先生は、いかにわかりやすく教えるか、ということに力を注ぐけれど…(写真:HASLOO / PIXTA)

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私は公立中学校の数学の教員をしています。教えることが好きで、教員になりましたが、最近指導するうえで、悩んでいることがあります。もともと数学ができる子は定期テストでも点数が取れますが、小学校の算数から苦手な生徒が苦戦をしています。授業ではわかりやすく指導をしているつもりですが、限られた時間では十分な指導もできず、やきもきする毎日です。数学の教員でありながら、恥ずかしいかぎりですが、どのようにしたら数学ができない子を引き上げることができるでしょうか。
(仮名:本木さん)

生徒全員にとって意味のある授業を


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これまで全国からいただく相談では、ママさん、パパさんからのご質問が多くを占めていますが、今回は学校の先生からのご質問です。

筆者は日頃、教育委員会から依頼を受けて教員研修、教員対象講演会を多数お引き受けしているため、多くの先生方とお会いする機会があります。そのような中、どのようにしたら生徒の学力を引き上げることができるかについて、真摯に向き合っておられる先生もたくさんいます。本木さんもそのお一人でしょう。

先生というと、教えるプロということになりますが、多様化した子どもたちへの対応を柔軟に行うことは、たやすいことではないでしょう。1クラス40人近い生徒がいて、しかもそれぞれの生徒の学力が異なっている中で、一方通行型の授業展開に限界があるのは、誰が見ても明らかですね。それでも先生は、日々工夫しながら、生徒全員にとって意味のある授業を考えなければなりません。

本木さんも、数学ができない生徒をいかにして引き上げるかということに懸命に取り組んでいらっしゃると思いますが、限られた時間の中でいかにして引き上げるのかということについて、ある種の限界を感じていらっしゃいますね。

そこで、筆者からは、次のようなアドバイスをしたいと思います。

「先生が教えることで生徒の学力がつくのではなく、生徒が自分で勉強するから学力がつく」

先生はいかにわかりやすく教えるかということに力を注ぎますが、実際に点数に結び付くのは、先生の教え方に多少左右されるものの、テストで点数が取れる要因は生徒が自分で勉強したからなのです。自分では勉強をいっさいせずに、授業を聞いただけでテストの点数に結び付くような生徒もごくたまにいますが、日頃の家での勉強や、テスト前の勉強ができているから、数学の点数が取れるのであって、授業のみで点数につながることは極めてまれなのです。

この話を聞くと、「学校の授業は無意味なのか!」と思われるかもしれませんが、そうではありません。学校の授業はその科目が好きになるか嫌いになるかを決定する重要な場になりますし、自分で勉強できる子にすることも、教育の大事な要素ではないかと思うのです。

先生は何をしたらいい?

それでは具体的に、先生は何をしたらいいでしょうか。筆者は3つの手順があると考えます。「マインドを整える → スキルを伝授 → フォローアップ」の順です。

1. 授業で数学をまじめに教えない → マインドを整える

「数学の授業をまじめに教えない? 何言っているんだ!」と思うことでしょう。この場合のまじめとは、つまらないという意味のまじめです。

淡々と黒板に向かい問題の解説をする、これを楽しいと思う生徒はごくまれでしょう。ただ、問題演習ばかりやっている授業、教科書をそのままなぞっている授業、それも授業の1つですが、生徒の目線に立ったときに、はたして、それは興味、関心、好奇心を引く授業なのだろうか?ということです。

もちろん「すでに十分に工夫している!」とおっしゃる先生もたくさんいらっしゃるでしょうが、もしそこまでではないと感じられる場合、改めて考えてみていただきたいのです。

先生の役割は、授業で生徒の好奇心を引き出すきっかけをつくったり、数学をやりたくなるような環境をつくったりして、心に火を灯すことにもあるわけです。教育という言葉は、教えるではなく、引き出すということが本来の語源であることも、これを語っています。

好奇心は面白いから出るのです。興味関心は、つまらない状況からは出てきません。学校の授業で、生徒のその科目に対する「好き・嫌い」が決まるということを覚えておくといいでしょう。

ですから、数学の授業はまじめにやらない、というぐらいでちょうどいい授業ができるようになります。そのための工夫のヒントは次の3つです。

「子どもは『やるな』と言ってもゲームにハマる。なぜゲームにハマるのか?」
「子どもは、勉強は嫌がるが、クイズには積極的に関与する。なぜクイズには前向きか?」
「子どもは、ただの作業には燃えないが、競争になると燃える。競争は他者との競争よりも前の自分との競争に燃える」
2. 平常時と定期テスト時の勉強法をそれぞれに教える → スキルを伝授する

その教科に興味があっても、成績が伸びないということもあるでしょう。そうした場合は、過去記事でも何度か触れてきましたが、その子が「勉強方法を知らない」可能性を疑うべきです。

筆者はこれまで、多くの子どもたちを指導してきましたが、「勉強方法を知っている」生徒はめったにいませんでした。塾に入れば点数はある程度上がります。しかし、最も点数が上がる生徒は、自分の勉強方法を知っている生徒なのです。でも、なぜか、勉強方法を学ぶ場がありません。これではいつまでもできない、塾などの他者に依存しなければ点数が上がらないということになります。

そこで先生にしていただきたいことがあります。数学の場合は、平常時とテスト前の勉強方法が異なるため、それについて教えていただけたらと思います。また、特に数学は問題集を解くことがベースとなりますから、問題集の使い方、プリントの使い方を具体的に活字にして教えてあげるといいかと思います。

先生が自信を持って話せる具体的勉強法がいいでしょう。その方法を語るときには、「なぜその方法がいいのか」という理由も話してあげてください。単に「問題集は○○のようにやる」「テスト前はこの方法で!」と伝えても、子どもは簡単には納得しないでしょうから。

先生の対応によって人生が変わる生徒もいる

3. 以上のプロセスでもれてしまう生徒には、個別で話をする(補習の時間が取れれば取る)→ フォローアップ


学校では学力別に分けて授業をしているケースはまれでしょうから、どうしてもついていけない子が出てきます。そこで、落ちこぼれそうな子には、フォーローアップが必要になります。

それは、授業内でも、授業後でも、別の日程でもよいと思いますが、いずれにせよ、何かしらの対応をしなければ、ついていけずそのまま終わる子は確実に出てくることでしょう。

もちろん、学校の先生は非常に多忙です。そんな時間は取れないという状況もあるでしょう。しかし、筆者が知るところでは、フォローアップをしっかりしている学校は現実に多数あります。また、このような対応によって人生が変わる生徒もいることでしょう。

日々子どもと向き合う学校の先生は、子どもの人生を変えてしまうだけのインパクトを持っています。これからの先生のご活躍を心より期待しています。