銀座の地価は、すでに平成バブル期を上回った。 やっぱり今はバブルなのだろうか(写真:gandhi / PIXTA)

 日経平均株価はついに平成バブル崩壊後の高値2万2666円を上回り、11月9日には一時2万3000円も突破しました。東証株価指数(TOPIX)も1991年以来26年ぶりの高値。一部では「日本株はバブルだ」「そろそろ上昇局面は終わる」という声も浮上しています。はたして株価はまだ上昇するのでしょうか。草食投資隊に聞きました。

1989年の「日経平均3万8915円」は余計だった


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中野:10月の日経平均株価は16連騰。11月に入っても日本株は強い、強い。はたして、日本株はバブルなのでしょうか。

渋澤:日経平均が16連騰したとか、20年数年ぶりの水準に達したとか、いろいろ言われますが、私は日経平均株価だけを見て、今の株式市場がバブルかどうかを判断するのは、ナンセンスだと思っています。

日経平均は1989年12月29日に過去最高値をつけたわけですが、当時は、今の株高をリードしているファーストリテイリングも、ソフトバンクも、225銘柄には入っていませんでした。一方で、日経平均は過去最高値を更新していませんが、個別銘柄で見れば現在、株価が過去最高値を更新している企業がたくさんあります。それも新興企業ではなく、資生堂のようなオールド企業の中に、この手の企業がたくさん見られます。それだけ業績が良好だと見ています。

藤野:1990年当時、日経平均の平均PER(株価収益率)は約80倍でした。それが今は約16倍に達するかどうかというところです。仮に、1990年の日経平均株価をPER16倍で換算すると、当時の日経平均株価は大体8000円程度です。この大きなバブルを除いて考えると、今がほぼ2万3000円ですから、日本の株式市場は右肩上がりになっても不思議ではない。要するに、1989年12月29日の3万8915円というバブル高値は、本当に余計なものだったということです。もし、あの余計なバブルさえなかったら、投資はもっと人々の間に根付いていたでしょうね。

中野:藤野さん自身は、今の株高をバブルだと見ていますか。最近、今の株価もそうですし、社会情勢も平成バブルのときと類似しているという声が出ています。たとえば、六本木でタクシーが捕まりにくくなっているとか。

株価は「バブルの入り口」にも差し掛かっていない

藤野:株価に関していえば、バブルの「とば口」(入り口)でさえない、と思っています。今、株価が上がっているのは、企業利益が順調に伸びていることに加え、グローバル低金利が、株価を押し上げていると思います。

今、議論するべきなのは、企業業績がピークなのかどうかということでしょう。当然、企業業績がピークであれば、早晩、株価は下落に転じます。ただ、企業業績に関していえば、これからさらに加速してよくなるのではと思います。米国の企業業績も順調に伸びていますし、それがIT企業のような新業態ではなく、ボーイングやGEといったオールドエコノミー系企業でも顕著に見られるようになってきました。

渋澤:先日の16連騰についていえば、ショートカバーによるものが大きかったと思います。日経平均株価をTOPIXで割って求められる「NT倍率」を見ると、同倍率は低下傾向をたどっていました。

これは市場参加者の中に、ヘッジ売りとか、株価の下落にかけて積極的にショートを仕掛けていた人たちがいることを意味しています。特に、衆院総選挙が行われるのが確実視されるようになってからは、ヘッジファンドを中心にして、ポジションをショートに傾けていたと思います。

これは、自分自身がかつてヘッジファンドにいたときの経験によるものですが、彼らは政権交代、政策変更の可能性が高まったときには、ポジションをショートにする傾向が見られます。10月相場は皆、強気になれず、そのなかでショートポジションを積み上げてきた一部の投資家が、株価上昇による損失拡大に耐えられなくなり、いよいよショートポジションを解消する段階にきて株価を押し上げる、ショートカバーによる株高という側面もあったと思います。

