『上野さんは不器用』(白泉社)

写真拡大

 10月27日に、漫画『上野さんは不器用』の第3巻が発売された。本作はtugenekoがヤングアニマル(白泉社)で連載中のヒロインギャグ。最近、Twitterで広告を見かけて知った人も多いのではないだろうか。

 「『上野さんは不器用』ってどんなお話?」と聞かれたら、口で説明するよりもまず第1話を読むことをおすすめしたい。なにしろヒロインであるはずの上野さんが、後輩男子に「自分のおしっこを無理やり飲ませようとする」のである。作者の描くポップなキャラクターからほのぼのとした学園ラブコメを連想していると、いきなりハラスメントどころか強烈な変態行為に衝撃を受けるだろう。Twitterでも話題になったこのエピソードに本作の魅力と狂気が凝縮されていると思う。

 ただ、上野さんがこんな行動に及んだことにはワケがある。ツインテールがトレードマークの主人公・上野さんは、とある中学校の科学部部長。しかも則巻千兵衛もビックリの天才発明家である。毎回のように奇想天外な発明品を生み出していくが、その目的はたったひとつ。後輩の田中とイチャイチャしたい! 彼女の頭脳は大好きな田中とスキンシップを図るためだけにある。

 上野さんのスキンシップ作戦は、遠回しな田中への告白に他ならない。発明品の実験と称して田中を誘い、自分をターゲットに思春期真っ盛りな彼のリビドーを暴発させて、既成事実を作ってしまおうという算段だ。ところが作戦はことごとく失敗する。そもそも計画がスキだらけで破たんしているというツッコミは置いておいて、肝心の田中が超が付くほどの鈍感なのだ。彼女の目論見は外れるどころか、乙女心がズタズタになるような恥ずかしい思いをして、上野さんが半ベソをかくまでがテンプレ化している。

 3巻でも上野さんの不器用なチャレンジは続く。田中の顔面をイス代わりに座ろうとしたり、田中に自分のスカートをハサミで切らせようとしたり……。いつもナナメ上を行くセクハラを迫る上野さんだが、正直サイコパスかと疑うレベルで空気を読めない田中のおかげで上手くいかない。かと思えば、新キャラクターで田中の妹たちが登場する回では、しっかりとした(?)お兄ちゃんらしい立ち振る舞いを見せて上野さんをドン引きさせている。この漫画で田中が担う役割はとても大きい。中学生の田中が上野さんを異性として見ているかどうかは不明だが、積極的にスキンシップを図る彼女に対して、彼が無関心じゃないとコメディとして成立しない。田中が鈍感であればあるほど面白くなる。上野さんの受難はしばらく続きそうだ。

 実を言うと、これまでに上野さんが仕掛けたスキンシップ作戦には成功例もいくつかあった。3巻でもお姫様抱っこをされたり恋人つなぎをしたりと、彼女の望んでいた展開がチラホラ。ただ、あと一歩のところで赤面してしまった上野さんが逃げ出してしまう。本作のキャッチコピーにある「態度は強気。でも、恋には弱気」とはまさに的を射た表現だ。上野さんにはぜひ幸せを掴んでほしい……けど、平行線をたどる田中との関係をいつまでもニヤニヤと見ていたいのが読者の本音だろう。

文=小松良介