日本代表にネイマールが襲いかかる。前回対戦では1人で4ゴールを奪われた【写真:Getty Images】

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ブラジル戦、直近3試合はすべて大敗だが…

 日本代表は10日にブラジル代表と対戦する。過去に一度も勝利したことがなく、直近3試合はすべて大敗。ネイマールをはじめ、世界のトップクラスで活躍する選手を多数揃えたスーパースター軍団に勝利するために何が必要なのか。ロシアW杯前の貴重なチャンスに、サムライたちは燃えている。(取材・文:元川悦子【リール】)

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 2018年ロシアW杯本番前、数少ない強豪相手のゲームとなる11月の欧州遠征2連戦。その1戦目となるブラジル戦を10日に控え、日本代表は5日から会場のリールで調整合宿をスタートさせている。

 初日は長谷部誠(フランクフルト)、吉田麻也(サウサンプトン)ら欧州組5人のみの参加だったが、2日目の6日は他の欧州組や国内組も合流。25人全員が揃った状態で初めてトレーニングを行った。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は冒頭に10分程度のミーティングを実施。「世界1位・2位のチームと対戦できる機会は滅多にない」と、このテストマッチの重要性を改めて選手に伝えたという。2015年3月の就任後、アジアレベルとの戦いに終始してきた指揮官にとってはようやく訪れた本番想定の実戦機会。W杯で勝つために積み上げてきたデュエル重視の戦い方がどこまで通用するかは非常に興味深いところだ。

 キャプテンの長谷部も「中盤はアグレッシブに前で取りにいくのか、ラインを引くのか、僕も早くそれを知りたい」と話しており、指揮官の采配には注目が集まりそうだ。

 前からプレスにいくにしても、自陣に引いてブロックを作るにしても、ブラジルは簡単には守り切れない相手。それは過去5年間に戦った3度の対戦でも示されている。2012年10月にポーランド・ブロツワフで挑んだゲームは0-4。パウリーニョ(バルセロナ)、ネイマール(PSG)の2発、カカ(オーランド・シティ)に次々と失点を重ねて敗れた。

 翌2013年6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジリア)でもネイマール、パウリーニョ、ジョー(コリンチャンス)に3失点して0-3。2014年10月のシンガポールでの3戦目はネイマールに4発を叩き込まれる0-4の惨敗だった。

代表では「別人」に。ネイマールを止められるか

 3年前のゲームに先発出場した森岡亮太(ワースラント・ベフェレン)は「相手と5mくらい離れてるのに、国内組だけプレッシャーを感じていた。ブラジルの選手はジョギングしてるだけなのに」と述懐したが、それほどまでに日本は飲まれてしまっていた。

「ブラジルは過去に何度か戦って、一番敵わないというか、差を感じている国」とキャプテンの長谷部も認めている。そんな相手といかに拮抗した好ゲームを演じるか。それは日本にとって至難の業と言っていい。

 これまでと同じ轍を踏まないためにも、真っ先にやるべきなのが失点を最小限にとどめること。今回はケガで出場が危ぶまれているものの、日本戦過去3戦6得点のネイマールを封じるところから着手することが肝要だ。

 10月22日に彼を擁するPSGと対戦したばかりの酒井宏樹(マルセイユ)は「パリでやってる彼とブラジル代表でやってる彼は全く別の人。どう見ても代表の方が気持ちよさそうにプレーしてるじゃないですか」とネイマールのプレーについて率直な感想を口にする。

「連携面を含めるとブラジル代表のネイマールはさらにすごい選手。僕個人だけでは止めるのはほぼ不可能。彼にボールが回ってくる前にプレッシャーを与えられるかが大事になってくる。リラックスした状態の彼にボールが渡ったら止めるのは難しい。チームとしての守備にフォーカスしないとそう簡単に止められるような相手ではない。(8月31日の)オーストラリア戦くらい前からプレッシャーをかけてくれれば、インターセプトを狙える距離を近づけられると思います」と彼はこれまで以上にアグレッシブかつ連動した守りを実践して、世界最高クラスのアタッカーの破壊力を半減させたい考えだ。

勝利の鍵は守備。世界を驚かす「下剋上」のために

 酒井宏樹の言うように、高い位置からハイプレスにいき、ネイマールにいい形を作らせないように追い込めれば理想的。だが、逆に日本の守備が1枚、2枚とはがされて、次々とギャップが生まれるリスクもある。そうなったらGKのスーパーセーブでも出ない限り、失点は避けられないだろう。

 だからこそ、最後の砦としてゴールマウスを守るであろう川島永嗣(メス)は「1対1のところで負けないことが大前提。(2014年ブラジルW杯の)コロンビア戦のように、W杯になれば個で自分たちが負けてたら、もうそれ以上のことはない。こうすれば勝てるっていう1つの答えはないけど、前を向かせないように1対1でしっかり戦っていくしかない」とまずは個人個人が守備のタスクを確実に果たすことを強く求めていた。

 まだまだ発展途上の日本代表がデュエルの部分でブラジルに勝つのは容易ではないが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝・上海上港戦で浦和レッズの槙野智章がフッキを止めたように、絶対に不可能とも言い切れない。

 プレミアリーグでウィリアン(チェルシー)やロベルト・フィルミーノ、フィリペ・コウチーニョ(ともにリバプール)らと対峙している吉田麻也(サウサンプトン)も「ウィリアンとかのクラスになると時間を与えると何でもできてしまうし、ワンチャンスをモノにする力を持っている。個人としてチームとしてどれだけスペースと時間を与えないか、一番得意な形に持ち込ませないか、こまめにポジションを修正していけるか、集中力を欠かさないか」をポイントとして挙げていた。

 そういう意識を守備陣のみならず、チーム全員が高く持ち、90分間ハードワークを続けることができれば、ブラジルとの負の歴史に終止符を打つことも夢ではなくなる。川島、吉田、酒井宏樹という現日本代表不動の守備陣は、世界が驚く「下剋上」を果たすべく、集中力を研ぎ澄ましている。

(取材・文:元川悦子【リール】)

text by 元川悦子