長い低迷期を経て、営業利益が20年ぶりに過去最高となる見通しのソニー。11月1日に発表された犬型ロボットAIBOの後継機「新型aibo」は先行予約初回分が即完売となるなど、同社の勢いを示すかのような立ち上がりを見せました。はたしてソニーはかつての輝きを取り戻すことができるのでしょうか。世界的プログラマーとして知られる中島聡さんが自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、新型aiboとそのビジネスモデルを徹底分析するとともに、ソニーの行く末を占っています。

私の目に止まった記事

● 新型aiboをソニーが発表。自ら好奇心を持った、生活のパートナーとなる犬型ロボット

aiboは私を含む「往年のソニーファン」にとっては、「私が大好きだった頃のソニー」の代名詞のようなデバイスなので、とても嬉しいニュースです。

戦略的に見ても、「AI+ロボット」という分野は、参入障壁がとても高い分野なので、レッドオーシャンになりにくいし、Amazon、Google、AppleがAIを活用した「スマートスピーカー」市場でしのぎを削る隙に、その一歩も二歩も先に進んでおくという意味でも、高く評価出来ます。

ロボット単体を売るだけのビジネスではなく、月額課金サービス込みでのビジネスという点も高く評価出来ますが、今回発表した値段は高すぎ、普及を妨げると思います。本体価格20万円はまだ良いとしても、月額価格2,980円はどう考えても高すぎます。

WiFiなしの環境でも動くようにLTEの通信機能をつけたためにコストアップしたのでしょうが、それはオプションにすべきだったと思います。LTEなしで月額980円、LTEありで1,480円程度に抑えるべきでしょう。

また、メーカーの保証期間が30日というのも20万円のマシンとしては短すぎます。最低限でも6ヶ月間(理想的には1年間)は無償で修理、それを3年にするのは有料と言うのが正しい形だと思います。20万円で購入したマシンが1ヶ月ほどで故障し、有料で修理中も月額課金を取られるのでは、消費者が怒るばかりです。

多少の事業リスクは覚悟で、保証期間の延長と、月額料金の引き下げをすべきです。スマートスピーカーみたいな後追い製品は辞めて、こちらに資源を集中すべきです。特に日本は、「65歳以上がもっとも貯金を持っている」という特殊な国なので、そこを本気で攻めれば、大きな市場が作れると思います(この製品に関しては、色々とアドバイスしたいことがあるので、連絡をいただければ、喜んでお会いします→aibo担当者の方)。

ソニーは、80年代から90年代は本当に輝いていましたが、2000年代に入ってから少しおかしくなり、2006年に久夛良氏が失脚したあたりから、本当に(外から見ても)つまらない会社になっていました。

その根本の原因がどこにあったのを読み解くのは簡単ではありません。いわゆる文官(文系出身の人)である出井氏がCEOとして、ソニーをソフトウェアやコンテンツで勝負する会社に生まれ変わらせるようとする中、プレステを成功させた技官(理系出身の人)である久夛良氏が力をつけ、本来ならばこの二人がパートナーとなって会社の新しい成長戦略を作らねばならなかったにも関わらず、それが(何らかの原因で)出来なかった、というのが私の理解です。

久夛良氏が暴走してしまった(プレステ用に開発したCELLチップを家電に入れようと莫大な投資をして失敗してしまった)という見方もあれば、出井氏が久夛良氏を使いこなせなかったという見方もありますが、いずれにせよストリンガー氏をCEOに選んだ段階(2005年)ではソニーの企業としての勢いが落ちていたことは事実です。

それに追い討ちをかけたのが、iPhone(2007年)で復活を遂げたAppleと、Samsungの台頭で、ソニーのブランド力が大きく下がってしまいました。

Fordの「The World’s Most Valuable Brands」の2017年度版では、Appleが1位、Samsungが10位、ソニーが73位です。しかし、2011年版だと、Appleは6位、Samsungが圏外(100位以下)、ソニーが22位であり、過去6年間に何が起こったのかを明確に表しています(2007度版が見つかれば、もっと良かったのですが、見つかりませんでした)。

私は今回のaiboの発表には、大きな可能性を感じます。これがきっかけとなり、ソニーが往年のブランド力を取り戻すことも不可能ではないと思います。そのためにも、是非ともaiboをビジネスとして成功させていただきたいと思います。

● ソニー復活で思い起こす、消えた「日本のスティーブ・ジョブズ」

上の記事とも関連しますが、2018年3月期の営業利益の見通しを6,300億円へと大幅に上方修正したソニーに関するダイヤモンド・オンラインのコラムです。

画像センサーへの積極投資で復活を果たした今のソニーを褒めつつ、ソニーが長年低迷していたのは、カリスマ性を持つリーダーがいなかったからであり、「劇薬」である久夛良氏を選ぶべきだったという指摘は、私も同意します。

久夛良氏がスティーブ・ジョブズのような仕事を出来たかどうかは誰にもわかりませんが、少なくともストリンガー氏のように、ソニーを「つまらない会社」にはしなかったと思います。

image by: aiboオフィシャルサイト

MAG2 NEWS