皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、持病を抱えているため、なかなか貯蓄が増えない40代の独身女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

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貯蓄も治療費に消えてしまいます。どう貯めたらいいでしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、持病を抱えているため、なかなか貯蓄が増えない40代の独身女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

▼相談者下層老人候補以下?さん(仮名)
女性/会社員/41歳
岐阜県/実家

▼家族構成父(73歳/無職)、母(70歳/無職)

■相談内容
現在正社員で勤務していますが、持病が8つほどあり毎週通院で早退しています。健康な身体なら悩みも減るのでしょうが、これから年齢を重ねていくのに病気を抱えて不安です。毎月医療費に2万5000〜3万5000円ほど。予期しない病気になった場合にはそれ以上の持ち出しとなります。貯金ができても医療費などで結局補充してしまいます。

また、ペットの餌代や病院代金もかかりますし、会社帰りには300円程度のおやつも買ってしまいます。自由にできるお金も必要かと思い普通預金に貯金しているのですが、これがいけないのでしょうか?将来私が実家を相続した場合はマンションの管理費・電気代など1か月に4万5000円程度かかると親から聞いています。

▼家計収支データ

▼家計収支データ補足(1)両親との同居について
お米代とネット電話代、生活費、駐車代で30000円を入れている。自分の昼食代やパン・嗜好品は自己負担。両親の年金額は年間274万円。

(2)仕事内容
一般事務。小さな企業のため他に梱包作業や納品の手伝いも行う。途中、対置用の問題で勤務時間を短縮(パート)したとしても、60歳までは勤務することを希望している。そもそも転職は持病があるため、難しいのが現状。過去にハローワークに相談したら、相手にしてもらえなかったとか。

(3)年金
厚生年金加入。通算加入月は221ヵ月。

(4)保険料の内訳
・本人/がん保険(終身保障終身払い、入院1万円、他に手術給付金、高度先進医療特約)=保険料3407円
・本人/個人年金保険(65歳から10年確定、年金額39万6000円)=保険料1万5000円

(5)財形年金貯蓄の内容
60歳から5年確定、年金総額240万円

(6)不定期な支出
・通院で検査が入る回は8000円くらいになる
・化粧品 1回/5000円くらい
・美容院 1回/4000円くらい
・ペットのエサ代(ネット通販の送料無料時にまとめ買い) 1回/2万円
・衣服まとめ買い(肌症状のため今まで着ていた服が突然着られなくなることがある)金額未定
また、「通院で休むため年間の有給を7ヵ月で使い切ってしまい、残りの年内の通院に関しては減給対象に。減給では手取り10万円くらい。

(7)持病について
遺伝的なもの、先天性のもの、原因のものなどさまざま。遺伝的なものは足の持病でいずれ手術をする予定(完治するかは不明)。先天性のものは投薬で治療。ただし喘息は一生付き合うことになるのだとか。原因不明のものは指定難病で、現在症状は落ち着いているとのこと。

▼FP深野康彦からの3つのアドバイスアドバイス1 収入が少なくても長期間働きたい
アドバイス2 年金受給の繰り下げで年金額を増やす
アドバイス3 個人年金保険のメリットを活かす

アドバイス1 収入が少なくても長期間働きたい

多くの持病の治療費で支出が増え、通院が重なり仕事も休みがちとなるため、収入も上がっていかない。当然、老後資金をどの程度用意できるかも見えてはきません。その意味で、不安なるのは当然です。そこでまずは老後に向けて、現状できることを考えてみましょう。

家計については、工夫できるところ、削れるところはしっかり実践していると思います。一方、「ペットのエサ代や自分のおやつ代などがかさむ」とのことですが、ペットを飼うこともおやつを食べることも、ストレスをためないための生活の大事な「遊び」の部分のはず。それは決して無駄な支出ではありません。無理に削らず、上手にやりくりしてみてください。

働き方については、まずは病気治療が優先するでしょう。と、同時に健康に考慮しつつ、継続して働けるのなら、ご本人が希望されているとおり、頑張って同じ職場で定年まで勤務することが望ましいでしょう。職場も通院などの事情を考慮してくれている。その意味では勤務先に恵まれたとも言えますし、今後、正社員での転職は難しいとなれば、なおさらでしょう。

