興梠慎三は、日本代表に来る度にシャイな一面を覗かせる。ブラジル戦の前日も、はにかんだ表情を浮かべながら報道陣の前を通り過ぎようとしたが、顔見知りの記者の顔を見かけると、やっと立ち止まって話し始めた。

「(ブラジルは)ハードワークという面ではそこまでじゃないかもしれないけど、なかなかボールを失わなかったり、一番嫌なところに入ってボールを持つのがうまい選手がたくさんいる。ネイマールだけ抑えるんだったら簡単なのかもしれないけど、全員、自由に持たせちゃいけないので、そういう意味では非常に難しいと思います」

2016年7月、U-23日本代表に入ってU-23ブラジル代表と対戦した。強さは身を以て知っている。

「強いですよ。一対一の局面も強かったし、何もできなかった印象があります。A代表はもっと強いと思うので、チームがどこまで通用するのか重要な試合だと思います」

2年2カ月ぶりに復帰。しかもワールドカップのメンバー入りがかかったサバイバルレースの中での招集となった。本人は張り切って臨んでいるのではないか。

ところが興梠は、久しぶりに呼ばれたことの心境の変化は「まったく一緒ですね」、サバイバルレースについては「そうですね。頑張ります」と、はぐらかす。

それでも、心に期すものはあるようだ。

「チームとしてもどこまで通用するか大事な試合だと思うし、個人的にはチャンスをもらえれば結果を残したいと思います」

「たぶん守備に追われることが多いと思うし、チャンスは本当に1回か2回あるかないかだと思います。そこをものにできたらいいと思います」

しっかりゴールを決めるイメージは持っている。そんな決意が言葉の端から漏れてきていた。

【日本蹴球合同会社/森雅史】