『べっぴんさん』芳根京子は『あまちゃん』のんを超えるか? ドラマ『海月姫』への期待

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 今年の春にNHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』が終了してから、直後にTBS系列の『小さな巨人』に出演し、ヒロインを務めた映画『心が叫びたがってるんだ。』と、主演した短編映画『わさび』2本の映画が公開。2017年の芳根京子は朝ドラ女優として築き上げた地位を吟味し、大きくジャンプアップする2018年に向けての助走期間といったところであろう。

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 2018年早々には2本の映画が公開を控えている。いずれもすでに撮影はクランクアップしているのだが、そのひとつは初時代劇挑戦となる『散り椿』で、脇を固めるキャスト陣のひとりといえども、日本映画界を代表する豪華なスタッフとキャストに囲まれている。そしてもう1作品は、同じく“朝ドラ女優”としてブレイクを果たした土屋太鳳との演技合戦に注目が寄せられる『累-かさね-』。どちらも実に楽しみな一本だ。

 そんな中、おそらくこの2作よりも先にお目見えするであろう、1月期のドラマへの主演が決定した。大抜擢された『表参道高校合唱部!』(TBS系)以来となる民放連ドラの主演作は、昨年ドラマ化され大きな話題となった『東京タラレバ娘』で知られる東村アキコの代表作『海月姫』で、未だそのブランド力が尽きないフジテレビの月9枠ときた。

 芳根が月9ドラマに出演するのは、昨年の1月クールで放送された『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)以来。ドラマの終盤で主人公が出会い、過去の自分の姿を少しだけ投影する、田舎から出てきた少女を演じたのである。それからちょうど2年が経ち、彼女はこの時間帯に、主役として戻ってくるのだ。

 この『海月姫』で彼女は、生粋のクラゲオタクで対人関係に難ありの主人公・倉下月海を演じる。男子禁制のアパートに、オタク女子たちと共同生活をしている彼女の前に、女装趣味のある青年・鯉淵蔵之介が現れたことをきっかけに、蔵之介の兄で政治秘書の修との恋模様や、土地開発によってアパートが取り壊しの危機に直面するなどといったドタバタラブコメディなのだ。

 2014年には、能年玲奈(のん)主演で映画化もされた本作。当時の能年といえば、朝ドラ『あまちゃん』で大ブレイクを果たし、本作の直前には主演映画『ホットロード』が大ヒットを記録。まさに、朝ドラ後の最大のブレイクの真っ只中だったのである。そこにきて、デビュー時から注目されていた彼女のポテンシャルの高さが発揮されたのだ。

 原作と同様、メガネにお下げ髪という地味なルックスで、人前に出ると急に縮こまり、背中を丸めながら歩く。しかし、クラゲのことになるとたちまち饒舌になり、ペットショップでは早口で店員にクラゲの飼育方法をまくし立てる。こういったギャップを難なくこなし、しかも彼女の持つイメージを極端に再現したようなコミカルな演技は『あまちゃん』に続く“能年玲奈”時代の代表作となったと言ってもいいだろう。

 では、この超個性的な役柄を、芳根はどう演じきるのか、それがひとつの注目ポイントとなる。能年同様に、“明るく、天真爛漫”なイメージというものはすでに獲得しているとして、そのギャップを生み出すための根暗な“オタク女子”のキャラクター作りが課題となってくる。

 たとえば先日の『心が叫びたがってるんだ。』では、トラウマを抱えて喋れなくなってしまう少女を演じた彼女。そこで見せた、オドオドとした雰囲気を、ユーモラスかつコミカルに切り替えて演じなくてはならないということだろう。さらに、映画好きの少女を演じた『向日葵の丘・1983年夏』や、合唱好きのヒロインを熱演した『表参道高校合唱部!』で見せた、好きなものに対する飽くなき探究心を、さらにデフォルメさせる必要が出てくるわけだ。

 よくよく考えてみれば、これが彼女の初コメディ演技となる。コメディとなれば、彼女ひとりの演技だけでなく、周りの役者陣との間合いの取り方や、空気作りも非常に重要な要素となっていく。それによって、芳根の演技が輝くか否かが決まると言ってもいい。まだ発表されていない共演者、とくに女装癖のある蔵之介を誰が演じるかが、大きな鍵となってくることだろう。

■久保田和馬映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。