自分に合った仕事を探すには、早い段階での「長期・有給インターンシップ」が有効だ (写真:Ushico / PIXTA)

「もっと早く動きだしておけばよかった」――。

私は就職したい学生と、学生を紹介してほしい企業とをマッチングする部門に在籍していますが、苦労のすえ就職が決まった学生たちから、何度となく聞いたコメントです。

「やりたい仕事」が見つからず就活に入ると…


優秀で能力があっても、自分のやりたい仕事や適性が分からないまま就職活動に突入すると、「不採用」が続き、さらに自分の良さや方向性を見失ってしまう……。そんな負のスパイラルに陥ってしまいがちです。

しかし、そもそも「自分のやりたいこと」など、社会人でもパっとみつかるものではありません。ましてや、社会経験をこれから本格的に積む大学生で見つかっていないのは、当然のことです。

それを見つけたいにもかかわらず、大学3年生の3月にはもう説明会やエントリーシートの提出など、就活本番に突入してしまいます。「自分のやりたいこと」を探す時間がなかなか取れないのが現状です。そのときに「もっと早く動き出せば」と思っても、さまざまな企業と接点をもち、自己分析をしたり、業界研究をしたりする時間は足りないのです。

そこで、大学1、2年生のみなさんに今のうちから視野に入れていただきたいのが、長期有給インターンシップです。

ここ数年、企業のインターンシップ受け入れ数は、増加しています。ワークショップを中心とした1日のものや、現場で実務に携わる2週間程度のものなどさまざまです。長期有給インターンシップとはまさに文字通り、「長期」かつ「給与がもらえる」インターンシップです。

すでに長期有給インターンシップを実施している企業は、1000社ほどあるとみられています。しかし、IT業界を中心に小規模な企業や創業間もない企業が多く、学生に広く知られるまでには至っていません。

私がこの長期有給インターンシップを広めたい、根づかせたいと思ったのは、冒頭のような、みなさんの先輩たちの声がきっかけでした。

スムーズに就活を終えた人たちも、必ずしもその先が順風満帆とは限りません。長きにわたる就活のすえに、ようやく決まった就職先をわずかな期間で離職してしまうのは、学生にとっても採用した企業にとっても、避けたい事態です。

ではなぜ、早期離職は起きてしまうのでしょう。分析すると、2つの“崖”がみえてきました。

早期離職につながる”情報の崖”と”能力の崖”

1つは入社前と入社後の“情報の崖”です。「入社前にイメージしていた会社と違った」、「思っていた仕事ではなかった」など、事前情報から想定していたものと、現実の差に起因する崖です。

もう1つは、自分の持っている能力と入社後に求められる能力にある、“能力の崖”です。この差が大きいと、仕事がうまく回らない、対人関係がうまくいかない、などの支障が出てしまいます。その結果、「この会社は自分に合わない」「自分はこの仕事では頑張れない」と判断して、早期離職につながっています。

就活で自信を失ってしまう負のスパイラルを起こさないため、そして早期離職につながる2つの“崖”を減らすために、どうしたらいいのか? その方法のひとつが、自己理解と仕事理解を深める機会を、もっと早い時点にするということなのです。

就活が目の前に迫った大学3年生になってからではなく、1、2年生のときにしっかりと就業体験ができる、長期有給インターンシップに参加できる機会がもっとあればよいのではないか、と考えました。それが、大学1、2年生を対象とした長期有給インターンシップの情報サービス「リクナビC」です。

自分の持ち味やできること、あるいは好きなことを深く知るためには、一定期間以上の就業体験が有効であると考えます。さらに給料という対価を支払うことで、企業は本気で育成しようという気持ちになり、学生も企業からの期待に応えるべく成果を出そうとする。それが長期有給インターンシップです。お互いが、本気で働く、働いてもらうことに向き合う期間にしてほしいと考えています。

では、長期インターンシップは、短期のインターンシップやアルバイトと比べ、どこが違うのでしょうか。これは大きく2つあります。

1つ目は、インターンシップ先から、参加学生の将来のキャリア形成に関するフィードバックがある点です。

働く経験だけなら、短期のインターンシップやアルバイトを通してでも、もちろん可能です。しかし、今回立ち上げたリクナビCの長期有給インターンシップでは、自分の仕事を振り返り、学んだものを生かす、という2つのステップを仕組み化することで、インターンシップをより有用なものにしています。

インターンシップの期間中は、企業からの業務指導があるだけではありません。終了後は体験した学生のみなさんにレポートを提出してもらい、「振り返り」の機会をつくります。さらにそのレポートに、企業が業務評価を加筆し、学生へ伝えます。このレポートを通じ、自己評価と他者評価から学びを得て、得手不得手や次に何をしたいのかを、深く考えるきっかけにしてもらいたいと考えています。

2つ目は、従事する業務です。マーケティングやコーポレートスタッフなど、短期のインターンシップやアルバイトでは携わる機会がごく限られている業務を対象にして、求人開拓をしています。