また、現在の勤務先の定年が60歳としても、もし体力的に可能であれば、パートで構いませんので、1年でも長く働くことが重要になります。多くの世帯に言えることですが、老後資金は現役時代にすべて用意しようと思っても、なかなか難しいのが現状です。ならば、定年後も収入を得ることで、用意した手持ち資金をなるべく減らさないこと。とくに公的年金が受給できる65歳までは、少額でも収入があることが、大きな老後対策になるのです。

アドバイス2 年金受給の繰り下げで年金額を増やす

実際に老後を迎えてからは何ができるでしょうか。

先に60歳以降もなるべく長く働くことが望ましいと言いましたが、実際に働くことができたなら、老齢基礎年金の繰り下げ受給、つまり65歳から始まる受給を先に伸ばしてはどうでしょう。

メリットは、1ヵ月繰り下げるごとに0.7%受給額が増額されるということ。仮に66歳0ヵ月まで伸ばすと増額率は8.4%、67歳で16.8%、68歳で25.2%になります。当然ですが、生活資金が足りない状況での繰り下げは意味がありません。また、それにより受給総額が通常受給よりも多くなるには、ある程度長生きすることが条件(目安として66歳受給で78歳)となります。それでも、受給額そのものを増やす方法であることには間違いありません。

老後に向けてのプラス材料もあります。ひとつは、相談者自身が現時点でかなりコストを抑えた生活ができている点。高齢になって、生活スタイルを無理に変える、大幅な節約が必要となるといったことが避けられます。

もうひとつが、住居が確保されている点。親御さんのマンションを相続すると、維持管理等のコストとして月額4万5000円が発生するとのことですが、実際にその頃は相談者自身の生活費も今より下がっていますので、決して負担できない額ではないと思います。

アドバイス3 個人年金保険のメリットを活かす

老後資金の貯め方についてですが、貯蓄ペースは現状維持が基本。これ以上、何かを削ることは無理ですし、その必要もないでしょう。気になるのは、最近始めた年金財形貯蓄。確かに、天引きによって貯まってはいきますが、貯蓄商品としての利回りはかなり低いと言わざるを得ません。

であれば、個人年金保険に切り替えるのも、選択肢のひとつだと思います。予定利率は決して高いとは言えませんが、それでも年金財形貯蓄よりも大きく増えるでしょう。また、個人年金保険料控除はすでに1本加入しているため、新たに加入してもこれ以上の控除(所得税4万円、住民税2万8000円)は受けられませんが、加入することで「手元に資金があると、ついつい支出してしまう」という習慣の歯止めと資金づくりの継続性、確実性を高めるという利点もあります。

最後にもうひとつ。困難な持病を抱えているということで、国や自治体の支援制度が受けられないのでしょうか。個人的に調べるより、専門の社労士に相談する方が確実です。市町村や社労士の団体が主催する無料相談会を利用してもいいでしょう。もしそういう相談をまだされていないなら、ぜひ一度してみてください。

相談者からいただいた感想

深野先生の助言を頂き、ありがとうございました。「まだまだ削れる部分があるから、考えが甘い」というご指摘がある、と私は想像していたので、コストを抑えている。というお褒めの言葉があって正直驚いています。「下層老人まっしぐらですよ」しかなかったのです。

職場は、高齢者雇用も率先しているので、先生のアドバイス通りパートであっても定年後まで働けると本当にいい職場なのですが、万が一に備えて、自治体の無料相談や就職支援の助成があるか一度は将来的な利用も含めて相談してみたいです。指定難病は現時点は寛解で症状が落ち着いているので、医療費補助申請は受けられません。

両親もペットも老後を迎えたら病気をしますし、自分の持病で思うように貯蓄ができず、独身であることにも不安いっぱいで応募を決めましたが、現在の生活水準は問題がなかったこと、無理せずに老後への貯蓄も保ち、個人年金のお得な方向へ見直し……という先生のお言葉がいただけて心が軽くなりました。これで安心せずに、心機一転で簡単な家計簿を作成して、体調管理にも気を配って少しでも長く働けるようにしていきたいです。本当にありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武
(文:あるじゃん 編集部)