寿司は中国でも人気が高い(写真はイメージ)


 日本を訪れる中国人旅行客が増え続ける中、中国人の間で日本料理に対する関心も日に日に高まってきています。中国国内で日本料理を扱う飲食店も増えており、食にこだわる中国人らしく、どの店がおいしいのかというネット上の議論も盛んです。

 そこで今回は、中国人はどんな日本料理が好きなのか、また、中国人が日本料理に抱く味覚傾向について、上海在住の筆者の体験と合わせてご紹介しようと思います。

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“鉄板”の人気は寿司、ラーメン

 下の表は中国のウェブサイトで紹介されている「中国で受け入れられている日本料理10種」です。筆者自身の感覚からみても順当な選出だと思います。

中国で受け入れられている日本料理10種(出典:日本語通信教育サイト「滬江日語」)


 この中でいちばん好きな日本料理は何かと中国人に尋ねたら、ほとんどの人が「寿司」と答えるのではないかと思います。

 中国にある一般的な日本料理店であれば、専門店ではなくても寿司メニューがほぼ用意されています。人気のある回転寿司店などは、休日には行列ができるほど込み合うことも珍しくありません。

 そんな名実ともに日本料理を代表する寿司の対抗馬となるのが、近年、欧米でも人気が高まっている「ラーメン」でしょう。以前、このコラム(「『本場』中国で!日本のラーメンに中国人殺到」)でも中国における日本式ラーメン(日本のラーメン)人気について取り上げましたが、中国に元々存在していたラーメンから独自の発展を遂げた日本のラーメンは、中国でも幅広く受け入れられています。

 そして、この寿司、ラーメンという二強に続く人気の日本料理メニューは、筆者としては「カレー」がくるのではないかと考えています。

 カレーはラーメンと同様に日本で独自に進化を遂げ、今やれっきとした“国民食”となりました。その日本のカレーはここ中国でも人気が高く、「ココイチ」でお馴染みの壱番屋をはじめ、日系カレー飲食店が続々と進出してきています。ローカル系飲食店でも「日本式カレー」という表記で日本風カレーを提供する店は少なくありません。

 なお、これは余談ですが、中国にあるココイチのカレーは驚愕するくらい日本のココイチと味が変わりません。一体どんな技術を使って品質管理しているのかと、筆者にとってはこっちの方が気になります。

鍋料理を追求する中国人

 以上の“鉄板”メニューに対し、底堅いニーズを持ち、高いポテンシャルを秘めているのが「すき焼き鍋」をはじめとする鍋料理です。

 中国はその広い国土から、地方によって食文化や嗜好がそれぞれ異なっているのですが、「火鍋」に代表される鍋料理はあまり地域差がなく、一様に好まれています。さすがに夏場は冬場と比べると消費は落ちるものの、鍋料理店は賑わっています。中国人は鍋料理が大好きだと言っても過言ではないでしょう。

 そんな鍋好きの中国人は、日本の鍋料理に対しても興味津々です。日系飲食店では、大半の店、それこそラーメン専門店であっても、鍋料理がメニューに加えられています。

 飲食店関係者に聞いてみたところ、「鍋料理があるかないかだけで、店選びの候補から外される可能性がある」とのことでした。

あまり知られていない日本の「コース料理」

 以上、中国で人気のある主だった日本料理メニューを挙げてみましたが、見ての通りこれらはすべて単品メニューで、コース料理ではありません。

 店舗によっては独自にコース料理を用意しているところもありますが、「懐石料理」のようなコース形式の日本料理は中国ではあまり知られていません。中には「日本の懐石料理とは、懐に石を抱えながら食べる料理ではありません」などと冗談めかして紹介しているサイトもあります。

「懐石料理」の認知度が低い理由は複数考えられます。1つ目は、調理師や材料をはじめ、提供するまでの難易度が高いということ。2つ目は、価格帯がどうしても単品メニューと比べ高くなってしまうことです。

 しかし、ビジネスの観点から見ると、中国の富裕層へのアプローチとして高級なコース料理は欠くべきではありません。また、日本の料理文化を普及していく上でも、今後、懐石料理の普及推進が必要になってくると思われます。

 ただし中国人は食への関心が異常に強い民族なだけあって、日本の懐石料理は現地メディアに取り上げられるようになりました。訪日旅行時のおすすめレストランとして懐石料理店の店も紹介されており、人気は高まっていくことでしょう。

中国人向けには薄味が吉?

 最後に、中国人の日本料理に対する味覚傾向について筆者の見解を紹介したいと思います。

 結論から言えば、日本料理は、日本人に好まれる味付けよりもやや薄味にした方が中国人には受け入れられやすいようです。中国にある一部の日系ラーメン店では、明確にそうした対応を取るところもあります。日本人客向けには通常の味付けで、中国人客向けには元よりやや薄くした味付けで提供しているのです。

 確かに多くの中国人にとって、日本料理は塩分が強いと感じられるようです。筆者が、それまでほとんど日本料理を食べたことがないという中国人と日本料理を食べに行ったところ、一部料理に対して「しょっぱい」という感想が聞かれました。日本人である筆者からしたら特段違和感のない味付けでしたが、改めて意識してみると、日本料理は醤油での味付けをベースとするものが大半で、食べ慣れていない人からすれば確かにしょっぱいと感じるかもしれないなと、その時初めて気がつきました。

 中国沿岸部の大都市では、すでに日本食の味に慣れた中国人は大勢いますが、内陸部ではまだ生まれて一度も寿司や焼き魚を食べたことがない人も珍しくありません。

 今後、中国、ひいては世界で日本料理の普及を目指すならば、こうした地域によって異なる味付けの好みへの配慮は必要でしょう。中国進出を目指す飲食店や食品メーカーの皆さんは、中国ではやや薄味をベースとすることを心に留めておいていただければと思います。

筆者:花園 祐