自転車はここ数年、前カゴつきの実用車に乗っていて、なんの不満もなかった。

 内装3段変速、暗くなると自動点灯するライト。日々のスーパー、ホームセンターめぐりに頼りになる、実直な相棒である。

 だが、それ以前はずっとクロスバイクに乗っていたので、毎年春になると多摩川サイクリングロードなどをすいすい走った記憶がよみがえり、物欲がうずくのだった。

 5月の終わり、ついに私はその物欲に従い、クロスバイクを購入した。

 一カ月ほど自転車店を回ったり、WEBで調べたりして楽しく迷う。予算は5万円前後。

 街の駐輪場に気軽に置ける自転車じゃないと日常使いできないので、高額すぎる自転車は選択肢からはずれる。

 型落ちの値引きなどあって4万ウン千円の自転車に決める。

 ロードバイクのドロップハンドルに憧れはあるけれど、またフラットハンドル車。

 買う前は、前カゴかリアキャリアをつける気満々だったが、実車を手にして、12キロ弱という軽さに感動し、よけいな重量を加えるのはやめた。スタンドだけつけた。

 片手でヒョイと持ってちょっとした階段をのぼりおりできる軽さは、実用車にはないものだ。ネコ2匹分よりは重いが、小学2年生よりはぜんぜん軽い。

 だがしかし、久しぶりに前傾姿勢で乗ってみて、その乗りづらさにおどろきもした。

「ぜ、前傾姿勢って、こんなに前傾するものだっけ?」

 首が痛い。少し乗っただけで手のひらが、尻が痛い。

 クロスバイクにもいろいろあるわけだが、今度のやつはどちらかというとロード寄り。以前乗っていたものはどちらかというとマウンテンバイク寄りだったことを思い出した。

「これくらいがベストポジションですよ」

 自転車屋さんにそういわれれば従うしかないのだが、「失敗」の二文字が脳裏をよぎる。

 一般人にとっては、実用車のなんのストレスもない乗車姿勢こそが正しくて、自転車競技的な乗り方は「健康のために、ジョギングじゃなくて全力疾走をするようなもの」じゃないのか、と思ったり。

 ボヤいてもしかたないので「首、手のひら、痛い」などと検索する。慣れるしかない、できるだけ手に体重をかけない乗り方をするしかないとわかった。

 サドルを前に出すなど微調整をして、少しずつ距離を伸ばしていくうちに、まず首が慣れた。手と尻は、さすがに20〜30キロも走ると痛くなってくるが、慣れつつあるといっていいだろう。

 長時間乗るための目的として、私の生活圏にはない「山田うどん」(埼玉県を中心とするチェーン店)に昼飯を食べに行ったりしている。

 6月からの5カ月で18回。埼玉県民か、と思うくらい通っている。平日昼のお客さんは作業着の人やトラック乗りの人などが多く、汗ビショおやじでも入りやすいのだった。

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年11月14日号)