【車はAIと相性が悪い!(下)】「一人一人が確実に考える組織運用」を学べ

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■人間は無意識に誤差を修正している

 機械式仕掛けには、動かす限り必ず隙間が必要なのだ。おおよそ最低でも0.02mmぐらいの隙間が取られるのが普通だ。それは問題視するほどの隙間ではないのだが、機械式の部品が多数繋がって動作する自動車では、各々の誤差を合わせると大きな誤差となってくる。5部品の繋がりでも0.02×5=0.1mmの誤差になってくる。人間が操縦している限り、その誤差を感覚で捉えて、早めにハンドルを切ったりなど調整してしまう。

【前回は】【車はAIと相性が悪い!(中)】管理職のための難しい話 機械仕掛けの基本

 しかし、プログラムでは「バグ(プログラムミス)や計算スピードの持つ誤差がない」としても、その機械部品の誤差を補正するために何らかのセンサーからの情報を取り、調整するプログラムを組んでおく必要がある。それもかなり面倒な調整が必要だ。これは、AIによる学習機能が2重、3重に必要になる部分である。

 例えばアクセルペダルを見ても、かなりの遊びがある。その遊びを考慮してプログラムを組んでおく必要があるのだが、プログラマーは機械式メカニズムを知らない。また逆に、機械技術者はプログラムの組み方の知識をよくは知らない。そのためIT関係者と従来の機械技術者とは、現代から未来についての、自動車に対する認識の隔たりが出来ている。この違いが、AIに運転を任すときに「非常に危険」なのだ。つまり「想定外」になる可能性が高いのだ。

 AI自動運転システムだけでなく、現在のエンジン制御でも、ブレーキやミッション、タイヤからの情報を加味してアクセル操作をおこなうようにできている。つまり、大変多数のセンサーからの情報を処理していかねばならない。その制御プログラムに論理的ミスがないのだろうが、機械システムが制御プログラムからの命令を、機械式メカニズムの隙間などでタイミングよくこなせない場合が出てくる。一番多い「制御のタイミング問題」は、解決するのは実際には不可能に近いことだ。

 現実のプログラムでは、タイミングをずらせるいくつかの数値の入れられるテーブルを設け、選べるようになっている。例えば、燃料噴射タイミングを計るには、現車を試運転しながらテーブルから数値を選ぶしかない。そのため、狙った公差内に部品精度が収まっていても、組み立て完了後、新車状態になってから調整する必要が出てくる。ブレーキやアクセルなどを使ったハンドリングの制御などを搭載していると、個体差を生じないように組み立て完了することは、まず不可能だ。

 現在の制御プログラムをたくさん装備した自動車の場合、おそらくは「ある一定の確立で不良品が出る」ようになっている可能性が高いのだ。0.02mmの隙間の合計が、組み立て作業もしくは動作の場面によっては、一方向に出る場合があると、故障と言うべき誤動作が出る場面がある。それが両方向に均等に出ればタイミングのずれがないのだが、一方向に固まると不良と言うべき差が出てしまうことが考えられる。そのバラつきを、望む範囲内に収める手立てはかなり複雑で、現在のプログラムで配慮が行き渡っているとは思えないのだ。

■新車検査を実務的にせよ

 現在、私が所有する1台では、おそらくはこの問題であろうと思われる故障が出る。停止からアクセルを踏んだ瞬間、エンジンが「息つき」をしてしまうのだ。右折などの場合、危険があるので修理を依頼したのだが、ある程度しか治せなかった。ディーラーの技術者は投げ出し、不良を認めない。ディーラー本社の技術者の検証によって証明はできているのだが治らない。ブレーキとアクセル操作の連携が絡んでいるようだが、これ以上はメーカーも、こちらをクレーマー扱いしてしまう。メーカーにも「車両全体の構造を掴んでいる設計者が存在しない」のであろう。

 メーカーでも不良を認めるわけにはいかないだけで、実際に治らない。自動車は「複雑な機械仕掛け」だ。そこに「複雑な電子制御」を組み込むのだから、人間には補正できない問題が起きる。この2つのメカニズムの相性は「本来悪い」のだ。電子制御で済む範囲であれば良いのだが、IT技術者は機械技術を知らない。機械技術者の認識との乖離を埋める必要がある。それには経営者が「金融屋」では、そもそも「この差に気付かない」。

 「機械メカニズムと電子制御は相性が悪い」などとは決して認めるわけにはいかないのだ。これから出来るだけダイレクト制御にすることで解決していくしかない。例えば「ドライブ・バイ・ワイヤー」にして、出来る限り機械メカニズムで連結する部品個数を減らすのだ。

 そして新車検査を実質的な検査にして、完成段階で誤差範囲を調整することを考えるしかないのだ。まるで時代をさかのぼる様に全数検査で調整しないと、危険な車が一定割合で出来てしまうのだ。自動車産業の中で、いずれ「生産技術的解決法」の進化が起きるだろう。

 このことを機械技術者、電子技術者双方が認識して、現在の問題点を解決していかねばならない。現状では、まだ「発達途中」で、ユーザーは「実験台」の状態だ。新車検査を軽視する自動車メーカーが多くなっているのだろうか? 電子制御時代を迎えた自動車でこの不良を見つけるには、今は「新車検査しかない」のだ。

■「一人一人が確実に考える組織運用」を管理者は学べ

 管理職であれば「組織の作り方」「組織運用の在り方」で「品質保証」を行うことを知らなければならない。これには「社員間の会話の在り方」「ユーザーとの会話の在り方」「ディーラーとの会話の在り方」が含まれているのだ。「楽に流れるな」これが基本だ。この問題を組織として認識し、対策を講じられる「組織の作り方」と「組織運用」とは、どのようなものであろうか?「一人一人が確実に考える組織運用」である。