蜜月アピールの代償は、やはり大きかった。トランプ米大統領が3日間の日本滞在を終え、次の訪問先の韓国へ飛び立ったが、度肝を抜かれたのは安倍首相の気前の良さだ。先立って来日した長女・イバンカ補佐官が関わる女性起業家の支援基金に、ポンと5000万ドル(約57億円)を拠出すると表明したのはホンの序の口。トランプに渡した“手土産”の額は軽く1兆円を上回る。

「米国は日本との間に年700億ドル(約8兆円)もの貿易赤字を抱えている。対日貿易は公正ではなく、開かれてもいない」

 ゴルフなどの接待漬けも通用せず、トランプが安倍首相に一歩も譲らなかったのが、対日貿易赤字の是正だ。

 第2次安倍政権になってから、単年度で賄い切れない高額兵器の購入時に、次年度以降に分割して支払う「後年度負担」をフル活用。米国の言い値で高額兵器を買いまくり、後年度負担のツケは約5兆円の年間予算とは別に5兆円以上もたまっている。

 事実上、GDPの2%に達する防衛費を投じても、対日貿易赤字は一向に埋まらない。そこで安倍政権がトランプ政権に持ちかけたのが、米国産シェールガス輸出拡大への全面協力である。

 日米両政府はきのう(6日)の首脳会談に合わせ、新興国へのエネルギーインフラ輸出で協力する覚書を締結。東南アジア各国やインドなどに、米国のシェール由来の液化天然ガス(LNG)を売り込むため、日本が官民挙げて現地でLNGの発電所や運搬船基地などの建設を支援する。支援額について、日本政府は「1兆円規模」(世耕経産相)と表明した。

■米国の輸入“地ならし”に1兆円差し出す馬鹿さ加減

 シェールガスの輸出が増えれば、米国の貿易赤字も削減できる。トランプに手っ取り早く赤字を解消してもらうお膳立てに1兆円ものジャパンマネーを差し出すのだ。

「米国産LNGは石油や他国のLNGと比べて割高です。今年から輸入を始めた日本の電力会社も、コスト押し上げの要因となって苦しんでいます。北極圏開発を進めるロシアが、より格安のLNGを売る計画もある。日本が輸出の“地ならし”をしても、新興国が米国産LNGの調達に二の足を踏めば意味がない。1兆円規模の支援が単なる外交目的の『捨て金』となりかねません」(経済評論家・斎藤満氏)

 安倍首相が人気取りのため、トランプに拉致被害者の家族と面会させたことにもデメリットはある。トランプが核・ミサイル問題に加え、拉致という人権問題にまでクチバシを突っ込めば、北朝鮮はさらに反発。いよいよ対話の糸口を探すのが困難となる。

「会計検査院は先日、米国から調達した武器の購入費を巡り、過払いの可能性を指摘。計64件、総額約672億円の支払いに過払いの疑いがあるのです。安倍首相も首脳会談の席で『調べて返金せよ』とトランプ大統領に迫るべきなのに、逆に『日本は大量の装備品を買うことが好ましい』と念を押される始末。消費税率10%引き上げで見込まれる5兆円強の増収分を全額、武器購入に充てなければ許されない勢いで、心配になります」(斎藤満氏)

 安倍首相の隷従外交により、トランプは完全に図に乗ってしまった。今後も8兆円の赤字が埋まるまで、対日FTA交渉などで容赦なく無理難題を押しつけてくるに違いない。