「店頭で音を聞いてもらえば、テレビ本体の内蔵スピーカーとの差は歴然」と口を揃える(写真は「家電住まいる館 YAMADA 新山下店」のサウンドバー売り場)

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 定量的な訴求が難しい「音質」がウリのサウンドバーだけに、各社とも力を入れているのは、店頭での体験機会の拡大だ。店舗側の協力が不可欠のため、ハードルは高いが、店頭で実際に体験した顧客は上位製品を選択することも多いという。ECに流れがちなクロモノ家電だが、音の分野では店頭の力への期待はまだまだ大きい。

<参加企業一覧>

https://www.bcnretail.com/market/detail/20171031_43807.html

●クロモノながら意外にも郊外店に大きなチャンス



 設計の高度化により、小型でも良好な音質が得られるオーディオ機器が増えている。家電量販店の店頭はさまざまな音が飛び交っており、オーディオ製品のデモンストレーションの場としては厳しい環境だが、各社とも「店頭で音を聞いてもらえば、テレビ本体の内蔵スピーカーとの差は歴然」と口を揃える。サラウンド効果を体感してもらうためのセッティングなどのノウハウを蓄積し、店頭での体験機会を増やすことが売り上げアップの近道となる。

 試聴イベントなどの開催には店舗側の協力が不可欠なため、メーカーの熱意だけでは実施できない。ただ、一度実施した店からは評価を得られることが多く、中でも、特に店頭訴求のし甲斐があるのが、郊外店だという。興味はあるものの、地元のオーディオ専門店はハイエンド志向過ぎて入りにくいと感じている層に、オーディオ入門アイテムとしてサウンドバーが好評なのだという。

 もっとも、都心部に比べ、部屋が広く、設置スペースにゆとりのある郊外エリアでは、サウンドバーとセパレート型の5.1chシステムを並べて紹介すると、セパレート型が選ばれることも多いようだ。サウンドバーの訴求という当初の目的からは外れるが、結果的に上位製品の購買につながれば“結果オーライ”である。

 従来、据え置き型のオーディオ機器は郊外店での取り扱いを広げることが難しかったが、価格の手頃なサウンドバーを突破口にして、オーディオ製品全体の裾野を拡大できる可能性もある。メーカー各社は「一歩この世界に踏み出すきっかけさえつくれれば、まだまだ需要は掘り起こせる」と語る。

●個性の訴求で

ヘッドホン市場に続け



 サウンドバー市場の拡大の大きな追い風となっているものの、一方で何らかの施策を講じていかなければいけないと各社が考えているのが、EC比率の拡大だ。インターネット上の情報を通じて、「サウンドバーは音がいい」というイメージが広がったことは幸いだが、各製品の特徴が深掘りされることなく、口コミランキングの上位の製品が漫然と選ばれるようになっているのではないか、という危機感があるという。

 ユーザーの期待がこの水準でとどまってしまうと、将来的な上位製品へのステップアップにつながらず、自社のファン層も育たない。各社ともWebを通じた情報発信に力を入れ始めているが、製品そのものの音を届けられない環境で、カタログ以上の情報をどのように伝えていくかは手探りの段階だ。

 サウンドバー市場をより“深化”ざせていくためのロールモデルとなり得るのが、ヘッドホン市場だろう。顧客はブログやSNS、販売店のWebサイトなどで製品の詳細な情報や評価を収集・比較しているが、必ずしもそのままオンラインで購入まで至るわけではなく、ネットで情報を仕入れた上で、店頭の売り場へ足を運び、熱心に試聴を重ねるケースも多い。音やデザインの傾向はブランドごとに確立されており、高級モデルに次々とステップアップしていくユーザーも決して少なくない。同様の道筋でユーザーを誘導していくためには、メーカー各社の個性の訴求が必要になる。

 座談会では、「音を聞かずに口コミだけで買われるケースもあるが、各社とも各製品に気持ちを込めて作っており、機種ごとに個性がある。先入観なしで聞き比べて、自分に合った音に出会ってほしい」という発言があった。売り場の販売員から、カタログを見ればわかる価格や機能だけでなく、実際の音とともに、メーカーごとの音のキャラクターや製品ヒストリーまで説明を聞くことができれば、サウンドバー市場の将来は、より盤石なものになっていくだろう。(BCN・日高 彰)

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年11月号から転載