たとえば、商品やサービスを、今まさに立ち上げようとしている創業者の近くで行われる、プログラミング開発に携わる仕事や、若い人向けの商品企画です。社員とともに責任ある仕事の一翼を担え、また、学生ならではのセンスや感性を生かした働き方を求めている点が、一般的な、短期のインターンシップや学生アルバイトとは大きく違っています。

Will(やりたいこと)とCan(できること)を明確に


学生時代に自己理解、つまり「やりたいこと(Will)」と「できること(Can)」が明確になっているばかりではありません。

では、明確にするためには、何が必要でしょうか。それを考えるため、私たちは経験学習の専門家である、北海道大学の松尾睦教授にご指導をいただきました。松尾教授は経験学習(人が経験からいかに学ぶか/職場の経験学習をいかに活性化するか)を主な研究テーマに、組織論と心理学の境界領域を研究されています。その結果、私たちが完成させたのが、「自己理解を深める概念図」の行動様式です。

皆さんも授業やゼミ活動で発表をしたことがあるでしょう。その際、よく調べていないことを突っ込まれてしどろもどろになってしまったり、緊張でうまく話せなかったりといった、”経験”があるのではないでしょうか? そのとき、なぜうまくいかなかったのか、”内省”する。そこから、「次に突っ込まれそうなことは先に調べてまとめておこう」、「緊張しないように発表の事前練習を5回にしよう」などの”教訓”を見つけ出し、次の発表を良いものにするため”適用”する。この4つのサイクルをいろいろな分野でぐるぐる回すことが、自分ができることである「Can」を知り、それを増やしていって「Can」を太らせることです。

逆に、将来はなんとなくコンサルタントになりたいといった、漠然とした「Will」だけを持っている場合もあるでしょう。その場合でも、4つのサイクルを回していれば、「発表の練習で改善点を見つけるのはコンサルにもつながるのではないか」「調べもの学習はコンサルが行う下調べの練習になるのではないか」というように、「Will」につながる「Can」に気づくことができます。

このような「Can」を見つけ太らせていくことによって、「ていねいに情報収集をしたうえで、的確な改善点を見つけられるコンサルタントを目指そう!」というように、「Will」を補強していくことができるのです。

このサイクルを可能にするものとして、大学1、2年生を対象とした長期有給インターンシップの情報サービスを組み立てました。「リクナビC」のCは、CampusとCareer。「学ぶ」と「働く」をつなぐという意味を込めています。

目的は、「学生に低学年から『働く』を考える機会を提供する」こと。そのために低学年が参加できるインターンシップを紹介しています。

紹介するインターンシップの条件とは、(1)社会人から業務後の内省ならびに業務指導がもらえるもの、(2)1カ月以上の期間で行う有給のもの、です。

さらに、インターンシップが産学協働の教育プログラムであるという前提にたち、求める学生への指導や学業の最優先に賛同する企業のみ、参画しています。参画の条件としている学生への指導を怠った企業には、今後参画を継続できないということも含めて、検討することにしています。給与は各都道府県の最低賃金を上回ることが前提です。

企業側にもメリットは大きい

では、受け入れる企業にとっては、どんなメリットがあるのでしょうか。先に述べたように、率直な意見や学生ならではの発想など、若者の感性をビジネスに活用できることが挙げられます。

さらに、これまでは社風に合わないと思って採用を見合わせてきたタイプの人材を、インターンシップで受け入れてみることによって、意外な活躍をする人材像に気づくチャンスにもなります。

具体的な事例を紹介しましょう。従業員数30名弱のIT企業A社は、もうすぐ創業15年を迎える中、社長は組織に新しい風を入れるためにも新卒採用に踏み切りたいと考えました。しかし、その話を持ちかけられた現場を統括する幹部は、経験のない新卒採用に対し、「育てられるのか」「新卒者が対応できる業務なのか」、という不安を強く抱いていました。

そうしたジレンマの中でA社が下した決断は、まずは長期・有給のインターンシップ生を募集するという方法。求める学生が来てくれるのか、来てくれた学生が活躍してくれるのかを、インターンシップを通じて見極め、学生を受け入れられるように自社の体制を整えることにしたのです。

日本の事業者の97%は中小企業だとされていますが、同じような悩みを抱える企業は少なくないと思います。A社のケースを目の当たりにし、長期・有給インターンシップの推進は、成長を指向する中小・ベンチャーが将来に向けた活力を得るため、また学生たちの活躍の場をさらに多様化するためのきっかけを作る取り組みにもなる、と確信しています。

学生に就業体験させると同時に、企業側が人材教育で足りないこと、若い人たちのアイデアを得ることは、報酬を支払うだけの価値はあるはずです。

社会人として求められる力は、学校で得る知識だけで十分、ということはありません。一定以上の期間にわたってしっかりと仕事と向き合い、社員の人に交じって責任ある仕事をする経験、そして、内省し、レポートという形でアウトプットすることや、企業からの業務評価を受け取ることは、自己理解や仕事理解、ひいては本人のキャリア形成にきっと役立つはずです。さまざまな規模の企業で、さまざまな業界や業種での体験が積めるのは、学生時代のインターンシップならではの特権でもあります。

ぜひ有効に活用していただきたいと思っています。