今回の欧州遠征で初の日本代表に招集された長澤。ブラジル、ベルギーを相手にいかなるプレーを見せてくれるだろうか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 辞書で“運”という単語を引くと「自分の力ではどうにもならない、よい・悪い成り行き」と出てくる。今回の日本代表の欧州遠征で初選出された浦和MFの長澤和輝にとって、選出の経緯は幾つかの幸運が重なった。
 
 長澤が脚光を浴びたのはACL準決勝・上海上港第2戦。浦和が1-0で勝ち、決勝進出を決めたこの試合を視察したヴァイッド・ハリルホジッチ監督の目に「守備でも攻撃でも運動量豊富な選手」と映り、初の代表招集へとつながった。
 
 この“鶴の一声”が勢いとなったのか、長澤は続くG大阪、広島、鹿島戦とリーグでは3試合連続先発出場。堂々、代表へ合流した。一躍、時の人となった長澤だが、今回の初選出は偶然か、それとも必然なのか。
 
 ひとつ言えるのは、長澤はここ数週間のスパンで急成長を遂げたわけではないということだ。
 
 長澤は昨季、J2のジェフ千葉でプレーしていたが、長年チームのオフィシャルカメラマンを務め、数々の世界の名選手も収めてきた今井恭司さんは長澤について「カメラに撮りづらい選手。(判断が)速く動きも読みづらい」と語った。次の動きを予測しながら、シャッターを切る今井さんならではの、最上級の評価だ。また千葉の選手のなかには、今年も長澤がいればという声もあるという。
 
 いずれにしろ、長澤の粘り強いフィジカルと運動量と正確な技術は、J2時代から異彩を放っていたのだ。
 
 ただ、浦和に復帰した今季、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督のもとではリーグ戦出場はゼロ。練習では不慣れな右センターバックで起用されたこともあった。
 
 その長澤にとって、転機となったのが7月30日、ペトロヴィッチ監督解任と堀孝史監督の就任だ。しかし、新体制発足後すぐにポジションを奪えたわけではない。堀監督は長澤のコンディション、戦術浸透度を見極めたうえで起用。これが功を奏した。
 
「長澤は力のある選手。堀監督の求めるものとマッチングした」(浦和・山道守彦強化本部長)
「出場機会がない時でも、常に成長するという気持ちで努力したことが一番大きい。出場した試合をキッカケに代表に選ばれたが、彼の努力」(堀孝史監督)
「厳しい状況でも努力を重ねて、準備を続けたことは素晴らしい。彼のポテンシャルと準備してきたことが表現され、今回評価された」(同・天野賢一コーチ)
 
 そして、こんな声もある。
「プレースタイルは違うけど、良い選手。まだまだだって? そんなことない。越されている感じ。俺が抜けても大丈夫。どんどん成長してほしい」と語るのは柏木陽介。10番を背負う司令塔までもが、長澤に大きな期待を寄せている。
 
 長澤は雌伏の時を経て、巡ってきたチャンスを確実に活かして代表へと登り詰めた。
 
 しかし、長澤のようにトントン拍子にうまくいくケースばかりではないだろう。一般論だが、いざ出場するチャンスが来たとしても、そこで力を発揮できなければ、元も子もない。そのためには、いつ訪れるか分からない出番に向け、虎視眈々と爪を研ぎ続ける、したたかさ、前向きなメンタリティが必要だ。
 
 長澤は出られない時期をどう向き合ったのか。そのヒントを専修大の先輩で千葉時代のチームメイトである町田也真人はこう語る。
「(長澤は)良い意味でド天然。悪いことは考えない。根っからのサッカー少年。とても純粋ですよ」
 
 悪いことは考えない――。これは根っからの性格か、それともこれまでの経験によるものか。あるいは、その両方なのか。
 
「サッカーは仕事。良い準備をすることが試合に出ていない選手なりの貢献」
 
 長澤和輝が代表入りを引き寄せた理由がここにある。
 
取材・文:佐藤亮太(レッズプレス!!)