米ウォールストリート・ジャーナルや英ロイター通信などの報道によると、米アマゾン・ドットコムは米国で、ひそかに、出品者商品の値下げ販売を始めたようだ。

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年末商戦、ライバルよりも安く

 ウォールストリート・ジャーナルが調査したところ、それらの商品はアマゾンのeコマースサイトで、最大9%引きで販売されている。

 該当商品の詳細ページには「Discount provided by Amazon」と記され、値下げが期間限定であるという説明もある。

 アマゾンは、先ごろ米国やカナダで、年末セールの開始を発表した。いよいよ本格的な年末商戦を控え、この値下げ戦略は、米小売り大手のウォルマート・ストアーズや、1ドルショップのダラー・ゼネラルといったライバルとの間で、し烈な競争をもたらすだろうと、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

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 同紙によると、アマゾンの値下げはこれまで、同社が自社で仕入れ、直接販売する商品だけが対象だった。しかし、今回は、アマゾンに出品している外部業者の商品を対象にしている点がこれまでと異なる。

 アマゾンには、業者に代わって、商品の保管と配送業務などを行うサービス「Fulfillment by Amazon(FBA、フルフィルメント・バイ・アマゾン)」があるが、ウォールストリート・ジャーナルによると、今回の値下げは、このサービスを利用している業者の商品が対象となっているもようだ。

アマゾン、値引き分を自社で負担

 しかも、その値下げ分は、アマゾンが負担しており、業者にはこれまでと同じ正規の販売価格がアマゾンから支払われている。つまり、アマゾンは、自らの利益を減らして、ライバルに対抗しているというわけだ。

 アマゾンは、コンピュータのアルゴリズムを使い、ライバル小売業者のeコマースサイトをチェック。それらと同じか、安い価格を、同社サイトで提示する手法をとっているが、前述したとおり、これまでその対象はアマゾンが自社で販売する商品に限られていた。

 これについて、今回の値下げは、従来の戦略の枠を越えて新たな領域に及ぶものだと、ロイター通信は伝えている。そして、これは、Fulfillment by Amazonがもたらす、比較的高い利益率のなせる業と言えそうだ。

Fulfillment by Amazonとは

 Fulfillment by Amazonの仕組みは次のようなものだ。外部の小売業者は自社商品をアマゾンに登録したのち、アマゾンの倉庫に商品を納入する。すると、その商品はアマゾンの有料会員プログラム「Prime」向けの商品として、販売される。

 アマゾンに注文が入ると、同社が業者に代わってこれら商品の決済、梱包、配送、顧客サポートなど、一切の手続きを行う。これにより、顧客はお急ぎ便や送料無料サービスといったPrime特典を利用して商品を入手でき、返品などの手続きも容易になる。

 外部業者は、アマゾンの一般会員よりも購入金額が多いと言われるPrime会員に向けて、自社商品を売りやすくなる。その一方で、アマゾンは業者から在庫保管手数料や配送代行手数料を受け取っている。

 こうした外部業者による商品は、アマゾンに高い利益率をもたらしている。しかも、その取り扱い量は年々増えている。アマゾンによると、Fulfillment by Amazonを利用した商品配送個数は2016年に全世界で20億個を超え、前の年の約2倍以上に増えた。

 また、ウォールストリート・ジャーナルが引用した米投資顧問会社ファクトセット・リサーチ・システムズの推計によると、アマゾンで今年1年間に販売される商品の合計販売額は、3407億1000万ドル(38兆8800億円)。このうち、外部業者の商品が占める比率は、7割に上るという。

今も続く薄利の精神

 一方、アマゾンはこうして、稼いだ利益を次の戦略的投資に使ったり、消費者に還元したりするという、創業以来の薄利精神を貫いている。同社が先ごろ発表した2017年7〜9月期の決算は、売上高が1年前に比べ34%増の437億4000万ドル(約4兆9900億円)となり、過去最高を更新した。

 これには、買収した米ホールフーズ・マーケットの売上高である約13億ドルも含まれているが、この事業の売上高や為替差益の影響を除いても、売上高の伸び率は、29%となる。

 これに対し、この期間の最終利益は、2億5600万ドル(292億円)で、1年前に比べ1.6%増と、ほぼ横ばいにとどまっている。

筆者:小久保 重信