広島空港の運用時間延長で羽田行きの最終便が1時間以上繰り下がり、新幹線との「最終便競争」が激化している(筆者撮影)

東京―広島間の移動は、新幹線と飛行機のどちらを利用するかで迷う人も多いだろう。現在、両都市間の移動手段で新幹線と飛行機の比率は半々となっているが、夜に広島から東京へ向かう場合、従来は最も遅くまで広島市内に滞在できるのは新幹線だった。

しかし、その状況が変わった。10月29日から広島空港がこれまで7時半〜21時半だった運用時間を1時間延長し、22時半まで利用可能となったためだ。広島―東京間で、新幹線vs.飛行機の「最終便」競争が激化している。

最終は飛行機のほうが遅くなった

広島空港の運用時間延長に合わせ、ANAは羽田―広島線を1便増便した。広島発21時35分の羽田行き(ANA690便)が新設され(羽田23時00分着)、20時35分発だった従来の最終便よりも1時間繰り下がったのだ。このANA690便に間に合う空港行きリムジンバスの最終便は、広島駅新幹線口を20時15分に出発する。

従来の最終便には19時20分発のバスでないと間に合わず、広島駅を20時01分に発車する東海道・山陽新幹線の東京行き最終列車「のぞみ64号」より約40分早く出なければならなかった。だが、現在は14分だけではあるが、新幹線よりも飛行機利用のほうが遅くまで広島市内に滞在できるようになったのだ。


広島発東京行きの新幹線最終列車は20時01分発の「のぞみ64号」だ(筆者撮影)

だが新幹線も負けていない。広島駅20時01分発の東京行き最終列車「のぞみ64号」は、新横浜駅に23時27分、品川駅に23時38分、終点の東京駅には23時45分に到着するが、実は日中時間帯の「のぞみ」よりも乗車時間が短いのだ。

これは、通過駅での追い越しなどが少ないために高速で運転される区間が続くからであり、広島から新横浜まで3時間26分、品川まで3時間37分、東京まで3時間44分で到着する。通常は広島から東京駅まで4時間近くかかるが、最終列車は昼間より短い乗車時間で東京駅に到着できる。

速く便利な「のぞみ64号」だが、東京行きの最終列車だけあって広島駅だけでなく岡山、新神戸、新大阪、京都、名古屋の各停車駅からの乗車も多く、基本的に車内は混雑している。平日でも満席になる日もあるので、利用する場合は早めに予約をしておくのが賢明だ。筆者が広島を訪れた際にも、「のぞみ64号」は広島駅発車直前の段階で新大阪駅までは空席が多くあるものの、東京駅までは残席がわずかになっていた。

飛行機も新幹線もほぼ同時着

飛行機を利用した場合、広島発羽田行き最終便のANA690便は23時00分に羽田空港に到着する。空港から都心へ移動する時間を考えると、「のぞみ64号」とほぼ同じ時間帯の到着といってもいいだろう。


広島空港に到着したリムジンバス。広島駅からは約50分かかる(筆者撮影)

一方、市街地にある駅に乗り入れる新幹線と比べ、飛行機は市内と空港間のアクセスに時間を要する。多くの人が感じていることであろうが、広島空港は広島駅や広島バスセンターのある紙屋町など市内中心部からの距離が離れており、リムジンバス利用で広島駅から空港までは約50分かかる。筆者が広島駅20時15分発のバスに乗車したときは、ANA690便が出発する30分前の21時04分に広島空港に到着した。広島バスセンターから空港までは約1時間かかり、最終便に間に合うためのバスは19時58分発となっている。

ただ、広島―羽田間のフライト時間は1時間25分で、新幹線の乗車時間と比べると半分以下のため、長い時間新幹線の車内にいるよりは飛行機移動のほうが楽だという人も多い。


ANA690便は羽田空港に23時着。羽田からは首都圏各地へのリムジンバスが充実している(筆者撮影)

また、最近では羽田空港から首都圏各地へのリムジンバスが充実している点も、飛行機利用のメリットとなっている。リムジンバスは確実に着席できることから、空港からのバス利用も含めて飛行機を選ぶ人も多い。羽田空港は駐車場が充実していることから、荷物が多いときなどは車の利用が便利な飛行機を使うという人も一定数いる。

ANA690便も利用者は多く、筆者が利用した際も搭乗率は9割近くだった。定刻どおりに出発したこともあり、羽田空港には22時50分にスポットに入り、23時過ぎには到着ロビーに出ることができた。

運賃も購入時期を選べば大差ない

東京都心への到着時間ではそれほどの差がない飛行機と新幹線だが、気になるのは運賃だ。

飛行機(ANA690便)の場合は、前日まで購入可能な特定便割引運賃「特割」を使い、筆者は土曜日の便を1万5790円で購入できた。単身赴任者の利用が多い金曜日や旅行者が多い日曜日は料金が上がる場合もあるが、ほかの便に比べると割安な運賃設定となっており、平日は1万6190円で買える日が多かった。もし、1カ月以上前に予定が確定できるのであれば、事前購入型割引運賃「旅割」を使うことで、1万1000円〜1万4000円程度で買うことができる。

ただし、飛行機利用の場合には、これに加えて空港までの交通費が別途必要となる。広島駅―広島空港間のバスは1340円だ。

一方、新幹線利用の場合は、自由席利用で片道1万8040円、指定席利用で1万9080円(「のぞみ」利用の場合)であるが、JR東海・西日本のエクスプレス予約「EX予約サービス」(会員登録・年会費が必要)を使うと1万7660円で、3日前まで購入の割引「EX早特」を使うと平日1万5900円、土休日1万5500円となる。

購入のタイミングにもよるが、運賃の面でも飛行機の最終便と新幹線の最終列車は互角といっていいだろう。

これまでは、広島市内により長く滞在するためには飛行機より新幹線だったが、空港の運用時間延長により、状況に応じて飛行機と新幹線の両方から選ぶことが可能になった。利用者にとっては便利になった「最終便の争い」。どちらを利用しても、19時半ごろまでは市内で広島風お好み焼きなどの広島グルメを満喫したり、仕事の会食に顔を出したりすることはできそうだ。