中期経営計画を発表する三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長。数値発表はしたものの、具体策が乏しい内容だった(撮影:今井康一)

「具体的に見えていない」「なかなか読めない」「見極めていない」――。三越伊勢丹ホールディングス(HD)の杉江俊彦社長は歯切れが悪いコメントを何度も繰り返した。

11月7日、三越伊勢丹HDは2017年度中間期(4〜9月期)の決算説明会を開催した。これまで先延ばししてきた2020年度を最終年度とする中期経営計画の施策や数値も、合わせて発表した。

会見の席上、杉江社長は「足元の業績は順調だが、このまま未来に向かっていける体質ではない。収益体質の強化を進めたうえで、事業構造の転換に取り組んでいきたい」と、中期計画の基本的な方針を説明した。

東京五輪の影響で先が読めない

数値目標としては、2020年度までに営業利益350億円(2016年度比46%増)を掲げた。不採算事業の整理や人員削減などの構造改革を進めることで、目標の達成を目指す。ただ、「早期に営業利益500億円を達成する」としていた昨年までの中期目標からは、大きく後退した。

営業利益350億円の目標について、杉江社長は「2020年度までとしているが、できれば2019年度には到達したい」と意気込んだが、売上高の目標値については「東京五輪の影響やインバウンドがどうなるのか、なかなか読めない」(杉江社長)ことなどを理由に非開示とした。

不採算事業の改革については、赤字を垂れ流してきたスーパー「クイーンズ伊勢丹」の運営子会社を売却する。将来的にグループに戻すことを前提に、来年3月末に投資ファンドに株式の約3分の2を売却する方針だ。

同じく、長年赤字で債務超過だった子会社、小売・専門店業のマミーナを2017年度に精算する。ただ、ほかの赤字子会社や、苦戦が続く地方店の対策について、現時点では決めたものはないという。

人員削減については、既存の早期退職制度である「ネクストキャリア制度」を拡充し、従来よりも退職金額を大幅に積み増し、対象年齢も拡大する。ところが、杉江社長は「3年間で800人から1200人ぐらいのレンジかなと想定しているが、これはわからない。(退職金積み増しによる)負担金額についても、申し上げられない」と述べるにとどまった。


杉江俊彦社長は大西洋前社長の電撃辞任を受け、今年4月に就任した(撮影:今井康一)

成長戦略となると、さらに歯切れが悪くなる。EC事業の拡大で、固定客を増やす狙いだが、「外部の知見を入れながら、来年の4月ぐらいから進めていきたい。スケジュールみたいなものは組んでいるが、まだまだ精度が低い」(杉江社長)と、具体的な戦略については言及しなかった。

基幹店の伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店については、それぞれ100億円規模の投資をすることも公表。だが、これまで「2018年春には大規模改装を終える」としていた三越日本橋本店の改装は、来年秋に本館1階をリモデルするだけの内容に後退した。伊勢丹新宿本店への投資については、「日本橋の次になる」(杉江社長)と述べ、詳細には触れなかった。

最終赤字でも受け止める


伊勢丹松戸店は地元との交渉の末、来年3月に閉鎖する(編集部撮影)

インバウンド需要の増加を受けて、伊勢丹新宿本店や三越銀座店の足元の売り上げは好調だ。ただ、2017年度は改装負担などにより営業利益180億円(前期比25%減)、当期純利益100億円(同33%減)と減益を見込む。

ここに早期退職制度の負担や在庫処理関連の負担などが加わると、2009年度以来の最終赤字に転落する懸念もある。「(損失処理が)たくさん出て、仮に今期最終赤字になるとしても、しっかりとそれは受け止める」(杉江社長)。

ライバルのJ. フロント リテイリングは不動産主体の事業モデルへと転換を進め、2017年度の営業利益は前期比17%増の490億円(国際会計基準)を計画。高島屋もテナントを集めた店舗運営で、営業利益は前期比6%増の360億円を見込んでいる。

ある三越伊勢丹関係者は「伊勢丹ブランドが強かったため、いまだに勝ち組の意識が拭えないのではないか。百貨店業界を取り巻く環境は厳しいのに、危機感が足りない」と語る。

杉江社長は構造改革を押し進め収益を改善し、その後、成長に向けてアクセルを踏み込む青写真を描いている。だが、今回の具体策なき中期計画を見る限り、三越伊勢丹HDの視界不良は当面続きそうだ。