中野:グローバルで見ると、日本株だけが急にひとりで上昇したわけではないことがわかります。年初から各国の株価の値動きを比べると、とにかく日本株だけが出遅れていました。要はグローバルな株高に、日本株がようやく少しだけキャッチアップしたのが、この株高の真相だと思います。

渋澤:世界的に経済は堅調ですしね。

中野:そうです。世界経済は今、好循環サイクルに入っています。中国やブラジルなど新興国の需要が高まってきて、それが先進国の景気にプラスの影響を及ぼしています。南欧諸国の債務危機で苦境に陥っていた欧州経済も、昨年に底を打ち、今は成長サイクルに入っています。それを証拠に、金融についても出口戦略が模索されるようになってきました。今、ECB(欧州中央銀行)の出口戦略は、むしろ景気や株価にとってプラス材料です。

ただ、日本に関しては、まだ出口戦略を採れる状況にはありません。今の金融緩和をやめれば、かなり厳しい状況になるでしょう。消費者物価指数が安定的に年2%上昇するまでは、出口戦略を採ることはできません。米国は金融正常化に向けて金融引き締めを行っている最中で、欧州はこれから出口戦略に向かう局面ですが、それでもまだ高金利というには遠い状況ですから、グローバルに低金利が続いているという認識は、まさしくそのとおりだと思います。

先に崩れるのは、米国のハイテク成長株?

渋澤:実体経済にふさわしい株価上昇ならバブルではありませんが、おそらくユニコーン企業(時価総額10億ドル規模の新興企業)はバブルでしょうね。

中野:実体経済と株価は、必ずしも一致しません。米国の株式市場はこの1年、ハイテク系の成長株が相場を主導してきました。さすがにこの相場は長続きしないと思います。

藤野:投資家別の売買動向を見ると、個人は今、売り一辺倒です。つまり、今の株高局面でも、個人投資家はほとんど儲かっていません。

渋澤:それはデイトレーダーですか。

藤野:いえ。デイトレーダーというよりも、昔から株式投資をしている普通の個人投資家ですね。今、個人投資家は「売りの一手」で、外国人投資家は買いの一手です。

藤野:では、なぜ、個人投資家が売り越しを続けているのか、ということですが、過去30年の日経平均株価は、2万0500円あたりが天井でしたから、過去の経験則で動いている多くの個人投資家は、日経平均株価が2万円に達したところから売りに転じたわけです。

しかも、値上がりした保有銘柄を売却するだけでなく、下がったら儲けが出る空売りまで仕掛けている。そういう個人投資家が多いことから推察すると、マーケットは今、下げてほしいバイアスが非常に強まっていると思います。

でも、残念ながらそういうときほど、株価は下がらないものです。ちなみに、日本株を組み入れて運用している投資信託も、解約増になっていますから、基本的に売り越しです。根本的に相場は予測できないものですが、今が下げにくい環境にあるのは事実です。


企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO、コモンズ投信の渋澤健会長)

大勢の人が焦りだしたらいったん天井に

渋澤:ゴルディロックス相場(適温相場)などといわれますが、でもゴルディロックス相場も最後は崩れます。

藤野:最終的には景気動向でしょうね。景気が壊れれば株価は下がります。でも、長期的に考えれば、また戻りますから、それほど株価下落を恐れる必要はないでしょう。

渋澤:そうですね。長期投資は株価が下がることを前提に考えるくらいでちょうどいいのかもしれません。それに、下げ相場は積立投資をするには絶好のチャンスともいえます。

中野:私は米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格とハイイールド(高利回り)債のリスクプレミアムをつねに注視しています。両者の値動きは基本的に連動しているのですが、今はハイイールド債のリスクプレミアムが上放れした状態です。つまり、ハイイールド債が買われすぎています。これがちょっと怖い。だから、今の株高に対しては、やや警戒感を持って見ています。

渋澤:おそらく、この株価上昇に乗れていない投資家が結構いると思うのです。だからショートカバーで株価が押し上げられている。これで、大勢の投資家が「ああ、もっと株価が上がるかもしれないから、早く買わなきゃ」などと焦ったときが、上昇相場の最終局面なのだと思います。