薬指と人差し指の比(和歌山県立医科大学の発表資料より)

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自分の手のひらを見つめよう。そして、薬指と人差し指の長さを比べてみよう。――もし、薬指の方が長ければ、女性の月経前症状が重くなる可能性が高いことが、和歌山県立医科大学の研究でわかった。

研究者は「多くの女性が悩まされている月経前症状の原因を探る手がかりがつかめた。今後、治療や緩和ケアに役立てたい」という。研究成果はスイスの医学誌「Front Med」の2017年9月号に発表された。

男性では薬指が長い人ほどタフで成功するが...

同大学の発表資料によると、月経前症状は腹痛や頭痛、イライラなど、月経前の3〜10日間続く様々な身体的・精神的不調のこと。成人女性の9割以上が経験しているといわれ、治療が必要なほど重い人も多い。症状や程度は人によって様々だが、なぜ症状の重さに個人差があるのか分かっていなかった。

月経は毎月の周期に伴う女性ホルモン量が関係している。そこで研究チームは「女性ホルモンや男性ホルモンの分泌量の違いが、症状の重さに影響しているのではないか」という仮説を立てた。その性ホルモンの分泌量を一目でわかる指標として、薬指と人差し指の長さの比(指比2D:4D)=写真参照=を研究に使った。

それにしても、薬指と人差し指の長さが、なぜ性ホルモンに関係しているのか。その草分け的研究が、2007年に英国の心理学者ジョン・マニング博士が発表した「2D:4D比の法則」だ。「2D」とは英語で親指から2番目の人差し指、「4D」とは4番目の薬指のことだ。2本の指の長さを比較した数値で、人差し指より薬指の方が長い男性ほど男性ホルモンの数値が高い。いわゆる「男らしい」「男性度が高い」というわけだ。逆に、人差し指の方が長い女性ほど「女らしい」「女子力が高い」ことになる。

では、なぜ2つの指の長さが重要なのか。指の長さの比率は母親の胎内にいる時に決まってしまう。胎児は子宮の中で、女性ホルモンと男性ホルモンのシャワーを浴びながら育つ。その際、男性ホルモンの量を多く浴びた人は、より「男性的」に、女性ホルモンを多く浴びた人は、より「女性的」になるという。

この「性ホルモン・シャワー」をどの程度浴びたかは、2つの指の長さを見るとわかる。薬指の皮膚は男性ホルモンへの感受性が高く、人差し指は女性ホルモンの感受性が高いため、それぞれ指の成長(長さ)に影響する。だから、一般的に男性は薬指が長く、女性は人差し指が長い。薬指の方が長い女性がいれば、「男性度」が高い「肉食系女子」ということになるかもしれない。

マニング博士は、ビジネス界やスポーツ界で成功した男性の指の比率を測った。その結果、収入の多い株式トレーダーやサッカー選手の薬指が普通の男性より長いことを突きとめた。「男性ホルモンの高い分泌作用によって、果敢に、かつ攻撃的に取引や試合をした結果だ」というわけだ。

月経前の症状の重さは生まれつきの体質?

話を月経前症状に戻すと、研究チームは和歌山市内の女子学生403人の指比を調べ、月経前症状の重さに関するアンケートを行なった。「体重が増える」「眠れなくなる」「泣きたくなる」「集中力が失われる」など多くの項目で症状を4段階に分けて尋ねた。その結果、右手の薬指が人さし指に比べ長い人ほど、様々な症状が重くなる傾向がみられた。つまり、「出生前に男性ホルモンを多く浴びると月経前症状が重くなる」という生まれつきの可能性が示された。

その一方で、眠気や能率の低下などの「行動の変化」や、体重増加や肌荒れなどの「水分貯留」の面では指比と関係がなかった。まだ、月経前症状の原因は多岐にわたるようだ。

研究チームの金樋吉起教授らは発表資料の中でこうコメントしている。

「指の長さを測るという非常に簡単な方法で、多くの女性を悩ます月経前症状の原因を探る手がかりを、世界で初めてつかみました。胎生期の性ホルモンに関する遺伝子の中で、月経に伴う体質に関係するものを突きとめれば、有効な治療や緩和ケアにつながる可能性が見えてきます」