ロシアW杯に向けてチーム強化を進める日本代表は欧州に遠征して、現地時間の11月10日(金)にブラジル代表、14日(火)にベルギー代表と戦います。強豪国相手にどこまで通用するのかを確かめるためにも重要な試合です。また、今回は本田圭佑選手や香川真司選手、岡崎慎司選手らがメンバーから外れるなど、ベテラン、若手選手による競争がさらに激しくなっています。


欧州遠征で活躍が期待される乾貴士 photo by Sano Miki

 とくに熾烈なポジション争いが続く攻撃陣のなかで、定位置を獲得すべく闘志を燃やしているのが、リーガ・エスパニョーラのエイバルに所属する乾貴士選手です。

 乾選手の名が全国に広まったのは、”セクシーフットボール”で話題となった野洲高校時代。2年生のときには選手権優勝に貢献するなど活躍し、2007年に横浜F・マリノスに入団します。その18歳のとき『やべっちF.C.』にVTRで出演して、リフティングの宿題を出してくれたのですが、当時からその技術の高さにみんなが驚いていました。それ以来、乾選手は番組スタッフから「先生」と呼ばれています(笑)。

 その後、横浜FM、セレッソ大阪で経験を積んだ乾選手は、2011年8月にブンデスリーガ2部のボーフムに移籍。欧州でのキャリアをスタートさせ、1部のフランクフルトを経て、2015年に憧れの地であるスペインへ。1部に昇格したばかりで、リーグでは小さなクラブであるエイバルへの移籍でしたが、乾選手は「即決でした」と、まったく迷いがなかったといいます。乾選手が「スペインでサッカーがしたい」と思うきっかけとなった、バルセロナやレアル・マドリードと同じ舞台に立つことになったのです。


photo by Yamamoto Raita

 それでも、移籍した当初はドイツとのサッカーの違いに戸惑うこともありました。

 まず守備については、ドイツは1対1を重視しているのに対して、エイバルではチーム全体で守ることを徹底しています。ホセ・ルイス・メンディリバル監督からは、常に相手チームの3人の選手が見えるようポジショニングをとり、どの選手にパスが回ってきても守れるように準備することを指示されているのです。

 乾選手は当初、「この守備をするのは絶対無理」と思ったそうです。しかし、トレーニングを重ねるうちに、守備で相手にプレッシャーをかけるのが楽しくなっていき、「守備を楽しいと思ったことは初めて」とスペインでの成長に手応えをつかんでいきます。そして、戦術理解度を高めた結果、監督の指示を実践できるようになった乾選手は、出場時間が増えていきました。

 攻撃面では、パスを優先する傾向のあるドイツに比べ、スペインは自由度が高く、乾選手の最大の武器であるドリブルがより活きています。乾選手自身、「プロになってから、今が一番充実してサッカーができている」とスペインのサッカーが自分のスタイルに合っていることを自覚しています。

 現在はスペインに単身赴任の乾選手。人口2万7000人ほどのエイバルは小さな町で、「サッカーに集中できるとてもいい環境」のようです。初めて練習に参加した際には、バルサやレアルに比べて小さな規模のクラブにもかかわらず、選手全員のパス、ポジショニング、守備、判断スピードなどすべてのレベルが高く、驚いたそうです。


photo by Yamamoto Raita

 また、エイバルに入団する前は、試合に出られないときに不満が募ることもあったといいますが、今は「まったくない」と言い切ります。「全員の選手をきちんと見てくれている」というメンディリバル監督への信頼もあり、メンバーから外れても腐らずに練習を続けてレギュラーに定着していきました。

 その経験は、日本代表にもつながります。乾選手は、フランクフルトに在籍していた2015年に行なわれたアジアカップ以降、代表に招集されない期間が長くありました。その時期を乾選手は「すごく悔しかった」と振り返っていましたが、エイバルに移籍してからは焦りが消えたそうです。「スペインで結果を残していけば、また代表に呼ばれる──」。その確信が、乾選手から迷いを消したのです。

 そして、今年6月のキリンチャレンジカップ(シリア戦)で2年ぶりに代表復帰。試合途中でピッチに入ると、他の選手にはない”違い”を見せたいと考えていた乾選手は、攻撃のリズムを変えるプレーを見せてくれました。ハリルジャパンのサッカーについて「縦に速いけど、それ一辺倒になっている」と考えていたため、もっと落ち着かせることを意識していたそうです。

 ロシアW杯出場を決めたアジア最終予選のオーストラリア戦にも先発で出場。試合開始から後半31分に交代するまで全力でボールを追う姿が印象的でした。試合後「(原口)元気が控えにいたから(自分は)走り切ろうと思っていた」と笑顔で語った乾選手。4年前、ブラジルW杯行きを決める試合で、代表に呼ばれながら出場できなかった悔しさもあって、「とにかく勝つ」という強い気持ちがあったのだと思います。


photo by Yamamoto Raita

 欧州遠征のブラジル戦について、乾選手は気になる選手としてネイマール選手、カゼミーロ選手、ダニエウ・アウベス選手の名前を挙げています。とくに、右サイドバックのダニエウ・アウベス選手は、バルセロナと初めて対戦したときにマッチアップした相手。「こんなにうまいサイドバックがいるのか」と、当時一方的にやられてしまった選手です。

 ダニエウ・アウベス選手は2016年にバルセロナを離れてユベントスに移籍し(今シーズンからパリ・サンジェルマンに所属)、リーグで対戦する機会がなくなったため、乾選手は今回の代表戦で再びマッチアップできることを楽しみにしていました。

 乾選手は来年30歳。「W杯に参加できるラストチャンス」と考えています。代表での存在感をより高めるために必要なのはゴール。10日のブラジル戦では、2014年のキリンカップ(ホンジュラス戦)以来となるゴールを決めて、ロシアW杯へ向けて弾みをつけてもらいたいです!

プロフィール:竹内由恵(たけうち・よしえ)
東京都出身。2008年入社。現在の担当番組は『スーパーJチャンネル』(月〜木 午後4時50分、金 午後3時50分〜)、『やべっちF.C.』(日/24時10分〜)

■サッカー国際強化試合
日本 × ブラジル
11月10日(金) よる8時54分〜 
日本 × ベルギー
11月15日(水) あさ4時30分〜 ※一部地域除く
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