Doctors Me(ドクターズミー)- 未受診妊婦になってしまう原因は?リスクや支援制度を医師が解説

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皆さんは、「未受診妊婦」という言葉をご存知でしょうか?俗に「飛び込み出産」などとも呼ばれており、妊娠に気付いていても何らかの事情により産婦人科を受診していない妊婦を指しています。

未受診妊婦が増えてしまう背景には深刻な問題も隠れており、中には一人で悩みを抱えている女性の方もいらっしゃいます。

今回は、未受診妊婦について、気になるリスクや支援制度などを詳しく医師に解説をしていただきました。

未受診妊婦とは

 

未受診妊婦とは、医学的定義はありませんが、2009年に大阪産婦人科医会が行った調査では
「全妊娠経過を通じての妊婦健診受診回数が3回以下」「最終受診日から3カ月以上の受診がない妊婦」のいずれかに該当する場合と定義しています。

その他の特徴としては以下が挙げられます。

・母子手帳を受け取っていない

・妊娠に気付いても婦人科を受診していない(もしくは回数が不十分)

・陣痛が始まってから「お腹が痛い」と救急車を呼ぶ

・自宅で赤ちゃんが生まれてしまってから「どうしていいか分からない」と周囲に助けを求める

未受診妊婦の割合

 

大阪産婦人科医会の調査によれば、2009年の1年間に
152例の実受診妊婦が確認されたとのことです。これは大阪の分娩件数の0.2%に当たります。

未受診妊婦になってしまう原因

 

何らかの理由で受診しなかったり、定期受診をやめてしまった場合、以下のような原因や背景が考えられます。

金銭的な負担



・健診を受ける費用がない

・健康保険料を支払っていない

・親の虐待や夫のDVから逃げているが親や夫の健康保険に入っているため使えない

・父親が分からない、男性に逃げられたなどで、出産し子育てするお金がなくどうしようと考えているうちに時間が経ってしまった

・中絶するお金がない、気付いた時には中絶できる時期を過ぎていた

本人が妊娠に気付いていない



■ 学生の場合

10代前半など幼過ぎて妊娠についての知識がなく、「まだ胸が小さいから妊娠は無理」「一回の性行為で妊娠はしない」などと考えている場合もあります。

また、保険証を使うと親にばれるのを恐れるケースも考えられます。

■ 40代以上の年齢の場合

もう高齢だから妊娠は無理だと思い込み、月経がなくなったのを「閉経したのだ、更年期だ」と思っていたという場合もあります。

自己評価の低さから避妊を行わない



女性が避妊できない、無理な性行為を拒否できない背景には、貧困や自己評価の低さがあります。

男性に性的に求められることでしか自分の価値を確認できなかったり、避妊して欲しいと言い出せない背景に、幼少期に保護者と愛着関係を築けなかったことがある場合もあり、妊婦本人だけを責めても解決しません。

未受診妊婦のリスク

 

妊娠中のリスク



妊娠中の血圧・体重などの管理ができておらず、休養も取らず働き続けたり、飲酒喫煙を制限していない場合もあり、以下のリスクが高いと言えます。

・胎児の発育不良

・胎盤早期剥離

・母体の妊娠高血圧症候群

・妊娠糖尿病

・早産

・梅毒など母子感染(妊婦の感染症検査が行われていない為)

自宅で準備なく出産してしまうリスク



知識がない妊婦が一人で自宅出産することは、以下のリスクを伴います。

医療制度が整っていないアジア・アフリカの発展途上国ではよく見られる現象です。

・赤ちゃんの低体温や呼吸の異常

・難産による分娩中の死産

・出産時に赤ちゃんが床やトイレに堕ちる墜落産

・いきむタイミングが分からず子宮、膣、会陰部が深く傷付く

・赤ちゃんの体が長時間骨盤内に留まることで神経が傷付き、尿や便が漏れるといった後遺症が残る

未受診妊婦は病院側から受け入れ拒否される? 

 

医療関係者ならだれでも、苦しむ妊婦と赤ちゃんを見捨てることはしたくありません。

しかし、未受診だと妊婦や胎児がどのような状態か分からないため、どのような難しい状態でも受け入れられる設備の整った病院でしか受け入れられないことになります。産科ではいつでも帝王切開や出血多量の際の子宮摘出ができる必要があり、小児科ではNICUの空きがある必要があります。

そういった病院は重症患者で満員のことが多く、受け入れ先を探すのは難しく、結果的にたらい回しになっているうちに取り返しのつかない状況になってしまうことがあります。

未受診妊婦の支援制度

 

助成金制度



自治体の妊婦健診費用の助成制度や、健康保険組合からの出産育児一時金の制度があります。

特別養子縁組制度



生まれた直後の赤ちゃんを養子に出す特別養子縁組の制度や、それを支える児童相談所のしくみやNPOがあることを常に周知する必要があります。

赤ちゃんを特別養子縁組に出すのをサポートする民間NPOの活動により、病気や不妊のため実子が得られないカップルと、望まない妊娠をした女性をつなぎ、中絶以外の選択肢を取ることができると注目されています。

こういった活動に公的補助を出し、生まれてから赤ちゃんポストに出すのではなく、妊娠中から妊婦をサポートし健康に赤ちゃんが産めるように体制を整えることも重要と思われます。

役所や産科のトイレには、望まない妊娠の相談ダイヤルのステッカーやパンフレットが置いてある場合もあり、有効な手段の一つと思います。

最後に医師から一言

 

妊娠できる年齢になったら、正しい性教育の知識を教える必要があります。月経があれば何歳であっても、一度の性行為であっても妊娠する可能性はあるということを男女ともに知っておきましょう。

未受診により妊婦・赤ちゃんともにリスクにさらされ、結果として障害や後遺症が残ったり、命を落とすことにならないよう、社会全体で協力することが望まれます。

(監修:Doctors Me 医師) 

参考文献

・大阪産婦人科医会 未受診や飛び込みによる出産等実態調査報告書