名誉のみならず、日本サッカーの未来をも背負って戦え! そして必ず勝ってくれ、浦和レッズ!